ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

大人のための極上な癒しの場所と時間

午后のあくび 』の

イラストブックレビューです。

 

毎日がちょっとフシギ。ヘンテコな事が次々と、あぶくのように
湧いてくる、ここは白玉町。この街に住むOLのひび野あわこさんの
うたかた日々を綴った、キュートなショートマンガ。

f:id:nukoco:20180622232108j:plain

 

猫の道案内、傘を通して見える水中の世界、北極を目指して
屋台をしながら旅をするしろくまおとぎばなしのような
かわいい登場人物、物、景色は、忘れかけていたワクワク感を
思い出させてくれて、時に楽しく、時に切なさを感じさせてくれます。

気に入ったのは『船の図書館』というお話。
その名の通り、船の中に(というか上に?)図書館があります。
借りたい本があったけど、今日出港してしまうという船。
では借りる事は無理か、と肩を落とすあわこさんに、
館長(?)の女性が本を貸してくれると言います。

返却日はだいたい2年後
それくらいにまたここへ来るから
そのとき返しにきてよ

そう言って船は港を出て行くのです。
船の上の図書館、という設定もグッと来ますが、次にやってくる
までの、2年までもの間本を貸してくれる。
その大らかさと、読者を信用してくれる加減に、心がじんわりと
暖まるような感覚になります。

ほのぼのとしたかわいらしい絵柄と、やさしくてファンタジックな
内容がピタリとハマり、極上の癒しの時間を与えてくれます。
ちょっぴりユーモアを効かせたセリフのやりとりもあり、大人の
ための物語としても楽しめます。
日常とフシギの境目が曖昧になる、そんな感覚が心地好い
ショートマンガです。

言葉が発する色と感度の世界に心地よく引き込まれる

ヤモリ、カエル、シジミチョウ 』の

イラストブックレビューです。

 小さな動物や虫と話ができる幼稚園児の拓人。
彼の目に映るのはカラフルでみずみずしい世界。
ためらいなく恋人との時間を優先させる父親と、
待つことに嫌気がさしている母親、しっかり者の姉に
守られながら、大人たちの穏やかでない世界を冒険する。

f:id:nukoco:20180622231828j:plain

拓人は言葉の発達が遅れていて、大人の言うことや
早口で話された事を理解できないことがあります。
そのかわり、その人が発しているものや、その場に漂うものなどを、
音や色で感じているのです。言葉のストックが少ない彼の
思った事や感じた事は、物語の中ですべてひらがなで表記されます。

ピアノのレッスンに通うお宅の庭で、拓人はこのように感じています。

みずをまかれたばかりだからか、それらのつぶやきはぬれて
あわだっているようにきこえる。ぷちぷち、とか、ぞぶぞぶ、
とか、わらんわらん、とか。

拓人の思いを伝える第三者的な目線作者?が、拓人の感覚を
通訳し、ひらがなで伝えているので、平仮名ながらも幼児では
使わない表現も出て来ます。そこは読み手をスムーズに導くため
のものなのかなと思います。

そして、その色や音を表すオノマトペが心地よく、不思議と
その空気のゆらぎのようなものまでも伝えてくれるのです。
透明な繭に包まれ、その繭越しに世界を見ているような、そんな
感覚を覚えます。

拓人の美しい世界からの、大人たちの重々しい現実。
そこには浮気していても悪びれず、なかなか家に帰らない夫。
母親はそんな父親と別れる気はないが、待つことにも疲れ、
放心した状態になることもしばしばある。
話し合っても噛み合わない夫婦。
拓人はこんな空気も色や気配で感じとっている。

ジュースの感想を拓人に確認した母は、

かべのどこかをぼんやりとみている。いないかんじに
なっているのだとわかった。たくとはいまここにいるけれど、
ははおやはいない。

会話の成立しない拓人、帰ってこない夫に淋しさを感じ、
沈み込んでいくような母親に対して、拓人はこのように感じているのです。
ひらがなで表現されているために、悲しみさえもやわらかく
深く、そして哲学的のようにも思えてきます。

