ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

クイズ感覚で思考力を鍛えよう

論理的思考力を鍛える33の思考実験』の

イラストブックレビューです。

 
 

 

思考実験とは、ある特定条件の下で考えを深め、
頭の中で推論を重ねながら自分なりの結論を導き出していく
思考による実験のこと。

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暴走したトロッコの先に5人の従業員がいる。
線路を切り替えれば5人は助かるが、切り替えた方の線路の先には
1人の従業員がいる。
あなたは線路を切り替えますか?
それとも切り替えずに、そのままにしておきますか?
そしてその理由は?

線路にいる従業員はどれも知り合いではありません。
声を出して伝えることはできず、あなたにできることは
線路を切り替えるか、切り替えないかだけです。
さて、どうしましょう。

切り替える、という選択をした場合。
5人の命は助かり、1人の命が失われます。
つまり、多くの命を助けるために、1人の命が犠牲に
なるのはやむを得ない、という考え方です。

切り替えない、という選択をした場合。
5人の命は失われ、1人の命は助かります。
こちらの考え方はこうです。
5人はもともとそうなる運命だったのだと。
他者が手を加えて本来助かるはずだった1人の命を
あえて犠牲にすることはない、というのです。
人の生死に積極的に関わらない、自分の意思によって、
自分の手によって人の命を落とすという行動を取らない、
ということです。

このように、必ずしも正解を求めるものではありません。
生きてきた環境や本人の性質によって、解釈や考え方は
いくつもあるからです。そうした考え方を知り、
新たな角度から物事を見ることや、これまでの自分の考え方と
違った方向から考えることで、新たな発想や解決策が
見えてくることがあります

こうした倫理観を問う問題がある一方で、数学的な問題もあります。
あるクイズ番組で、参加者は3つのドアのうち、1つを選びます。
当たりは1つで、あとの2つは外れです。
参加者が選んだ以外の2つのドアのうち、外れのドアを
司会者は開けました。司会者は問います。さて、選んだドアを
変更しますか?と。

正解の確率は、最初は3分の1です。
外れのドアが1つ開いたことで確率は2分の1に。
…ではなくて最初に選んだ以外の2つのドアが3分の2の
確率になるため、確率が上がるのです。
混乱しそうにもなりますが、図を用いて説明しているので
数学が苦手な人でもすんなり理解できるのでは。

倫理観を揺さぶる思考実験、矛盾が絡みつくパラドックス
数字と現実の不一致を味わう思考実験、不条理な世の中を
生き抜くための思考実験など、さまざまなタイプの
バラエティ豊かな実験を記載しています。
チャレンジすることで、自分はこういう問題は苦手、
あるいは得意だ、ということに気がつくかもしれません。

問題解決に、ディベートに役立つ論理的思考力を、ゲーム感覚で
身につけることができる本です。考え続けることで論理的思考力は
鍛えられ、新しい発見と適切な対応力へと繋がっていくのです。
論理的思考は苦手だからちょっと無理…と思う方ほど一度手に
取って見ることをお勧めします。