ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

人間関係における贅沢は人類にとって最高の贅沢

 
 

砂漠 』の

イラストブックレビューです。

 

何事にも冷めた目線を持つ北村。仙台市の大学に進学した彼は、四人の学生と
知り合った。少し軽薄な鳥井、不思議な力を持つ南、とびきり美人の東堂、
極端に熱くてまっすぐな西嶋。光に満ち、時に陰を落とす喜びと痛みを描く
珠玉の青春物語。

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大学に入ったばかりで浮かれ騒ぐ同級生たちを、冷めた目線で眺める北村。
そんな彼に声をかけたのは、髪型が鳥を想像させる、その名も鳥井。法学部の同じ
クラスでのコンパでのことでした。偶然中学で鳥井と同じクラスだったという南という
女の子と出会います。一方、男性陣が群がるエリアの中央には素晴らしい美人の東堂が
無表情で座っています。

自己紹介も中途半端になり、間延びした雰囲気になっていた中、ぽっちゃりとして
メガネをかけた男、西嶋が入ってきて、マイクを使って自己紹介します。
世界平和を訴え、麻雀に負けたことを嘆く、めちゃくちゃなのにパワーが
あるその姿にみな圧倒され…というか呆気にとられます。

こうした個性あるメンバーたちが、なぜか麻雀を経由してつるむようになります。
男性陣は合コンに出かけたり。この合コンがきっかけで、鳥井がトラブルに
巻き込まれてしまい、後々まで影響が出るような事態を引き起こします。

春、夏、秋、冬、そしてまた春。
季節を経るごとに彼らの間ではさまざまな出来事が起こります。
彼女ができたり、仲間同志で恋愛感情が起こり、発展したりしなかったり。
警察沙汰になるようなトラブルが起こったり、はたまたそれを解決したり。

主人公の北村は、メンバーに比べるととんがった個性もなく、ごく普通の青年です。
しかし、最初は同じクラスの人間を「必死すぎだろ」などと冷めた目線で見て
いたのに、仲間たちと過ごすうちに、少しずつ変わってきます。そして友人を
守るために熱くなったりもするようになっていくのです。

個性豊かな5人は、メンバーでいるときはとても自由でいられるのではないかなと
感じます。誰かに合わそうという意識は全くなく、互いが、どうあっても
お前なんだからさ、とまるごと認めてくれるようなそんな安心感。それでいて、
べったりと頼る事がなくて、互いが自立しているのです。

素晴らしい友を得た大学生活。卒業式で学長は、学生に向けてこんな言葉を送ります。

人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである

この輝く四年間を、昔は良かった、戻りたいと思うのではなく、この四年間が
あったから今の自分がある。今の自分の支えになった四年間なのだと、そう
感じ続けたい。そんな主人公の決意を感じました。

若者にも、かつて若者だった人たちにもきっと心に響く、何度も繰り返し読みたく
なるような、そんな青春物語です。

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