ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

世界最強の姑にどう挑むのか?

姑は外国人』の

イラストブックレビューです。

 

姑は外国人 (角川書店単行本)

姑は外国人 (角川書店単行本)

 

 国際結婚でカナダに嫁いだマコ。
そこに待ち受けていたのはイギリス出身、元モデルにして最強キャラの姑、エレナ。
猪突猛進、曲がったことは大嫌いのエレナにふりまわされること多数。
果たして日本人嫁とカナダ人姑はうまくやっていけるのか??

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結婚されている奥様方、お姑さんてどんな方ですか?
育ってきた世界が違うのだから、驚く事が多々あると思います。
もちろん姑の側から見ても『なんじゃあの嫁は』って部分があると思いますが。

うちの義母も、このエレナさんに結構似ています(笑)。
強くて、猪突猛進なところなんか特に・・・。
ことに孫のかわいがりようについては万国共通なんでしょうか?
エレナは、マコが目を離した隙に、一歳にならない孫のザンちゃんに
チョコレートマフィンを食べさせようとしています。
歯も生え揃ってない赤ちゃんにチョコはいけませんね。
ああ、うちもあるある〜と深く頷きました。
孫の可愛さというのは、虫歯になるからとか、理屈をもふっ飛ばしてしまうもの
なのでしょうかね。

エレナさんはこのように困った部分をお持ちですが、頼りになることもたくさん
あります。ザンちゃんの幼児教室での授業中、携帯電話で話し始める保護者に向かって
『授業の邪魔になるから外で話して!』とキッパリ。

またある時はザンちゃんの気になる症状に対し、担当医は問題ないと言うのですが
『大ごとだったらどうする!専門医の紹介状を書け!』と迫ります。
結果、ザンちゃんは放っておいたら手術する事もある症状を持っていて、
マッサージで完治可能な赤ちゃんのうちに発見できたのは、とてもラッキーなことでした。

エレナさんすごい!!自分だったら、医者の言う通りにして子供の症状を
悪化させていたかもしれない…。

自己主張が激しくて、大変な部分もあるけれど、とっても愛情豊かで正義感が強い。
孫の面倒も見てくれて、共に仕事をする若い息子夫婦を応援してくれている。
あ、やっぱりうちの義母と似てるわ。

特に、孫のザンちゃんに、日本の血が流れているのを誇りに思って欲しいと
自ら日本の文化や言葉を勉強して孫に教えてくれるシーン。
これはザンちゃんという人間を形成する要素全てを認め、愛してくれている
事だと思います。こんな風に、嫁の育った文化までまるごと愛してくれるなんて、
とジーンときました。

結婚してから新しく形成された家族。これは縁あってのこと。
孫は血が繋がってるけど、血が繋がらない嫁も認めてくれて、大事にして
くれているんだなあということが、この本を読んで改めてひしひしと感じました。

親というものは、子供が築いた家族まで広い心で包んで愛してくれるものなのですね。
エレナのように、義母のように、そして実母のように。
自分もそんなおばあちゃんになれるよう、がんばりたいと思います。

 

準備が整った者に『運のいい日』はやってくる

運のいい日』の

イラストブックレビューです。

 

運のいい日 (創元推理文庫)

運のいい日 (創元推理文庫)

 

 連続殺人鬼を父親に持つ少年の物語『さよならシリアルキラー』の前日譚。
ガールフレンド、コニーとの出会いから付き合い始めの頃、親友ハウイーと
コニーと3人で出掛けたハロウインパーティーなどの青春物語、そして
ロボズノッドの保安官、G・ウィリアムがビリーを捕らえる物語など、
四つの物語が入った短編集。

 

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コニーとジャスの出会いや交際が、とてもみずみずしく描かれています。
殺人鬼を父親に持つジャスは、コニーに対して一歩引いた態度。
最初、それと知らずに付き合いはじめたコニーは、事実をネットで発見し驚きます。
そのことをジャズに話すと『楽しかったよ、ありがとう』と別れを宣言されてしまうのです。

ここからのコニーはすごい。『逃げないでよ』『何様のつもり』と、ジャズの
腕をつかむ。そして、他人と距離を置くジャズにとって最適な方法を
考え提案し、なおかつ実行に移すのです。なんという行動力!!

