ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

自分の糧となる「孤独」をもっと楽しもう

「孤独」はつくって愉しむもの 』の

イラストブックレビューです。

編集

 

まずは、世の喧騒や雑音をなるべく排除しようとしてみること。それが「孤独」への
第一歩。自分にとって不要なものは次々と削ぎ落としていけば、人生の真実や世の
実相が見えてくる。「孤独」はあらゆる「変なもの」に惑わされないための強力な
武器となるのだ。

f:id:nukoco:20190126180412j:plain

集団にいれば集団からの情報を、SNSを利用すればその感想を、ネットを開けば
ニュースにブログ…と、世の中には多くの情報が溢れ、そして学校や会社に属せば
そこに沿うような考え方を求められます。そうした人間関係や情報から離れ、あえて
「孤独」を作り出すことで、どんな効果が得られるのでしょうか。本書は「孤独」の
必要性とそのメリットを解説します。

どこにいてもスマホを手にすれば、誰かと繋がっているような時代です。
そんな時代に、自分がひとりで集中して考える時間を持っているでしょうか。
また、いろんなしがらみから離れてこれが自分自身の考えだ、というものを
持っていると言えるでしょうか。

家族もいるし、会社に行けば他の社員もいるし、手にはスマホを持ってるし、
ということで、なかなかひとりになれる時間はないのではないでしょうか。
そこであえて自分で「孤独」を作り出す。すると、どんなことが起こるのでしょう。

情報に惑わされない。自分自身が本当に望むもの、やりたい事を見つけることが
できる。自分自身の持つ能力を理解できる。客観的に物事を見ることができる。
孤独になる事で、本当の絆を得ることができる。人生を豊かにすることができる。

…と、さまざまなメリットがあります。
一人になる時間を持ち、じっくりと物事を考えてみる。
世論や、周囲の多くの人が是と言っている問題の非について考えてみる。
そうすることで、自分自身の器を大きく、深くしていくことができるのでは
ないでしょうか。

多様性と言われつつも、周囲と違う事をすればどうしても目立ってしまう日本。
しかし、それぞれが自分自身の「個」について深く考えているのであれば、
他人と異なることがむしろメリットになる、というように考えることができる
のではないでしょうか。

「孤独」によって個が際立つ。
周囲に流されることのない、揺るぎなく、より強い「個」を築くためにも、
「孤独」は大切な糧となるのです。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング

日本をつくってきた人たちはすごい。そしてやばい。

東大教授がおしえるやばい日本史』の

イラストブックレビューです。

 

「すごい」ことを成し遂げて歴史に名前が残った人物たち。ですが、そんな偉業を
やってのける人たちも、大きな失敗をしたり、まわりからドン引きされるような
おかしな行動を取ることがあります。歴史がぐんと身近に、そしておもしろくなる
歴史上の人物の「すごい」と「やばい」をマンガと文章で詳しく解説。

f:id:nukoco:20190126180100j:plain

戦国の世を勝ち抜き、平和な江戸幕府をつくった「すごい」徳川家康は、武田信玄との
戦いで、ビビってうん◯をもらした。悩み苦しみながらもベストセラーを連発し、弟子
まで育てた「すごい」夏目漱石は、原稿用紙に鼻毛を植え付け、弟子にコレクション
される…などなど、面白エピソードが満載です。

二六四年続く江戸幕府を開いた徳川家康。ずる賢く「たぬきオヤジ」と言われて
いましたが、天下統一を果たし、長く続く平和な世の中の礎を築いた偉大な人物です。
その徳川家康が、なんとうん◯漏らしていたとは!!三方ヶ原の戦いで、戦国最強と
言われた武田信玄と真っ向から戦うことに。全く歯がたたず、ほうほうの体で逃げ
戻ったそうです。その際、恐怖のあまり、お尻から出てしまったようです。

