『世にも奇妙な君物語 』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 朝井リョウ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2018/11/15
- メディア: 文庫
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はじめに感じたのはほんのわずかな違和感。それがみるみる間に膨れていき、
後戻りできない状況になっていく。そんな、朝井リョウ流の「世にも奇妙な物語」。
それそれがリア充に見える者たちが集まるシェアハウス。彼らがそこに住む理由は
何なのか。コミュニケーションをはかる裁判で下される審判と、現実世界での
生き様の違い。子どもの未来を考えてひた走る、情熱的な幼稚園教諭が得た結果と
その真相。様々なシチュエーションで、朝井リョウが「世にも奇妙な物語」を
展開していきます。
ひとつひとつを短編としても楽しめますし、それらを踏まえた上での最後の話の
意外な結末など、巧妙に仕組まれた構成上からも楽しむことができます。
どの話も、それはさすがにないだろう、と最初は思わせるのですが、いやちょっと
まてよ、ひょっとしたらありなのかもしれないぞ…?と思わせるリアルさは、
登場人物たちが発する心の動きや、物事の展開からの行動が、自分もしくは自分の
周囲に「あるある」または「いるいる」と感じさせるから。
そして、物語たちに含まれる毒が、今の時代、単純な一面では済まされない、油断
していると足元掬われちゃうよ、というメッセージとして私たちに送られているようにも感じます。
緊張感があり、間断なくひっきりなしにやりとりされる現代のコミュニケーション、
そして人との表面的な関わりと内面的な関わり方のメリットデメリットを、冷静に
描き出しています。
人と関わるということ、自分のあり方を理解して行動・発言することの難しさを
軽やかな文章で、しかし深く刺す物語です。