ジャズが影なら、コニーは光。しかも影が一切映らなくなるくらい、
ピッカピカに照らしてくれます。親友ハウイートとともに、この二人はジャスが
深い闇に落ちていくストッパーとなってくれる大事な存在なんだなということが
よくわかります。

そしてもうひとつ、老保安官ウィリアムが、連続殺人鬼ビリーを捕らえる物語。
ウィリアムは奥さんを亡くして、なんとも味気ない生活を送る日々。
体に気を使わない食べ物、身の回りにも気を使わず…。
奥さんが大好きだったんだね…。気の毒になってしまいます。

そして、数十年殺人事件など起きたことがないこの田舎で、女子高生の
行方不明事件が発生。次に別の女性の死体が発見されました。

連続殺人事件の可能性は。残された証拠が持つ意味とは。
老体に鞭打って、ウィリアムは必死に考えます。自身の保安官選挙で
地元紙にネガティヴキャンペーンを張られ、精神的にも疲弊。
もういいんじゃない?充分頑張ったよ、と声をかけたくなるほど。

しかし、その苦境の中で光を見出します。それは、苦しみながらも
事件のことを考え続けていたために、点と点が繋がり、線になった
瞬間だったのです。まるでその結果を得るために今までの苦しみがあったかの
ようにも思えます。

逮捕劇も緊張感みなぎる描写です。この逮捕劇でのやりとりに、ビリーは
サイコパスであるということがひしひしと感じられて本当に怖いです。
こんな人間と対決するもんじゃありません。

ウィリアム、大丈夫かしら?と心配になりましたが、その不健康な体が
連続殺人鬼を捕らえるにあたって役に立った模様。
緊急時、何が役に立つのかわからないものですね。

不器用な、仕事一筋の老保安官が捕らえた連続殺人鬼。
それはこれまでの経験値と分析力、そして行動力が揃ったために訪れた
『運のいい日』だったのです。

世界のあちこちで走る!飲む!食べる!

海外マラソンRunRun旅』の

イラストブックレビューです。

 

 たかぎなおこさんの、まんぷくローカルマラソン旅に続く第2弾。
今度は世界のあちこちで走って飲んで食べてみた!!

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マラソンを始めてから5年。今度は海外の大会に挑戦。
フランスのメドックマラソン、カナダのバンクーバーマラソン、
台湾の台北マラソンなど、今回も愉快な珍道中を繰り広げます。

フランスメドックマラソンは、フランスのボルドー地方で行われ、
給水所ではワインも出るのだとか!そしてテーマに沿った仮装を
して走るという、何とも楽しげな大会。

事前にワインの知識を入れてから、飲むべきワインを絞り込みます。
いやしかし、普通に飲んでいても喉渇いたりトイレ行きたくなったり
すると思うのですが、マラソン中に!飲みながら!とは何ともすごい。
とはいえ、ボルドー地方の、一級シャトーが参加するとあっては、そのワインを
飲むために参加したいと思ってしまうではないか!たとえ走りきれない自信が
あったとしても。酒好きのためのマラソン大会ですね!

