ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

図書館の神様が教えてくれること

図書館の神様』の

イラストブックレビューです。

 

それまで一心に取り組んできたバレーボールをやめて、住んでいた土地を離れ、
地方の小さな私立大学へと進学した「私」。海が見える高校の国語教師として
赴任したのだが、何と部員がたった一名の文芸部の顧問をすることになって
しまった。まっすぐな青春を送ってきた「私」が、ある出会いから、傷を負った
心を回復していく。

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極度のアレルギー体質で、あらゆるものを食べては体調を崩してきた。
そんな「私」が夢中になったのは、バレーボール。小学生からはじめて、高校でも
その活躍が評価され部長に。何事も真面目でまっすぐな私は、練習試合でミスを
したメンバーを叱責した。すると、翌日、その生徒は身を投げてしまった…。

このことをキッカケにバレーボールから離れ、地元から離れ、何となく教職を
目指してある高校に採用された「私」。教科は楽そうだからと考えた、好きでもない
国語で、しかも男子生徒が一名のみ在籍という文芸部の顧問にまでさせられて
しまいます。

プライベートでは、不倫の恋ゆえの自宅デートを楽しみ、週末には弟が訪ねて
きて、まったりと過ごしています。高校時代の出来事は「私」に深い影を落として
いて、それにより「私」は夢をあきらめ、抜け殻のようになり、やる気がなく
流されるままに漂っているような印象を受けます。

たった一名の文芸部員、垣内君は中学時代はサッカーをやっていたようですが、
高校ではなぜか文芸部。なぜなら文学が好きだから。文学に毛ほどの興味もない
「私」との、温度差のあるやりとりが笑いを誘います。

「私」が図書室で垣内君と交わす何気ないやりとり、恋人と過ごす時間、弟が
遊びに来るとき。季節を重ね、言葉を交わしていくうちに、「私」心の傷が
少しずつ描かれていく様子が丁寧に描かれています。

文学は、傷つき、固くなり、投げやりになった「私」の心を暖かく包み、柔らかく
ほぐしてくれるのです。さらに出会いや自分の経験が、その喜びをいっそう深めて
くれる一面もあります。

図書室は、そんな本や人との出会いを提供してくれる場所です。
図書室の神様は、助けの手を差し伸べるのではなく、そこに訪れる人たちの出会いや
何らかの気づきを得る瞬間を、そっと見守っている存在なのかもしれません。

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