ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

女として生きるってどういう事なのでしょう

悪いものが、来ませんように 』の

イラストブックレビューです。

 

助産院の看護助手として働く紗英は、夫の浮気と妊娠できないことに
悩んでいた。そんな紗英心の支えは育児中の奈津子。彼女もまた
悩みをかかええ、紗英と過ごすことで安らぎを感じていた。
そんな中、紗枝の夫が他殺死体で発見される。犯人は誰か、そして
その動機は。驚きの結末に身を震わす、心理サスペンス。

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紗英、奈津子、紗英の妹・鞠子。
それぞれの女性たちが悩みや葛藤を抱えて日々暮らしている様子が
描かれます。紗英や奈津子について、第三者が語る、という形も
ところどころ入り、彼女たちの人となりや事情が次第に明らかとなって
いきます。

紗英の夫、大志の死が明らかになるのは物語の中盤。
彼の死は偶然だったのか、必然だったのか。
また、犯人だとされる人物は本当に殺意を持っていたのか、いなかったのか。
なぜ死体は自宅から離れた山の中で発見されたのか。

事件の内容自体は物語を読めば簡単にわかることですが
複雑なのは出来事ではなく登場人物の心です。複雑に絡み合った挙句に
こんな結末になってしまった、と言えます。

自分を誰よりも深く理解してくれる人物に依存し過ぎたために起こった
悲劇。紗英は被害者でもありますが、奈津子に依存していたことに気づき、
自分自身が一人で立つという強い意志を持って生きていれば、起ることの
なかった事件なのかもしれません。

結婚、出産、仕事。女だからこそ得ることのできる喜びと苦しみが
登場人物たちからひしひしと伝わってきます。人に依存することは
相手の価値観も自身の身にまとい、本当の自分の感じ方や喜びを
見えなくしてしまう可能性があることを教えてくれます。

女として生きる事、その喜びの定義は、自分に適しているので
しょうか。女として生きるっていったいどんな事なのでしょう。

構成が見事な心理サスペンスではありますが、「自分自身の足と頭を
使って生きなさいよ」というメッセージが込められているように
感じた物語でした。

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