大会は前夜祭から始まり、スタートは仮装の人々ので溢れかえり、和やかな雰囲気。
しかし、フルマラソンを走るには、いろんな装備は邪魔になるようです。
そういや元上司が着ぐるみ着て東京マラソンに出た時、股ずれならぬ
服ずれして大変だったと言っていたなあ。

光を遮る場所のないぶどう畑をえんえんとおいしいワイン目指して走るたかぎさん。
やはり暑くて喉が渇いている時にワインばかりではきつい。やったどりついた給水所で
水が売り切れ!!!うおお、つらいですね〜。

残念ながら今回はゴールできなかったたかぎさんは、反省会と称して
完走した方にお話を聞きます。そこで、今回の事態を振り返り、次回に
生かすべく心に刻むのでした。

ギチギチではないんですが、たかぎさんはちゃんとしてますね。
走れなかった時には悔しさをバネにして、原因を探り、次回に結果を
出すように努力しているのですから。

漫画家さんというお仕事柄、予定通りに練習する時間が取れない
場合も多々あるかと思いますが、そこんとこも明らかにして誤魔化さない。
寝不足だったりして、万全でなくともその状況なりにベストを尽くす!
それがたとえ終わった後のビールが目当てだったとしても(笑)。
そんなきちんとゆるい?ところがたかぎさんの良さでもあるのかなと思います。

海外に飛び出したたかぎさんたち。何時にも増して、飲み食いがすごい(笑)。
特に最終章の台湾では自己ベストを出したという喜びも相まってか、
いやあ食べる食べる…。帰ってから体重3キロ増って(汗)。

でも、自己ベストで完走後のビールと料理って、格別な味なんでしょうね〜。
自宅に居ながらにして、各国のマラソン大会とお料理、そしてたかぎさんと
仲間達のマラソン成長具合が楽しめる、満足度の高いコミックエッセイです。

 

政治家ではなく国民を相手にする総理大臣

総理の夫 First Gentleman』の

イラストブックレビューです。

 

 

日本初女性総理大臣夫である凛子の夫、日和は日本初の
ファースト・ジェントルマンとして、妻を支えることになったのです。

 

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頭脳明晰、実行力も素晴らしく人望も厚い。そんなパーフェクトな妻、
凛子にベタ惚れな夫、日和。鳥類学者である彼は、鳥の観察と、自由に羽ばたく
妻を見るのが大好き。いつだって妻のやる事を応援してきました。

おっとりした日和と、才色兼備なキャリアウーマンの凛子。
一見正反対の二人ですが、互いになくてはならない存在であることが
伺えます。バリバリで毎日猛ダッシュしている凛子は、じいっと座って
鳥を眺めている日和が癒しに違いありません。

凛子はベテラン議員に担ぎ上げられ、見事首相へ就任。
しかし、これは次に首相の座を狙うベテラン議員の周到な罠だったのです。

輝くばかりのホワイトぶりな凛子からは、いくら叩いてもホコリひとつ
出てきません。当の凛子はと言えば、所信表明演説でも国民の心に響く訴えで
人気を博し、支持率はうなぎ登り。
そこで天然おぼっちゃまの日和に白羽の矢が立ちます。
どうとでも取れる女性とのツーショット写真を撮られ、ベテラン議員に
揺すられてしまうのです。

これをきっかけに、日和の中のスイッチが入ったように見えます。
ファーストジェントルマンとしての役割、使命がハッキリとわかったのではないでしょうか。
彼女に迷惑をかけてはいけない、という思いから一転、真実を伝えなければ
ならないと決意する。ここから彼らの反撃がはじまるのです。

何しろ相手は百戦錬磨のベテラン。彼に睨まれたら政治生命終わり、と思わせる
ほど、味方になれば頼りになり、敵になればかなり手強い相手です。
この辺りの駆け引きで世の中の政治家たちは疲弊しているのではないかとふと思いました。

どの議員さんも、はじめて当選した頃には、国民の生活を良くしよう、より暮らしやすい国を
作ろう!と使命に燃えていたはずなのです。しかしながら、何年も国会にいると
政治家間での政治に夢中。というか、そうしないとやるべきこともできず、
その上自分の進退までちらつかせられたら、やるべきことすらできない、なんて
公式ができあがってしまうのでしょう。