そんな拓人も自分を理解してくれる友達を得て、少しづつ変化して
いきます。繭越しに見ていた世界から、少しづつ現実の世界へと
歩みだしていくのです。現実で生きていく力を得るためには、
虫と話せる力や、人や建物が発するものを感じる力は、
少しずつ失ってしまうものなのかもしれません。

幼い子どもの中にはこんなにも美しい世界が広がっている。
大人に見えないものは、心の奥底の柔らかい部分を
やさしく撫でてもらっているような、あたたかで少し淋しいような、
そんな気持ちにさせてくれる物語です。

美しく幻惑的な世界に隠された真実

湖底のまつり』の

イラストブックレビューです。

 

旅先で川に流された紀子は、助けてくれた晃二と一晩を過ごし
身体を重ねる。しかし、翌日になると晃二は姿を消していた。
地元の人に尋ねると、彼はひと月前に毒殺されたという。
では、昨夜の男はいったい誰だったのか。美しい描写と
折り重なる謎が深い余韻を残すミステリ。

f:id:nukoco:20180622231529j:plain

 

美しい山里の景色。突然姿を変え、荒々しい牙を剥き、あらゆるものを
飲み込もうとする河川。村で行われる最後の祭り。やがてダムの底に
沈みゆく村。

あらゆるピースが、丹念に、妖しい美しさ持って描かれています。
田舎の里山の自然や、村で行われる派手ではないが何か荘厳な
雰囲気を感じさせるお祭り。男女との絡みでさえも、薄暗い光の
中で、まるで夢かうつつかのように綴られています。

毒殺された男とは何者なのか。
ダム建設の反対派組織に属していながらも、いざとなれば身を翻す
ような狡猾な部分を持ち合わせていた男。そして、結婚してすぐに
この夫に死なれてしまった妻は、ダム建設の測量士でもあります。
この男は毒殺される前、妻以外の若い女性と会っていたようなのです。
この若い女性というのは何者なのか。

警察の調べによりさまざまな事実が明らかになっていきます。
そしてラストに向かうにつれ、そう来たか!という展開が
次から次へと訪れます。ちょっとびっくりするラストでしたが、
緻密に作られたパズルのピースが、ひとつづつはまっていく
様子は、爽快感さえ感じます。

構成だけが重要なのではなく、人物描写が細部までしっかりと
していること、そして山里や祭りなどの場の空気感まで細かに
表現されているからこそ、ラストに説得力が生まれ説得力が
生まれるのです。
最初から最後まで漂う重厚感、そして妖しく美しい世界観が
読む者を別世界に連れて行ってくれる、読みがいのあるミステリです。

色から広がる世界は無限のおもしろさ!!

色の秘密 色彩学入門 』の

イラストブックレビューです。

人の心と体に影響を及ぼし、その好みで相性、適職までわかり
ストレス解消にも役立つ色の秘密。
日本の商品学の草分け的存在である商学博士が科学的に解明した
現代人への快適色彩生活のススメ。

f:id:nukoco:20180622231238j:plain

色自体が人間にもたらす力、そして色の好みでわかる基本的性格、
快適な生活を送るための色彩術、色の力の生かし方、食べ物と色の
関係、文化人類学上の色彩術…。
実に多岐にわたって、色と人間、社会文化について解説しています。

面白いのは日本のインテリア、和室についての解説。
和室は白や緑の砂壁、畳、柱や天井やタンスなどの木材などで構成
されており、これらが光を反射する率は50%。住む人の
肌色も50%なので、色合いとしてよく馴染む仕組みになっているのだそう。

また、和室全体から飛び込んでくる色彩はベージュ色であり、
この中間色は暖色系や寒色系よりも筋肉を弛緩させる、つまり
精神的なリラックス促し、ストレス解消にも役立つのです。
和室に入るとホッとして、心が落ち着くのには、ちゃんと
理由があったのですね。