その際の家臣とのやりとりが秀逸。

ようやく浜松城に帰ったとき、家康のよごれたおしりを見た家臣が
「殿!ビビってうんこをもらしたのですな!なんと情けない!」と叫んだので、
家康は「こ、これはクソではない!腰に付けてた非常食用のミソじゃ!」と言って
なんとかごまかしました。(いや、くさいし、たぶんごまかせてませんが…)。

ミソかよ!家臣もね、殿にそこまで言われたらハイ、ミソですね、ミソミソ。
と言うしかありませんよね。家康ももらしたことはごまかすのですね。いや、
堂々と「オレもらしちゃった!」って言うのも変かな…。いずれにしろ、
命がかかった極限状態だったので、まあ仕方のない状況だったのでしょう。

しかし、この話にはまだ続きがありまして。家康はこの時の情けない自分の
姿の肖像画を描かせて、自分の恥ずかしい姿を残し、自分自身の教訓として
いたようです。さらに家臣には、ふんどしは汚れが目立たないように白じゃ
なくて黄色を選ぶといいよ!などとアドバイスまでしたとか。さすが天下人。
全てが生きるための糧になるようです。やばいけどやっぱすごい人だ。

このように、歴史上に名を残す人物たちの「すごい」と「やばい」のエピソードを
イラストや漫画を交えて解説します。清少納言は美しい文章が注目されているが、
貧乏や美しくないモノの悪口を言いまくっている、とか紫式部はインテリだけど
かなりの毒舌、など、テストの時の暗記の対象でしかなかった人物たちが生き生きと、
人間味のある様子で描かれています。

すごい人たちは特別な部分もあるけれど、やはり間違いも失敗もする一人の
人間であるのだということがよくわかります。そう考えると、彼らのことが
身近に感じることができ、また彼らが生きた時代背景についてもすんなりと
頭に入ってくるようです。

日本の歴史はつまらない、興味ないなあと言う方には、とても楽しめる本です。
笑えるイラストと表現が満載なので、小中学生にも喜んでもらえるのではないで
しょうか。それにしても、偉業を成し遂げたすごい人物たちのもう1つの顔を
知ることができる、おもしろ歴史本です。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング

人間と妖怪の距離が切ない物語

座敷童子の代理人』の

イラストブックレビューです。

編集

 

 

 

 

 

 

product.rakuten.co.jp

 

 ヒット作が出せず、作家生命も危うくなってきた妖怪作家、緒方貴司。
座敷童子が出るという遠野の旅館「迷家荘」に逗留し、執筆活動に励もうと
したところ、妖怪たちが次々と現れて…。人間と妖怪のあたたかく、そして
ちょっぴりせつない物語。

f:id:nukoco:20190126175720j:plain

 

作家生命をかけた作品を創り出すべく、遠野にある、座敷童子が現れるという
旅館へ長期滞在することにした作家の緒方。旅館の近くまで来た時に、不思議な
少年と出会います。それ以来、なぜか河童や狐などの妖怪たちが見えるように
なった緒方は、彼らの力を借りて旅館に起こるさまざまなトラブルを解決して
いきます。

客室でのお土産の紛失、体調を崩した料理人の代わりにやってきた、迷家荘の
元従業員の妖怪に対する嫌悪、なにかとちょっかいを出してくるお稲荷さんの狐。
座敷童子に守られているはずの旅館なのに、何故かトラブル続き。
お客も思うように入らず、経営は苦しい状態です。

それでも、風呂の調子が悪ければ河童が出向いて調節してくれたりと、
妖怪たちも人間のことを憎からず思ってくれているようで、概ね協力的です。
そして面白いのは、妖怪が見えるのは緒方だけ。
旅館の仲居であり跡継ぎでもある和紗と、緒方と妖怪で部屋にいて、妖怪が
お菓子を食べています。すると、妖怪を見えない和紗には緒方がお菓子を
食べているように見えるんだとか。人間の脳が、理解するものしか認識しない
ために、そういった事態になるようです。不思議ですね。

物語後半、先輩の仲居である幸村さんが、ある神様のもとへ嫁入りすることになりました。
人間としては、余命いくばくもない身体。和紗に仕事のあらゆることを教えてから
命を全うしたいと神様にお願いして延命してもらっていましたが、その期限も
もう尽きてしまったのです。