その点、凛子は今までの政治家と異なります。ひたすらまっすぐ。裏取引が大嫌い。
消費税増税を掲げる凛子は、政治家の中でも国民にも反発を買いそうなものなのですが
常に目線は国民に向いています。
大きな波にのまれて日本という船が沈没してしまう前に、今やらなければならない。
自分も国民の一人である、共に頑張りましょう!と国民である我々に訴えるのです。

実際そんな綺麗事で政治が務まるのかよ〜と思ってしまっている自分が悲しくなります。
こんな風に肩を並べて話しかけてくれるような、大丈夫だよ!と横で言ってくれる
ような、そんな政治家がいたでしょうか。見たことありません。
とにかく真っ直ぐに誠実な気持ちが伝わってくるから、任せるのではなくて一緒に
頑張りたくなるのです。

夫である日和は政治に直接関わるわけでなく、日々忙殺される凛子とは日常会話も
ままならないほど。それでも二人は、時にすれ違うこともあるけれど、やはり互いを
大切に思っている事が伝わってきます。これは日和の実家に凛子が訪れる時の態度にも、良く
表れています。夫がこの家族で生まれ育ったことに敬意を表して、礼儀正しくふるまうのです。
ホント、凛子さんたら完璧すぎ。

 

いくつもの局面を乗り越えて、二人に訪れる未来。

これがラストシーンになるのですが
日本の未来が明るく、希望の光が差し込むような、そんな良いラストだったと思います。そろそろ我が国も女性総理大臣が出ても良い頃かと。

でも、凛子さんのような、才色兼備で国民に直接訴えかけてくるような訴求力の高いスーパーウーマンが登場するかは怪しいですが。
それでも上からじゃなくて、国民と同じ目線で国を良くしようということがきちんと伝わる、そんな政治家達がたくさん出てくるといいなと切に願います。

政治家って、総理ってなんだろ?と改めて考えさせられ、かつ二人と周囲の人々の
たくさんの愛が感じられる、とても読後感の良い物語でした。

あした死ぬかもよ?』の

イラストブックレビューです。

 

あした死ぬかもよ?

あした死ぬかもよ?

 

 人生最後の日に笑って死ねる27の質問。
あした死ぬとしたら、何をしますか?

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人には必ず死が訪れる。その事を本当に理解していますか?
なんとなく過ごしたその1日は、誰かが必死に望んでも
手に入れることができなかった1日かもしれない。

ひすい氏は読者に様々な質問を投げかけます。
死ぬ前にやりたいことリスト10は?
あなたの人生は100点満点中、今何点?
なんのために、この命を使いたい?
など、どれもこれも思わず考え込んでしまう質問ばかり。

まずは自分が80歳くらいまで生きるとして、残された時間は
どれくらいなのか、両親に会える時間は?
あと何回桜を見ることができるのか?
具体的な数字を見ることで、自分の人生に限りがある事を理解します。
改めて考えて見ると、結構少ないですね。

時間に気づいたら、夢を思い出す、また再確認する。
いつかやる、って言ってる時間はあるのか?

自分は何をしに生まれてきたのか?
何をすれば満足して最期を迎える事ができるのか?

心の奥底にある、本当の自分の声が聞こえているか?
またはその声に従って生きているか。

自分にとっての現状を冷静に理解し、やりたい事を明確にし、
やるべき事を自覚して、自分に素直に生きる。
こういった事を段階を経て、わかりやすく頭と心に落ちていく構成と
なっています。

各章の間には、ひすい氏らしく、様々な人物の名言が挿入されて
います。ここで出会う言葉たちにも沁みるものが多くあるので
気に入ったものは自分の座右の銘にするのもいいかもしれません。

死を柱にして自分の事を見つめ直す事で、今まで見えていなかった
自分を見つけることができるかも。
様々な自己啓発本を集めたような、それでいてどれにもない切り口。
自分に課せられた今の役目にがんじがらめになっていて、逃げ出すことも
できない、と思っているような人にはぜひ読んでもらいたい。
状況を変えてもいつかは死ぬし、変えなくても死ぬんですから。
どうせ死ぬならいい環境で、後悔なく逝きたいものです。

 

世界のあちこちで走る!飲む!食べる!

