ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

探しものは何ですか?友情?生き方?それとも…

探し物はたぶん嘘 』の

イラストブックレビューです。

 

 

大学一年生の湯川は、無愛想な同級生・遠野の付き添いで病院にやってきた。
その時、湯川は見知らぬ少女が、遠野のバッグから何かを持ち去るのを目撃。
しかし、遠野がバッグの中身を確認しても、無くなったものはないと言う。
この事をきっかけに、湯川と遠野は大学の男の先輩につきまとわれ、少女も
謎の行動を起こして…。

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平凡な大学の平凡な大学生、湯川。黒い犬・ペッパーを連れた遠野と知り合い、二人は友達になりました。大学や、近くのパン屋に立ち寄る、穏やかな日々。しかし、その静かな日常は、遠野のバッグの中から見知らぬ少女が何かを持ち去った時から、変わり始めます。

同じ大学の三年生で、オシャレ男子の南多に話しかけられ、彼もどうやら遠野の
バッグの中身が気になる様子。少女は篠原と言う名で、遠野の中学時代のクラスメイトであったこともわかりました。
彼女も同様に、遠野のバッグの中から何かを探しているようです。尋ねても答えをはぐらかす彼らが探しているものとはいったい何なのでしょうか。

ごく普通の男子、湯川。これと言って特徴のない彼なのですが、それゆえに
周囲の人物たちとの距離感やコミュニケーションの取り方が心地良いです。
そんな湯川の「普通の良さ」が、少々頑なな部分を持つ遠野の心を開いたのかも
しれませんね。

キャンパスの木の葉を揺らす風、お気に入りのパン屋のそばに立つ、クヌギの木。
街灯に反射する、雨上がりのジャングルジム。二人でペッパーを散歩させた公園。
描写から射す光がそれぞれのシーンを鮮やかに照らし、湯川と遠野の気持ちの
動きまでもが伝わって来るようです。

謎を追っていくうちに、遠野の過去や思いも明らかになっていきます。そして、
そんな遠野を厳しくも暖かい目で見守る宝石店の店長、有賀。
だんだんと謎に関わる人数も増えていき、それがまた一癖も二癖もあるキャラばかり。

結末は思わぬ方向に進んでいきます。ごく普通の男子、湯川が…というか
ペッパーが活躍したのはご愛嬌。湯川がカッコ良すぎないところが、この物語の
いいところだと思うのです。だって普通の男子だからね。

軽やかな会話のやりとりと、優しく距離を縮めていく友情、そして、ほのかな恋心。
カバンの中身を探しているつもりが、いつのまにか多くのものを見つけたようです。
彼らはこれからも、いろんなものを見つけていくのでしょう。

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