そこで緒方が考えたのは、妖怪と人間とを集めて披露宴を行う、ということでした。
妖怪のほうはあまり乗り気ではない様子。そして幸村さんの父親は、半信半疑ながらも
娘の望むことならば、と披露宴を行うことには協力の姿勢を見せてくれました。
心もとないメンバーで始まろうとした披露宴は、果たしてどうなるのか。

妖怪や神様など、人ならざるモノと、人間とは決して相容れない関係です。
相手のことが見えないのは、互いに特別な感情を持ったり、行き過ぎた干渉や
お節介を働かないようにするためなのかもしれません。神様や妖怪が自分の
味方だからって、おかしなことをお願いするのは考えものですしね。

この作品は、妖怪の姿を見、意思疎通できる緒方が、妖怪のメッセージを
他の人間に伝えます。これくらいの距離感が、一般的な人間と妖の適切な
距離なのではないでしょうか。普段は妖怪たちと軽妙でコミカルな会話を
交わしている緒方。ですが、人間と物の怪は違うものだよ、違う世界で
生きているんだよ、というメッセージが伝わってきます。だからこそ、
少し離れたところから感謝したり、大事に思ったりすることが大切なんだなあと、
そんな事を感じた物語でした。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング

「視える作家」が描く「引き寄せる猫」との日々

猫怪々  

イラストブックレビューです。

編集

 

ペット可、猫に優しい街…などの条件に合う物件を求め、ようやく
ピッタリなマンションを見つけて購入した著者。ある日、路地裏で
ぐったりとした子猫を見つけ、慌てて病院へ連れていく。飼うことを
決意した著者だが、子猫はいくつもの病気を持ち、おまけに怪奇現象
まで連れてきた。大事な子猫のためにあらゆる対策を講じる、愛情あふれる
育猫日記。

f:id:nukoco:20190126172512j:plain

 

お化けの類が大好きで見たり聞いたりした物の怪を文章に綴る著者。
引っ越し先の条件の中にも、

いい神社、または寺があり、氏神様と気が合うこと、
そして何もいな…くない場所!

という項目も入っています。見える方ならではのチョイスですよね。
見えない自分にとっては恐怖の対象でしかありませんが、見えないから
「見えたらどうしよう」という怯えた気持ちがなお一層怖さを増大させて
しまうのかもしれませんね。

そして著者が拾った子猫。具合が悪そうなので病院に連れて行きます。
二泊三日の入院で戻ってきた子猫は、血液検査で猫白血病のウィルスが
陽性。しかし、この子猫の面倒を見る!と決意した著者は家で飼うための
準備を始めます。が、子猫の面倒は身の回りのお世話だけではなくて…。

「のの」と名前をつけて、子猫につきっきりの毎日。ときおり、なまぐさい
臭いが部屋の中を漂うようになります。ののちゃんをひざに抱え、般若心経を
となえると、子猫の背中から真っ黒な小蝿のような小さなものが何百も、
羽音を立てて飛び去ったのです!怖えぇぇ!!!ナニソレ!?

その夜、寝るときに著者の瞼に浮かんだのは、体が潰れ、血まみれで目を見開いた
犬の姿。また別の日も、あらゆる死にかけた動物の姿が浮かび上がる。
どうやら、死にかけた子猫を拾ったことで、羨ましく思った動物たちが
自分も助けてほしい、とやってきたらしい。いやいや、どうすんのコレ。

お札を貼って見たり、お経をとなえてみたり、掛け軸を設置してみたり。
祈祷師や霊能者に相談してみたりとあらゆる手を使い、猫の体調はどんどん
回復していくのですが、著者のほうが体重が落ちてしまうという具合。
掛け軸がいい仕事してくれたようで、なんとか霊は退散した様子ですが
子猫が起こすトラブルはこれだけでは済まされません。

