ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

怖いけど懐かしくもある、もののけを追う珍道中

逢魔が時に会いましょう 』の

イラストブックレビューです。

 

大学四年生の高橋真矢は、アルバイトで民俗学者である布目准教授の
助手を務めることになった。布目の調査対象はなんと「座敷わらし」。
子供が沢山いる一般家庭に多く出没するという座敷わらしの姿を
真矢はビデオカメラにおさめることができるのか。

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映画研究会在籍で、体力に自信のある真矢と、体が細くて頭がボサボサの
布目のデコボココンビが座敷わらしや河童、天狗などの正体を探るべく
目撃証言の出た地域へ出向き、調査を進めます。

就職せずに、好きな映画を撮り続けたい。それには大学院に行かなくては。
しかし親に反対されて、仕送りも止められた真矢は金欠の危機に。
そこで紹介されたのは、民俗学の調査を手伝う、というアルバイト。
担当准教授の布目は頭ボサボサの無精髭、分厚いメガネをかけた男性。
調査の様子をビデオカメラで撮影してほしい、とのことだったのですが
その対象というのがなんと「座敷わらし」。

最初に訪れたのは子どもが八人もいる一般の家庭。
人数分のスイカを用意しても、一人分足りなくなる。
皿を上からカメラで撮影したところ、八人分の手が皿に伸びていた。
そして、父親が抜き打ちで点呼。一、二、三、四…と声を上げる子供たち。
八までの声を聞いた後、その家の末っ子はオムツを履いた赤ちゃんで、
まだ喋れないのだ、という話を聞く…。

ぞわぞわしますねえ。
はっきりとした座敷わらしの姿をカメラでとらえることができなかったため
場所を変える二人。次は、以前座敷わらしがよく出ていたという屋敷の
あった場所に、新たに建てられた幼稚園です。ここでも、不思議なことが
起こっています。何度数えても園児の数が一人多い。誰が描いたのか
わからない絵があるなど。

布目は園児たちに向かってゲームをはじめます。
一番最初に手を上げた人が勝ちゲーム。
朝、パンを食べてきた人。朝、ご飯を食べてきた人。プリンが好きな人。
あん団子が好きな人。四歳の人。五歳の人。
つぎつぎと手を上げる園児たち。

座敷わらしの人。

はいっ

これはスクープだ!とカメラを向ける真矢。
失敗に気づき、カメラを向けられ恐怖の悲鳴をあげる座敷わらし。
座敷わらしが姿を消した後、真矢は座敷わらしがもとはどのような存在であって
現在のような解釈になったのか、という推察を布目から聞きます。
それは、厳しい時代に生きることができなかった悲しい子供たちの
思念とも言えるようです。

古くから伝わり、日本人であれば誰でも知っているようなもののけたち。
その存在は、人々の生活と密接に結ばれていて、怖い存在でもあるけれど
忘れてはいけないものなのだ、という事を気づかせてくれます。

現代では、おおよそのところが検証により事実に近い状況を推察できる
ようですが、それでも解明しきれない部分がある事を、物語の中では
描かれています。日本人の根っこの部分を形成する要素とも言えるかも
しれません。だからこそ、こうしたもののけたちは、私たちにとって
怖くもありますが、どこか懐かしく、郷愁を誘うのです。

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