ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

店長の数だけドラマがある!笑いと涙のお仕事物語

店長がいっぱい 』の

イラストブックレビューです。

 

豚バラ肉とタマネギを甘辛く煮込んだものを卵でとじる他人丼。これを
友々丼と名付け看板メニューとし、国内外に多くの店舗を持つ友々屋。
そのチェーン店には様々な事情を抱えて店長となった者たちが奮闘していた。
トラブルに巻き込まれつつも、今日も店長は誰かのために店を開けている。

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実家の蕎麦屋を継いだが、潰してしまった男、将来カフェを開きたいと
考えている若い女性、友々屋のボンクラ若社長の企画がコケた責任を取らされ、
南国に飛ばされた男性、離婚して自分一人でやっていくためにと決意して
店をはじめた女性。フランチャイズ店の店長は、本当に年齢も性別も、
家族構成も、働く環境もそれぞれに異なります。

そして、各店長が抱える悩みも、娘が自分を軽蔑しているのではないか、
ベテランバイトが他のバイトに説教しまくる、バイトが客と話してばかりで
仕事しない、プライベートでも良くしてくれる客の評判がどうも怪しい…など、
良くありそうなものからちょっときな臭いものまで、じつに様々です。

どこの店も共通しているのが、慢性的な人手不足。
バイトは決まった時間以上に働かせるわけにはいきませんので、そこらへんの
調整は店長自身でまかなうしかありません。バイトの誰かが具合悪くて休みです、
という連絡が入ると店長たちのため息が聞こえて来るようです。

そこに加えて、友々屋本社の社長がまた、曲者なのです。
2代目の若造が後を継いで社長に就任したのですが、でっぷりとした貫禄のある
肝っ玉母さん然とした前社長(現会長)と反比例な体つき。ひょろっとしていて、
弱そう。そして、現場の意見を聞こうとせず、新企画を次々と投入し、コケて、
現場が悲鳴を上げている状況です。

そこでフランチャイズ事業部のデキる女性、霧賀が各店にフォローしてまわります。
しかし、その霧賀もついにキレて、社長に現場で働いてきたらいいでしょう!と
タンカを切ります。会長の了解もアッサリと下り、ボンボンの若社長は地方の
チェーン店にバイトとして入るのです。この若社長の現場でのダメっぷりがまた
おかしいやら情けないやら。

話のあちこちに少しずつ登場する友々屋の会長、若社長、霧賀。
当初はビジネスライクに仕事をしているようですが、霧賀の出店しようと努力する
者たちへの手厚いバックアップや、会長の友々屋や元夫への思い、そして若社長が
胸の奥底に抱えていたものなどが少しずつ明らかになっていきます。

店長たちの働く環境はブラック寄りで、みな諦めて仕事しているのかな、と思いきや、
そうでも無いのです。いや、日々の忙しさに、問題を先送りにしていたり、行き詰まって
途方にくれたりすることもあります。しかし、ほんとうにに自分が求めていた答えを
見つけるのは、自分しかいないのです。

ちょっとしたトラブルがきっかけで、自分の大切なものを見つけた店長たち。
彼らこれからも友云々丼を求めてやって来るお客のために、店に立つのです。
そうしてまた、新たな問題にぶつかったり、その答えを見つけていったりするのでしょう。
笑い、涙しながらも、友々屋のみんなにエールを送りたくなる、そんな物語です。

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