ホラー要素もあり、怖い描写もあるのですが、結局は猫を愛する著者の気持ちが
溢れまくっている日記です。愛があれば物の怪だって、病気だって、逃げ出さずに
全力で立ち向かっていけるのだ!という著者の強い気持ちが伝わってきます。
そしてこれだけ必死にののちゃんのために駆けずり回っている著者の苦労を
気にせず、好き勝手に寝転んだり暴れまわったりするののちゃん…猫あるあるですね。

神社やお寺に興味を持ち、人ならぬモノが見える著者。猫との出会いも、神様が
引き合わせてくれたご縁であると解釈し、大事にしようと考えています。
そして生きるモノの生命についても地に足のついた、しっかりとした考え方を
持っているところに好感が持てます。
視える著者自身が、引き寄せる猫を「引き寄せた」のかもしれませんね。
猫好きさんにはもちろん、物の怪の類に興味がある方にもオススメの一冊です。

本・書籍ランキング

宝石箱の中にしまっておきたくなるような少女時代

ミーナの行進 

イラストブックレビューです。

編集

 

ミュンヘンオリンピックが開催された1972年、十二歳の少女、朋子は芦屋の
伯父の家で一年間世話になることになった。大きな家、広い庭、無口な伯母と
おしゃれなローザおばあさん。そして、1ひとつ年下の少女、ミーナ。
体が弱く、本をたくさん読み、博識なミーナと彼女たち一家を描く物語。

f:id:nukoco:20190126172149j:plain

 

母親の仕事の都合で、母の姉が嫁いだ芦屋の家に一年間暮らすことになった朋子。
着いたお屋敷は、広大な敷地と立派な洋館。驚いたことに、庭ではコビトカバ
飼育していました。なんでも数種類の動物を庭で飼育し、動物園として解放していた
時期があったのだと言います。

ダンディでスマート、話題も豊富で常に皆を笑顔にさせてくれる伯父、
普段はウイスキーを飲み、タバコを吸いながら、本やパンフレットなどの印刷物の
誤植を探して過ごす、静かな伯母。そしてドイツから嫁に来たという、おしゃれな
ローザおばあさん。そして伯父と伯母の娘であるミーナ。クォーターである彼女は
透けるような美しい肌と、ふわふわとした濃い茶色の髪を持つ十一歳の美少女でした。
そして、家を取り仕切る住み込みのお手伝いの米田さん、庭師の小林さんたちとともに
暮らした、一年間の物語です。

ヒットした清涼飲料水を手がける会社の社長である伯父。ドイツ出身のローザ
おばあさんのために、初代社長だったおじいさんが、ホームシックにならない
ようにと建てた洋館は、調度も外国のものを取り揃えて立派なものでした。

岡山のごく普通な一般家庭からやってきた十二歳の少女にとってはどれも新鮮な
驚きに満ちた世界です。そして、従姉妹のミーナ。歳の近い二人は意気投合します。
喘息を持っていて、体が弱いミーナは入院することも多く、活発に動き回ることも
できません。近くの小学校に通う時はなんと飼っているコビトカバのポチ子の背中に
乗って登校しているのです!ファンタジーだなあ。

朋子が感じる、ちょっと変わった一家の空気感。朋子を家族として包み込んでくれる
安心感。ミーナと語り合う将来のこと、あまり突っ込んだところは話さないけど、
何となく感じる恋のようなもの。一家が皆でカバのポチ子を可愛がる様子。皆で
ミーナを心配し、全力でサポートしようとするところ。

ミュンヘンオリンピックの中継で盛り上がったミーナとのバレーボールの練習。
ローザおばあさんが思いを馳せる生まれ故郷と、二度と会えなくなってしまった
おばあさんの双子の姉妹のこと。ローザおばあさんと米田さんが歌う、美しい
ハーモニー。無口な小林さんとポチ子の、心が通じ合っている雰囲気。

本物のモミの木が家の中に飾られ、ローザおばあさんがこの時ばかりは監督となって、
全員に指示を与えながら時間をかけて作るクリスマス料理の数々。

朋子が過ごした日々は柔らかな光に包まれ、美しい言葉で、綴られていきます。
小川洋子という作家は、静かで透明感があり、悲しみさえも割れた
ガラスのようにキラキラと輝いているような文章を書く方だなと感じます。

