『家族シアター 』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 辻村深月
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/04/13
- メディア: 文庫
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真面目な姉をイケてないと感じている妹。
姉はバンドの追っかけ、弟はアイドルオタクと、趣味で反発しあう姉弟。
息子とうまく話ができない父親。
時にうっとうしくて、でもやっぱり大切な「家族」の存在を描いた7つの短編集。
大学で働く孝臣は、本を読んでいれば幸せ。子育ては妻に任せっぱなしで
息子との関わり方もよくわからない。そんな父親が、息子が小学校に埋めたタイム
カプセルのことで、奔走することになります。
息子が小学六年生の時に担任だった比留間先生は、若く熱心で、生徒に人気がありました。
息子たちは「二十歳になった自分へ」宛てた手紙を書いてタイムカプセルへ。先生が責任を持って学校の敷地内に埋めておく、という話だったのですが、どうやらそのカプセルは埋められることなく、小学校の倉庫の片隅に転がっているという噂を聞いた孝臣。
比留間先生はほかの先生とうまくいっておらず、タイムカプセルを埋める場所の交渉に
良い結果を得られないまま異動。カプセルは倉庫に放置されているらしいのです。
息子たちがに二十歳になる前に、タイムカプセルを見つけ出し、事前に埋めておかねば!と焦る孝臣。小学校卒業から五年たち、なじみのなくなった小学校へ出向き、教師に交渉をかけます。
息子が尊敬していた担任教師が、大事なタイムカプセルを倉庫に放置していたという
事への怒りよりは、この教師がいたから小学校の先生になろうとした息子の思いを
幻滅させたくなかったから。
いつもは頼りない父親ですが、息子が憧れていた存在に対して幻滅させたくない。
教師へのモチベーションを下げることなく、これからも頑張っていって欲しい。
そんな思いが、腰の重い父親を突き動かしたのです。
子どもの事を常に理解しているわけではない、子どもの親同士の付き合いは苦手、
面倒なことはなるべく関わりたくない。こんな父親ですが、全てのそんな気質を
取っ払って行動を起こすほど、息子の夢を大切にしたいという強い気持ちを持って
いたのです。
自分の夫だったらちょっと面倒見きれないかもしれませんけれども(笑)
案外、こんな風に、普段は父親としてはどうにもならないけども、いざという時に
一点集中して子どもを守る姿勢を見せるタイプの父親っていうのは、結構いるのかも
しれないなあと感じました。
こんな風に、ちょっと面倒だったり、うっとうしいなあと感じる家族への感情と、
それでも大切だと思う、複雑な、でもあたたかな思いを描いた7つの短編集です。
近すぎるからこそ衝突してしまう、年代や生き方の違いから理解できない部分も
ある。それでもまるごと全部受け止めることができる。そう思わせてくれる、
ステキな家族の物語です。