『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』の
イラストブックレビューです。
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働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」
- 作者: 川添愛,花松あゆみ
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2017/06/17
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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「なんでも言うことを聞いてくれるロボットがいたら、僕らは働かなくて
よくなるね」すばらしい思いつきにうっとりしたイタチたちは、そんな
ロボットを作ろうと計画します。参考のために「言葉ができる機械」を
つくったほかの動物たちのところへでかけていきますが、どれもイタチたちが
考えるものと違うようで…。
イタチたちは、まずは言葉が聞き取れる機械を作ったというモグラのところへ
行きました。その機械は、こちらが話した言葉を画面に文字にして出してくれる
というもの。画面に言葉が出るからなんなの?と今ひとつすごさが理解できない
イタチたち。しかも、この機械は方言を聞き取ることができず、おかしな言葉の
羅列になってしまうのです…。
各章ごとに、動物たちが開発した「言葉ができる機械・ロボット」が登場し、
それらの問題点を「とにかくなんでも言うことを聞いてくれるロボットを
作りたい」というイタチ(工学的な知識はゼロ)たちが図らずとも明らかに
していく、という流れ。
それぞれにコラムがついており、例えば第1章の「言葉が聞き取れる機械」は
音声をどのようにデータ化し、機械へ取り込んでいくのかということが、工学的な
知識がなくとも理解できるよう、平易な言葉で解説されています。
モグラやアリ、フクロウやオコジョなど、動物たちがそれぞれ考え抜き、改良を
重ねて作った機械やロボットを、イタチらは「なんかわからんけど、それだけじゃ
役に立たないよね」「言うことを聞いてくれないじゃん」と勝手なことを言い散らかし、
果ては余計なデータを入れ込んでほかの動物たちが一生懸命に作った大事な機械を
壊してしまいます。
動物裁判にかけられたイタチらは、皆の問題点が解決するような、文と文との論理的な
関係を問う問題をたくさん用意し、それを解ける機械を作り、ほかの動物たちに提供するということでひとまず決着がつきます。
文と文と論理的な関係を問う問題とは、つまり
前提 すべてのフクロウは、夜じゅう目覚めている。
結論 夜に寝ているフクロウが何羽かいる。
この前提に基づく結論は○か、×か、?か。
こうした問題を1000個作り、なおかつその問題を解ける機械を期限までに作れ、と
いうことです。またまた難題を突きつけられたイタチらはどうするのでしょうか。
近い将来、いろんな分野においてAIが人間能力を凌ぐのではないかと話題になって
います。言葉の理解についても然り。しかし、言葉がわかるために機械が必要とする
データは膨大なもので、なおかつ多角的です。
おまけに、ひとつの絵を見て、育った環境や年齢によって解釈が違ったりしますし、
予測を含めた判断や、世間の常識の理解度など、かなり複雑な要素もって人間は
言葉を駆使しているのだということがわかります。計算が得意な機械ですが、
イメージや判断などはまだまだ検討の余地がありそうです。
私たちや人工知能が言葉を理解する仕組みを楽しく学べる本書は、学生から社会人まで
おすすめの一冊です。