どれも穏やかな光に照らされた宝石のような、輝きに満ちた出来事。少女たちの
人生に大きな部分を占めた一年間であったことでしょう。知らないこともたくさん
あるけれど全力で生きて、全力で誰かを思い、そして自分も大切に思われている。
そんな事を感じさせてくれる物語です。

本・書籍ランキング

未来に目を背けるのも向かっていくのも自分自身。

あの日にドライブ

イラストブックレビューです。

編集

 

牧村伸郎は、銀行を辞めてタクシードライバーをしている43歳。
次への仕事のつなぎのつもりではじめたタクシーの運転手だが、営業成績も
伸びず、疲れ果てて帰り、転職のための勉強もはかどらない日々を送っていた。
そんな伸郎は、ある日ふと思い立ち、青春時代を過ごした街へ向かい、もう一度
人生をやり直すことができたら、と考えはじめる。

f:id:nukoco:20190126171750j:plain

 

タクシードライバーをしているのは生活のため。今だけだ。俺だっていつかは…と
思いながらも日々のノルマは果たせず、子どもたちからは冷たい目線を
向けられ…と、パッとしない日々を送る伸郎。

43歳という年齢は、引き抜きやらそれなりの職歴がないと、転職は難しいですよね。
伸郎にしても、自分が務めていた誇り高き銀行というバッヂは外してしまえば
何の役にも立ちません。ある意味、ここから伸郎の本当の人生は始まったと
言えるのかもしれません。

しかし、当の本人はといえば、ノルマを達成できないのはタクシー利用が
減っているこのご時世のせい、車にカーナビが設置されていないせい…などと
ぼやいている様子。そして、本人は気をつけているようですが、体から滲み出す
タクシー運転手なんて…といったような見下した空気。

まあ、はっきり言って、銀行という箱に入って、自分の能力があると思い込んでいた
けれども、実社会であまり役に立たない、愚痴の多い中年というところ。
これは、銀行という古くからの縦割社会で、上司は絶対という環境にストレスを
抱えながら踏ん張ってきたことにもよるのかもしれません。そんな環境が受け継がれて
いる中で働いていたら、自分のストレスは部下に威張ることだ、なんて上司が
発生するのも仕方のないことかも。

伸郎は、ふと思い立ち、学生時代に付き合っていた女性の自宅の方までタクシーを
走らせます。すると、運良くお客を捕まえることができたのです。それも何度も。

そこで伸郎が得たのは「客を得るのは偶然だ」ということ。
え!?偶然かよ!?
いやしかし、謎の先輩ドライバーの後をつけたりして、自分から客をつかまえるための
ヒントを得るために動き出した伸郎は、成績を伸ばし始めます。
ですので、「偶然を得るための最大限の努力をした結果」、客を得ることにつながる
事を学んだのです。

学生時代に付き合った彼女と結婚していたらどうなっていたのだろう。
んな事を考えては、日々のつらさから目を背けていた伸郎ですが、銀行員であるとか、
今タクシー運転手であるとか、自分が思う仕事への偏見や自分への思い込みから解放された時、
自分の周囲にある幸せや、喜びに目を向けることができたのです。

自分だったら、別れた相手と結婚していたらどうだったのだろうなんて、
考えるのも時間のムダなんでやりませんけど、伸郎はそうすることで、ヘタレなダメ男っぷりが
強調されて笑ってしまいますね。

今立っている場所が自分の生きる場所。
そう理解して、生きていくことが自分と、自分の周囲の人たちが幸せになることに
繋がっていくのだということ教えてくれる物語です。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング

表紙から入る読書もいいものです

本屋さんでランダムに本を選んでいるつもりなのに、作家もジャンルも偏らないように
したはずなのに、何だか似たような本を買っている気がする・・・?
そう、それは表紙のイラストレーターさんが一緒だったという単純な理由でした。