また、色の文化人類学の章では、国ごとに好む色の傾向と
その理由を説明しています。例えば、ラテン系は暖色系、
特に赤、橙、黄を好むのですが、それは豊かな太陽光線によって
赤色視覚が発達したからだと言われているそうです。
なるほど!太陽光の強い場所でははっきりとした明るい色に
囲まれていれば毎日テンション上がりそうですよね。

一方我らが日本は、絹と檜の光沢が放つパステルカラーが
色彩感覚の原点なのだとか。また、千利休が提唱した侘び寂びに
ついても色彩の点から解説。

詫びは、茶道・俳句に見る質素な風情と枯淡の美をいい、
寂は閑静な風趣をいい、古びて趣の深い美しさをいう。

つまり、ヒノキやスギなどの建築素材が時を経て、やがて
灰色にくすんで見える木肌をも寂と称して、別の観点からいつくしむのです。
このくすんだ灰色も中間色で、心身のリラックス効果があるわけです。
こうした色の変化を劣化と言わず、味がある、と楽しむ繊細な感性が
日本人の素晴らしいところだよなあ、と嬉しくなります。

こうした住空間から、文化論についての考察も非常におもしろいですし、
心理学的な色による性格診断のようなもの、音に色はあるのか、
色に熱はあるのか、などなどあらゆる切り口から色について
考察しています。雑学的な内容としても楽しめますし、
日本の文化についても見地を深めることができる、とっても
お得な内容の本なのです。

色と人、社会は密接な関係にある。その秘密の解明はワクワクします。
そして上手に日々の暮らしに取り入れれば、快適な暮らしを
送ることができるのです。色の可能性や効力に驚きと楽しさを
感じ、そして色から見える世界の広がりに心踊る一冊です。

集中力は意図的に作れる!!

今すぐ!集中力をつくる技術 

いつでもサクッと成果が出る50の行動』の

イラストブックレビューです。

集中力にやる気も才能もいりません!
集中力に必要なのはコツだったのです。
行動科学用いて今すぐ集中できる50の行動を紹介。

f:id:nukoco:20180622231014j:plain

冨山真由著、石田淳監修、森下えみこ本文イラスト。
本を開いて、あら?これ似たようなの持ってるな…と調べたら
『めんどくさがる相手を動かす技術』が全く同じメンバーでした。
というか、デザイナーも同じ方なので、中面のレイアウトも同じ。
カバーのイラストが違うので、見た目の印象は異なりますが。
まあ、内容も自分を動かすか、他人を動かすかという違いが
ありますけども。

出版社の、これが売れているので別企画でやりましょう!という
会議の声が聞こえてきそうで、おもしろいですね。
売れている本には理由があります。だから、その利点を活かして
切り口を変えて、新しい形になって市場に出てまた売れる。
本の世界は回遊魚のようにグルグルとまわっていて、そこが
おもしろいところだなと思っています。

さて、ダラダラ癖から抜け出すための10の法則という本を読んでから
行動に関する本を多く手にするようになりました。
ダラダラをやめる、抜け出す、後回しをやめる、一瞬で集中する…
どんだけあちこち気が向きまくっているんでしょうか。

今回手にした本書は、タイプ別に集中する技術を紹介しています。
やる気根性がなくても集中できるんですって!ありがたいなあ。
毎日本読んでレビュー書いてても時間がなくてヒィ~ッとなること
が週に2回くらいある自分にとっては、ゲームやらネットする時間をやめて
作業時間に当てれば有意義な日々を過ごせるだろうに…。

イロイロと画面の向こうでツッコまれているような気がしますが
それはひとまず置いておいて、本の内容をザックリとご紹介。

気が散る、飽きやすい、気分が乗らない、ギリギリにならないと
動けない、膨大な作業でパニックになってしまう、本番で緊張
しすぎて集中できない…。さまざまなタイプ、状況別に集中するための
行動を解説しています。

