ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

最高に不器用でキュートな、最強の片想い

『ねじまき片想い』のイラストブックレビューです。

編集

 

老舗おもちゃ会社の敏腕プランナー、富田宝子は、取引先のデザイナーである西島に
5年も片想いをしている。西島に次々と起こるトラブルを、持ち前の機転と行動力で
解決していくが、西島はそのことに全く気がつかない。宝子の片想いの行方は。

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ゆるふわでガーリーな洋服を身に纏い、おっとりとした雰囲気の宝子。
しかし、仕事では次々とヒット商品を生み出す、おもちゃ会社の敏腕プランナーでも
あります。社交的ではないけれど、仕事への情熱は人一倍。そんな宝子が想いを
寄せる相手は、デザイナーの西島。

人当たりがよく、軽薄な印象もなくもない西島へ、もう5年も片想いをしている宝子。
ルームメイトの玲奈からは「とっとと告白しろ」とせっつかれるますが、その勇気は
全くなく、見守っているだけで幸せを感じています。

…っていい大人がね、本当に中学生かよ!?ってくらいに恋しているんです。
西島と宝子は仕事のやりとりももちろんしているのですが、そこでもドキドキしたり
幸せな気分に浸ったり。

宝子のすごいところは、恋に対して小中学生並みなのに、仕事となるとその
子供の部分を遺憾なく発揮し、次々とヒットするおもちゃのプランを生み出して
いるところ。おもちゃの世界、自分の世界に対して確固たる信念を持ち続けて
いて、会社のメンバーはそんな宝子を理解し、尊敬し、そして恋を応援して
あげようとするのです。

西島の周りには、様々な災難が訪れます。仕事場の窓から見えていたスカイツリーが、
向かいのマンションに貯水タンクが設置されたおかげで見えなくなった。
付き合い始めた彼女(!)が、どうやら借金があるらしい…などなど。

そうですか、大変ですね。かわいそうだなあ…で終わらないのが宝子です。
向かいのマンションに乗り込み、手持ちのおもちゃを使って住民の子供を
手懐け…いえ協力を得ながら、設置された貯水タンクについて調査をします。
普段の大人しそうな姿から予想もつかない行動力。このギャップがまたいい。

こうして次々と西島のトラブルを解決してあげる宝子なのですが…。
思い込んだらまっしぐら。でも頭が良くて機転もきく。
普段は控えめで、頭の中で常に新しいおもちゃについてアイデアを考えています。

コミュ障のオタクっぽくもあるのですが、それが彼女の才能であり、仕事に
活かされているというところで、とても魅力的な人物に描かれています。
また、おもちゃを作り出す同じ部署のメンバーも個性派ぞろい。
恋に不器用な宝子を、彼らなりに協力しようと頑張ってくれています。

宝子の、想いを伝えられない臆病さ、今の世界から抜け出すことを拒否する
弱さ。そしておもちゃを生み出す柔らかな発想と、そのベースとなる、おもちゃ
好きな子供の心。それでいい、それじゃダメだ、という宝子の心の揺れが
こちらにまで伝わってきて、応援してあげたくなります。

片想いパワーで次々と問題を解決していく宝子の、想いの結末はどうなるので
しょうか。ふらふらしている西島にケリを入れたくなったりもしますが、
とにかく読者としては宝子を全力で応援したくなること間違いなし。最高に不器用で
キュートな、最強の片想いの物語です。

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