『タカラモノ』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 和田裕美
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2019/06/13
- メディア: 文庫
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かろうじてつながっているようなママとパパ、おねえちゃんとわたし・ほのみは
四人家族。昼は喫茶店、夜はバーで働く、綺麗で明るくて破天荒なママから、
ほのみは大切なものを教わっていく。
パパとはつかす離れずの関係で、彼氏が途切れたことのないママは、ほのみが高校生
の頃、男の後を追いかけて家を出て行ってしまいます。そして数年後に帰ってきて、
またほのみと暮らし始めるのです。
子供にとってはシビアな環境です。ほのみの友人の母親からは気の毒がられたりして
います。そこで自分のことを哀れだと思ったり、母親に当たり散らしたり…なんてことをしないほのみは、もともとの性格がおっとりしているせいもありますが、なんといっても、親からもらった言葉をしっかりと自分の肥やしにしているからでしょう。
あんたが不良になっても、あんたがそうしたいんやったらママはそれでもええねん。
ママはあんたが不良になっても痛くもかゆくもないねん。そやけどな、誰が損すんの?あんたがいややったらそうならへんかったらええんちゃうの?だいたい、誰かのせいでそうなると思ったら、これからあんたどうやって生きていくの?全部自分で選んだことやねんから。もっと大人になったら、それ全部自分で責任とっていくんやで。あんな、ママは幸せやで。誰になにいわれてもな。だって自分で選んで生きているんやもん。だから、明日死んでも悔いないわ。あんたな、幸せになりたいんやったた、誰かのせいにしたらあかん。誰かに頼んでもあかん。そういうもんやねん。
そう言ってほのみを抱きしめるのです。
母親からこんな言葉をもらったら、自分の人生、人のせいにしていないでしっかり
自分のために生きなくては。そんな気持ちにもなるかもしれません。
明日死んでも悔いはないと発言するママは、何にもとらわれることなく、自由に
そして全力で生きているからこそ、内側から発するエネルギーのようなものが溢れ出て、輝いていたのではないでしょうか。
そんなママには似ることなく、見た目ももっさりしてちょっどんくさいほのみは
大学時代に母親からちょっとアレなアドバイス受けつつ恋愛したりします。
そして、社会人となり、地元を離れて一人東京へとやってきます。人間関係も
仕事も大変すぎて続く気がしない…。落ち込むほのみの元へ駆けつけたのは
やっぱりママ。そしてママから言葉をもらえば、大丈夫、という気持ちになれるのですが…。
甘えたい時期に甘えることができなかった娘。娘に申し訳ない気持ちもありつつも
自分の生き方を貫き通し、そして心の底から娘を愛した母親。ほのみは母親からの
愛情をしっかりと受け取り、人間としても成長してきました。環境のせいにしない、
人のせいにしない、自分自身で選びとって生きていく。
ほのみはママのタカラモノですが、ほのみがママからもらった最大のタカラモノは
そうした生き方なのかもしれません。