そういや20代の頃は表紙のイラストが好きで、買っていた小説がいくつかあったなあと。
最初に、その絵柄に惹かれて手に取ったのは確か、栗本薫の『天狼星』。
表紙を手掛けているのは大御所、天野喜孝

 

天狼星

天狼星著者: 栗本 薫

出版社:講談社

発行年:1989

Reader StoreブックパスAmazon

 

メガネのひょろっとした、心優しき探偵、伊集院大介が、連続殺人鬼シリウス
はじめて対決することになった物語。この表紙の、暗くて美しく、恐ろしいけど
目が離せない雰囲気が、物語にぴったりとはまりました。
表面的な美しさをたたえた人物の背面に潜む、幾重もの影を感じさせてくれます。
伊集院大介シリーズをはじめ、著者同名の若者、栗本薫が探偵として
活躍するシリーズなど、栗本薫作品にハマるきっかけとなりました。

そして、こちらもまた有名な方ですが、そんなに得意でないSFファンタジー
ものに手を出すきっかけを与えてくれた藤川桂介の『宇宙の皇子』。

 

 

↑あっ ひどい!表紙が出ない(泣)。

飛鳥時代壬申の乱の最中、頭に角が生えた少年が誕生。その姿によって周囲から
蔑まれ、天涯孤独の身に。老婆に拾われ、育てられた少年は『宇宙皇子』と名づけられ
様々な出会いや別れを経験し、成長していきます。

イラストはいのまたむつみ。萌え系のイラストのようにも見えますが、目を惹くのは
その透明感。日本画を思わせるような、淡く、筆の動きが見えるようなその塗り方が
壮大に広がる世界観を見事に表しているように思います。

最後はこちら。

 

スカイエマ

スカイエマ著者:

出版社:玄光社

発行年:2014

Amazon

 

この方が表紙を手掛けた文庫を何冊も持っているのにもかかわらず、「もっと見てみたい」
という気持ちが強くなったのでイラスト集を買ってみました。

まずはそのジャンルが多岐にわたっていることに驚きます。
現代物、時代物、海外物、子供向け。出版社も大手はほぼ網羅しているようですので
文庫の棚をまわれば、スカイエマの表紙に当たる、といったところでしょうか。

目を惹くのは構図と色。躍動感が溢れるポーズの主人公たちが、狭い紙のスペースから
飛び出して行ってしまいそうです。そして少しくすんだような青とオレンジが、
哀愁を感じさせるのです。力強い、ゴツゴツとした線描もいいです。

どんだけ好きなのかしら、と手元にあるスカイエマが表紙の本を調べてみたのですが
『その時までサヨナラ』山田 悠介 (著)、『こっちへお入り』平 安寿子 (著)、
『刺青殺人事件 新装版』『神津恭介、密室に挑む―神津恭介傑作セレクション』高木 彬光 (著)、
『ペナンブラ氏の24時間書店』ロビン・スローン (著), 島村 浩子 (翻訳)、
『さよなら、シリアルキラー』『殺人者たちの王』『ラスト・ウィンター・マーダー』
『運のいい日』バリー・ライガ (著), 満園 真木 (翻訳)、『うずら大名」畠中恵(著)、
などなど。ラインナップを見ても、幅広いジャンルを手掛けているのがわかりますね。

表紙は本の顔。手に取る強い引きと、読んだ後にぴたりとハマる絵柄であるか、好感が
持てるものであるかなど、様々な条件が求められると思います。
大御所しかり、現代の売れっ子しかり、絵が素晴らしいのはもちろんなのですが、
『物語の顔』として最適なものを提供できるところがスゴイ。
天野喜孝いのまたむつみらの作品は20年たっても全く色あせていません。

物語が素晴らしいのは当然ですがその魅力をさらに引き出し、より広い層の読者を
獲得する役割が表紙にはあると思います。そんなことを考えながら、目に飛び込んで
くる表紙はどれかな?と本屋の棚を歩くのも楽しいものです。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング