『風は青海を渡るのか?
The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)』の
イラストブックレビューです。
風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)
- 作者: 森博嗣
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/06/21
- メディア: 文庫
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聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた
試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。
ハギリはヴォッシュらと、調査のために再訪。
トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。
人口生命体「ウォーカロン」シリーズ第3弾。
人口生命体の異変はいったい何を示唆するのか。
人工知能に現れる異常な事態は何故起こるのか。
ここで、驚くべき事態を、聖地ナクチュの近くで
ハギリ博士たちは発見します。
ハッキリ言うとネタバレになってしまうので
ぼかしますけれども、その発見した出来事というのは
人間と人工生命体の新しい関係を示すもの。
それと同時に、人間と人工生命体の区別をあやふやに
することでもあります。
生命への尊厳や価値観も、数百年生きる事が
できる人間とそうでない人間とではまるで違ってきます。
長く生きれば、何故生きているのか、何のために
生きているのか、あやふやになってくるのも無理はありません。
かえって人工生命体のほうが、そういったことを考えない分、
苦しく感じることはないのかもしれません。
体を維持することで「生きる」ことと、思考や意識の上で
「生きる」ことの違い、そして考えることでどうなるのか、
考えないことでどうなっていくのか、そんな命題を常に
与え続けられる物語です。
内容を伝えることはできるのですが、感想を人に伝えるのが
非情に難しい。これを読んだ後に哲学の本も読む必要が
あるように自分は感じました。もちろん、科学エンターテイメント
としても充分楽しめますよ!