ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

詐欺師たちによる騙し合いの結末はいかに!?

オレオレの巣窟』の

イラストブックレビューです。

 

オレオレ詐欺を組織的に運営し、成功させている平田は、奨学金の返済に苦しむ真奈美と
出会い、互いに惹かれ合う。裏社会から足を洗おうとする平田だが、闇の世界は彼を離そう
とはしない。イケメン結婚詐欺師や、出会い系サイトのサクラなどが加わり、騙し合いが
繰り広げられる。

f:id:nukoco:20191021063238j:plain

入念な台本づくり、「架け子」と呼ばれる電話をかける担当者への徹底した教育、「受け子」と呼ばれる受け取り担当者からは上の人間の正体は絶対にわからないようになっているシステムなど、オレオレ詐欺のやり口が詳細に描かれています。これを組織化、運営する平田は「金があるところから奪っているからいいのだ」という理論のもと、部下を教育し、その信頼を集め、儲けています。地頭が良く、人を惹きつける魅力を持つ平田ゆえの成功と言えるようです。

そんな平田と出会ったのは、奨学金の返済に困窮し、ヘルスで働くことになった真奈美。都内の一流私立大学に合格したけれども、奨学金を利用しても学費や生活費を捻出するために、ほぼアルバイトに費やした四年間を過ごし、卒業してもなお奨学金返済に困り、風俗で働き始めます。勉強ができる子なのに、といたたまれない気持ちになりますが、救いは真奈美がスレていないことでしょうか。借金さえなくなればすぐにもとの生活に戻れそうな清廉さと強さを持ち合わせているように見えます。

平田が真奈美の借金を肩代わりし、真奈美は平田が紹介してくれたキャバクラで働きながら、平田に借金を返していく、という形を取り、二人は仲を深めていきます。真奈美の水商売に染まり切らない部分が、平田の心を動かし、闇の世界から足を洗おうとするのですが、そう簡単にはいかず、身の危険まで訪れて…。

一方、結婚詐欺師も登場します。竹崎は、独身で歳のいった、小金をもっている女性をターゲットとし、運用の指導をしますよ、と持ちかけ口座開設のパスワードを盗み、資金を掠めとるという手口で騙します。そこに引っかかったのは、お世辞には美人とは言えない、体型も太っている貴美子。竹崎に騙され、貯金を失います。自暴自棄になっていたところで一人の老人と出会うのです。そこから貴美子の第二の人生が展開していきます。

オレオレ詐欺グループのトップ、その愛人のキャバ嬢、グループ末端の人間、結婚詐欺師、それに騙された女性。それぞれの関係が巧妙に絡み合いながら、騙し騙されの展開が繰り広げられます。人を騙す鮮やかな手口に目がいきがちですが、騙された人間がどのように自分の人生を取り戻していくかが大事な見どころです。

詐欺という社会悪を、多彩かつスピーディーな展開で描き、読者を引き込んでいくエンターテイメント小説です。

にほんブログ村 本ブログへ