『やる事は考えないで書き出す』『「よし」と自分に声をかける』など
どれも簡単ですぐに実行できるものばかりです。大事なのは
集中力とは続かないもの、と断言されている事。続かないのは
当たり前なので、飽きてしまう脳の動きを把握して、上手に
コントロールしながら進めていけば、達成に近づいていくことが
できるのです。

最初から何時間も集中するのはあたしゃ無理なのよ、と知っていれば
一度にたくさんこなそうとしてあえなく惨敗することもないでしょう。
15分ずつこなして、小さな勝利をいくつも積み上げていくほうが
確実というものです。

非常に気が散漫になりがちな自分は、本書の中にある、朝イチと寝る前に
スマホをいじるのをやめる、という項目を実行してから、随分と
作業に取り掛かるのがラクになりました。スマホでネット情報を
ドンドコさまよっていると、知らない間に疲れてしまい、やるぞ、
という気力を奪われていたようです。

いつでもどんな状況においても集中力を発揮できたら。
未来のことを建設的に考える時間と、そのために
必要なことを実行する時間が生まれるのではないかなと思うのです。
その先にはきっと充実した、有意義な人生が待っている。
だからゲームはやめて読書とレビューのために集中できる技術を
もっと身につけようと思います。オフィスで働くみなさんや
すぐ飽きちゃって宿題やらないお子さんがいる親御さんにも
おすすめですよ!

シンプルでシックで快適に生きるコツ

フランス人は10着しか服を持たない 

パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣 』の

イラストブックレビューです。

 

典型的なカルフォルニアガールだった著者が、
フランスのマダム・シックから教わった毎日を
特別の日のように過ごすコツ。

f:id:nukoco:20180622230741j:plain

2014年10月に発刊されて以来、70万部超えるベストセラーと
なった本書。時はやましたひでこさんの断捨離ブームからはじまり、
近藤麻理恵さんの『人生がときめく片付けの魔法』がミリオンセラー
となった頃。

「とにかく捨てねば!」とやたらと捨てた後に、「ときめくものだけ
手に置いて」と諭される。そして今度はフランス人と来たもんだ。
やましたさん、近藤さんの著書と比較して、洋服を前面に打ち出して
来ています。そして10着!とキッパリ言い切ったところが
インパクト大でしたね。たった10着であのおシャレなパリの
マドモワゼルやマダムはやりくりしてるっていうの!?
ってな話です。

これは片付け本ではありません。生き方について指南してくれる
本です。でも、洋服10着というのもこうした生き方に繋がって
いくのです。

アメリカのカリフォルニアで育った著者は、パリへと留学することに。
ホームステイ先のマダム・シックのお家は落ち着いていて、
その名の通りとてもシック。家族は皆パリッとした素敵な服装。

最初に驚いたのは食事。決められた時間のみに食べて、間食はしない。
そのかわり、しっかりとした栄養たっぷりの食事をゆっくりと、
味わっていただく。

洋服は自分によく似合う、ちょっぴり良いもの。それこそ10着で
いいので本当に似合う服を、頻繁に、そして大切に着回す。
アクセサリなどの小物を上手に使って、気分を変えてみる。
そして、ほんのそこまで出かける時でも、決してスウェット&
スッピンで出かけないこと!!朝のゴミ捨てとかね!!

アメリカの大らかというか適当な生活からやってきたら
かなりのカルチャーショックでしたでしょうね。
でも、著者は若者の利点である柔軟さで、パリでの暮らしに
美点を見つけすぐに馴染んでいくのです。
お世話になったお宅が貴族の家柄で、フランス人のなかでも
とりわけキッチリと生活を営む家庭であったのが功を奏したのでしょう。
最高のお手本のお家でパリ生活を満喫したのですから!

