『読みたいことを、書けばいい。
人生が変わるシンプルな文章術』の
イラストブックレビューです。
-
-
-
- 作者: 田中泰延
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2019/06/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る
-
-
「書く」ことについて技術を学ぼうとすることは、出発点から間違っています。もっと
シンプルに、自分自身が読みたいことを、自分自身に向けて書けばいいのです。
事実の中に、自分だけの発見を見つけ、調べ、自分に向けて書く。その結果、誰かと
つながり、人生が、世界が変わるのです。
電通のコピーライターとして24年勤め、自分が読みたいものを書くために退職。
そして自らを「青年失業家」と名乗る著者による文章指南です。「なにを書くのか」
「だれに書くのか」「どう書くのか」「なぜ書くのか」という四つの章で構成され、
フォントは大きく、文字数は少ないですが、適度に笑いを挟みながら、文章の極意を
伝えます。
著者も述べていますが、本書は文章の書き方、という具体的なノウハウを述べると
いうよりは、文章やそこに書かれるものについての考え方を、読者に伝えています。
最も大切なのは、書く対象物について「惚れるポイント」を探し出し、そこを掘り
下げて愛を語るということです。「書く」ことを仕事にしている人は、その対象物が
好きではないどころか、よく知らない、なんてこともままある思います。そこを、
徹底的に関連する資料を読み込み、「ここは好きだ」という点を見つけ出し、それに
関連することをどんどん突き詰めていくのです。
著者はコピーライターという、短い文章のなかで最大限に対象物の良さを伝える仕事を
していましたが、現在のいわゆるライター関係のお仕事では、転じてものすごい量の
文章を綴っています。それだけ大量の資料を読み込んでいるからこそ、到達した結論に
説得力が増すのです。
結論の重さは過程に支えられる。
これは著者の言葉ですが、一般的には第三者に向けた文章では、もっと簡潔に読みやすく・・・などと考えるかもしれません。しかし、大量の資料を頭に入れ、たどり着いた結論だからこそその過程をも明確に記す。「自分はそういうものを読みたい」と思うから書く。そうして出来上がった文章は、人をひきつけるようなものすごいエネルギーを発しているのです。
一方で、書けば書くほど世界は狭くなる、とも著者は述べています。書いた瞬間から物事を決定づけ、広がりを持たなくなるからです。なんとも哲学的な意見です。しかし、自分の読みたい事を書くわけだから、恐れることなく書き続ければ良い、とも言っています。その書いたものを誰かが読んでくれることがあり、そこから世界が広がっていくことにつながるのだと。
たったひとりの読者である自分が「読みたい」と思う文章はどんなものか。
自分が感動した、心が動いたのはどんなことか。自分だけが発見したことは何なのか。書くことは、自分との対話であり、その対話に反応してくれる人がいることで、世界が広っていき、人生が変わる。そんなことを教えてくれる一冊です。