海外マラソンRunRun旅』の

イラストブックレビューです。

 たかぎなおこさんの、まんぷくローカルマラソン旅に続く第2弾。
今度は世界のあちこちで走って飲んで食べてみた!!

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マラソンを始めてから5年。今度は海外の大会に挑戦。
フランスのメドックマラソン、カナダのバンクーバーマラソン、
台湾の台北マラソンなど、今回も愉快な珍道中を繰り広げます。

フランスメドックマラソンは、フランスのボルドー地方で行われ、
給水所ではワインも出るのだとか!そしてテーマに沿った仮装を
して走るという、何とも楽しげな大会。

事前にワインの知識を入れてから、飲むべきワインを絞り込みます。
いやしかし、普通に飲んでいても喉渇いたりトイレ行きたくなったり
すると思うのですが、マラソン中に!飲みながら!とは何ともすごい。
とはいえ、ボルドー地方の、一級シャトーが参加するとあっては、そのワインを
飲むために参加したいと思ってしまうではないか!たとえ走りきれない自信が
あったとしても。酒好きのためのマラソン大会ですね!

大会は前夜祭から始まり、スタートは仮装の人々ので溢れかえり、和やかな雰囲気。
しかし、フルマラソンを走るには、いろんな装備は邪魔になるようです。
そういや元上司が着ぐるみ着て東京マラソンに出た時、股ずれならぬ
服ずれして大変だったと言っていたなあ。

光を遮る場所のないぶどう畑をえんえんとおいしいワイン目指して走るたかぎさん。
やはり暑くて喉が渇いている時にワインばかりではきつい。やったどりついた給水所で
水が売り切れ!!!うおお、つらいですね〜。

残念ながら今回はゴールできなかったたかぎさんは、反省会と称して
完走した方にお話を聞きます。そこで、今回の事態を振り返り、次回に
生かすべく心に刻むのでした。

ギチギチではないんですが、たかぎさんはちゃんとしてますね。
走れなかった時には悔しさをバネにして、原因を探り、次回に結果を
出すように努力しているのですから。

漫画家さんというお仕事柄、予定通りに練習する時間が取れない
場合も多々あるかと思いますが、そこんとこも明らかにして誤魔化さない。
寝不足だったりして、万全でなくともその状況なりにベストを尽くす!
それがたとえ終わった後のビールが目当てだったとしても(笑)。
そんなきちんとゆるい?ところがたかぎさんの良さでもあるのかなと思います。

海外に飛び出したたかぎさんたち。何時にも増して、飲み食いがすごい(笑)。
特に最終章の台湾では自己ベストを出したという喜びも相まってか、
いやあ食べる食べる…。帰ってから体重3キロ増って(汗)。

でも、自己ベストで完走後のビールと料理って、格別な味なんでしょうね〜。
自宅に居ながらにして、各国のマラソン大会とお料理、そしてたかぎさんと
仲間達のマラソン成長具合が楽しめる、満足度の高いコミックエッセイです。

 

政治家ではなく国民を相手にする総理大臣

総理の夫 First Gentleman』の

イラストブックレビューです。

 日本初女性総理大臣夫である凛子の夫、日和は日本初の
ファースト・ジェントルマンとして、妻を支えることになったのです。

f:id:nukoco:20170830084350j:plain

頭脳明晰、実行力も素晴らしく人望も厚い。そんなパーフェクトな妻、
凛子にベタ惚れな夫、日和。鳥類学者である彼は、鳥の観察と、自由に羽ばたく
妻を見るのが大好き。いつだって妻のやる事を応援してきました。

