『二人の彼』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 群ようこ
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/11/01
- メディア: 文庫
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女子校の同窓会にきた同級生、会社を突然辞めてしまった夫、35歳になった
娘のためにいまでも弁当を作って持たせてくれる母、前妻と別れて
自分と結婚してくれた夫の真実。ちょっと面倒な、でもやっぱり
大切に思う身近な人たちを描いた物語。
女子校に通った高校時代、不愉快な発言をしては場を凍らせていた
あの子。クラス会で久しぶりに会ってみたら、相変わらずだった。
夫が突然会社を辞めた。次の仕事を探しなさいとハッパをかける妻。
しかし、のらりくらりとかわす夫。そのうち夫は、家事に喜びを
見出したようで…。
35歳で会社に勤める娘のために、未だに立派な弁当を毎日作り、持たせて
くれる母。娘や家の事以外に興味を持って欲しいと思う娘なのだが。
夫に別れた奥さんと子供がいる事は知っていた。慰謝料を毎月払っていることも。
でも支払先は3件。え、なんで?と問いただすと、なんと元奥さんは3人いると
いうではないか!
と、このように身内にいたら結構面倒だなあ、という人たちが登場する
10編を集めた短編集です。迷惑をかけている方の人は、悪気がなく、ごく
自然にふるまっているのだけれども、結果的にはやらかしてしまって、
周りの人がその後始末をしてまわる。そんな関係性が見られます。
やらかす困ったちゃんが、親しくない人間であれば、関係を切ることも
できるでしょうが、母や妹、夫などはそう簡単にはいきません。
こちらが、一生懸命世間的に正しい道へと誘導しようとしても、聞く耳すら
持たない相手には、話を聞いてもらうどころが、向こうのペースに
巻き込まれかねません。
こんな面倒くさい人が身近にいたら嫌だなあ、今のところいないみたいだ
よかったなあ、と思いながら読みすすめていましたが、ふと気付きました。
もしや自分が人をトラブルに巻き込む困ったちゃんなのでは…?
その可能性を全力で否定できないことが悲しくもありますが、裏を返せば
お世話してくれたり、助けてくれる人が周囲にいてくれたのだと解釈し、
とにかくそんな風に手を差し伸べてくれる人の話に、真摯に耳を傾けようと
心に誓ったのでした。
いるよねーこんな人、とうなずくはずが自分が人にうなずかれているのかも
しれないと思わせてくれる作品です。教訓:人のふり見て我がふり直せ。