食材、料理、ワインは吟味して選び最高の形で供する。
洋服は、本当に自分に似合ったもの、自分を美しく輝かせ、
そして少し値段が張っても良いものを選ぶ。
会話では、相手のプライバシーを訪ねたり、逆に聞かれてもいない
自分のことを話すのではなく、音楽や美術、本など教養のある
話題を提供すること。
インテリアでも洋服でも、良いものを普段づかいすること。

…などなど、なるほどシックねえ~、と頷ける 内容ばかり。
日本で暮らす標準的なオバさんである自分は、洋服10着に収める事に
ぜひチャレンジしたいなあと。クローゼットの中身は定期的に
処分していて、オールシーズンの洋服がタンス引き出し三本分に
収まっている状態。しかし、最近は体型が変化してきて、
今までの細身系の服を着るとちょっとカッコわるい。
でもパツパツじゃないからな、まだ着れるよなあ~っていう
服がいくつかでてきたのです。これ書いてて思ったけど、もう
捨て時だなこれ。

というふうにどういう風にだ?読むとその場でいくつか実行したく
なるのがこの本の最大の利点ではないでしょうか。
アメリカ生まれのイケてない女の子が、ステキな文化と人物たちに
出会い、そこを目指していく、という姿が読者の共感を得るし、
失敗も繰り返していると素直に語る著者だからこそ、安心して
こちらもチャレンジできるのです。

ファッションも大事ですが、服を纏う自分の体づくり、言葉を発する
ための教養作りに日々邁進するパリジェンヌやマダムたち。
完全に追いつくことは無理かもしれないけれど、少しずつ、無理の
ない範囲で取り入れていけば、残されたものの中で光り輝く自分に
出会えるかもしれません。

近代文学への造詣と愛を深く感じる論文のような物語

太宰治の辞書』の

イラストブックレビューです。

 

みさき書房の編集者として働く私は太宰治の女生徒の謎に出会う。
太宰はロココ料理で何を伝えようとしたのか?
円紫さんの言葉に導かれ、私は謎を探る旅に出る。

f:id:nukoco:20180622230523j:plain

十七年ぶりのシリーズ最新作が登場です。
十七年ぶりとは!!この円紫さんと私シリーズは全巻持って
おりますが、もう内容もおぼろげ…。
女子大生と落語家の円紫さんが、日常の謎を解く、といった
お話ですが、その全体に漂う優しさと清らかな空気感が
印象に残っています。

その女子大学生だった私も、今や夫と中学生の息子がいます。
円紫さんも、落語は円熟味を増し、頭髪には白いものが混じって
きているけれども、それがまたいい味となっていると。
そんな二人が出会う太宰治の『女生徒』の謎とは。

1つの文学作品のキーワードから、また別の作家や文学作品に
思いが飛んでいく。本好きさんあるあるとおもいますが、とにかく
今回はその量がものすごいです。今回は太宰治が主なテーマですが
それ以外にも古典、近代などもうあらゆる作品がてんこ盛りに
登場します。

そに時代背景や、対談エピソードなんかもあり、楽しめるのですが
ちょっと頭が疲れていると染み込みにくいかも。
しかし、学生時代に日本文学を学んだくせに古典や近代文学が苦手という
(じゃあいったい何を勉強してたんだっていうのはさておいて)
自分にとって、作家の生きた背景や、その作品が出来上がっていく
状況を垣間見えることはとても楽しくものです。教科書に載っている
しかめ面しか見た事がない作たちの新しい一面を覗き見れたようで、
ワクワクします。

また、文学ガイドとしての側面も持っていると思います。。
芥川も太宰も「めんどくさいヤツらだな」という印象で(失礼ですが)
サラリと表面しか読んでこなかったのですが、本書では、その表現や
テクニックがこのように優れているのだ、と解説してくれています。

実際に作品も一部引用しているため、そのガイドに基づいて読んで
みれば、なるほどここがいいのか、と納得。もちろん違う見方も
あるとは思いますが、1つの読み方として充分参考になります。
特に苦手意識を持っている人には、新たな視点を得ることができるのでは
ないでしょうか。

古典から近代までその作品時代背景や作家の状況、そして本に
対する思い。頭の中から、目から、手から、物語を作り出す人、
本を作り出す人、本を手にする人、あらゆ状況と人に対して
深い愛を持つ著者の思いを、読者に伝えてくれる物語です。