おっとりした日和と、才色兼備なキャリアウーマンの凛子。
一見正反対の二人ですが、互いになくてはならない存在であることが
伺えます。バリバリで毎日猛ダッシュしている凛子は、じいっと座って
鳥を眺めている日和が癒しに違いありません。

凛子はベテラン議員に担ぎ上げられ、見事首相へ就任。
しかし、これは次に首相の座を狙うベテラン議員の周到な罠だったのです。

輝くばかりのホワイトぶりな凛子からは、いくら叩いてもホコリひとつ
出てきません。当の凛子はと言えば、所信表明演説でも国民の心に響く訴えで
人気を博し、支持率はうなぎ登り。
そこで天然おぼっちゃまの日和に白羽の矢が立ちます。
どうとでも取れる女性とのツーショット写真を撮られ、ベテラン議員に
揺すられてしまうのです。

これをきっかけに、日和の中のスイッチが入ったように見えます。
ファーストジェントルマンとしての役割、使命がハッキリとわかったのではないでしょうか。
彼女に迷惑をかけてはいけない、という思いから一転、真実を伝えなければ
ならないと決意する。ここから彼らの反撃がはじまるのです。

何しろ相手は百戦錬磨のベテラン。彼に睨まれたら政治生命終わり、と思わせる
ほど、味方になれば頼りになり、敵になればかなり手強い相手です。
この辺りの駆け引きで世の中の政治家たちは疲弊しているのではないかとふと思いました。

どの議員さんも、はじめて当選した頃には、国民の生活を良くしよう、より暮らしやすい国を
作ろう!と使命に燃えていたはずなのです。しかしながら、何年も国会にいると
政治家間での政治に夢中。というか、そうしないとやるべきこともできず、
その上自分の進退までちらつかせられたら、やるべきことすらできない、なんて
公式ができあがってしまうのでしょう。

その点、凛子は今までの政治家と異なります。ひたすらまっすぐ。裏取引が大嫌い。
消費税増税を掲げる凛子は、政治家の中でも国民にも反発を買いそうなものなのですが
常に目線は国民に向いています。
大きな波にのまれて日本という船が沈没してしまう前に、今やらなければならない。
自分も国民の一人である、共に頑張りましょう!と国民である我々に訴えるのです。

実際そんな綺麗事で政治が務まるのかよ〜と思ってしまっている自分が悲しくなります。
こんな風に肩を並べて話しかけてくれるような、大丈夫だよ!と横で言ってくれる
ような、そんな政治家がいたでしょうか。見たことありません。
とにかく真っ直ぐに誠実な気持ちが伝わってくるから、任せるのではなくて一緒に
頑張りたくなるのです。

夫である日和は政治に直接関わるわけでなく、日々忙殺される凛子とは日常会話も
ままならないほど。それでも二人は、時にすれ違うこともあるけれど、やはり互いを
大切に思っている事が伝わってきます。これは日和の実家に凛子が訪れる時の態度にも、良く
表れています。夫がこの家族で生まれ育ったことに敬意を表して、礼儀正しくふるまうのです。
ホント、凛子さんたら完璧すぎ。

いくつもの局面を乗り越えて、二人に訪れる未来。これがラストシーンになるのですが
日本の未来が明るく、希望の光が差し込むような、そんな良いラストだったと思います。
そろそろ我が国も女性総理大臣が出ても良い頃かと。でも、凛子さんのような、才色兼備で国民に直接訴えかけてくるような訴求力の高いスーパーウーマンが登場するかは怪しいですが。
それでも上からじゃなくて、国民と同じ目線で国を良くしようということがきちんと伝わる、そんな政治家達がたくさん出てくるといいなと切に願います。

政治家って、総理ってなんだろ?と改めて考えさせられ、かつ二人と周囲の人々の
たくさんの愛が感じられる、とても読後感の良い物語でした。