ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

親子?友達?大好きで大切

ロボット・イン・ザ・ガーデン』の

イラストブックレビューです。

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)

ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)


 
 

 

AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが
日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。
キャリアウーマンの妻エイミーと、仕事をせず親から
譲り受けた家で漫然と過ごす夫のベン。

ある日、夫婦が暮らす家の庭に、壊れかけた旧型の
ロボットが座っていた。名前はタング。
タングを治すために、ベンとタングはアメリカへと旅に出る。

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ベンとエイミーの夫婦は崩壊寸前。
獣医を目指して勉強していたベンは、挫折した後働くでもなく
再度勉強するでもなく、親の遺産でただ1日を過ごしています。
そんなベンにキャリアウーマンのエイミーは苛立ちます。
この夫婦のピリピリとしたやりとり!そしてベンの鈍感さよ!
こうやって夫婦はダメになっていくよね〜という見本のようです。

やがてエイミーは家を出て行ってしまいます。
残されたベンはタングといっしょに、タングを治すために
アメリカへと向かいます。時はアンドロイドが家事や仕事を
こなすというちょっと先の未来。さて、手伝いをしてくれる
アンドロイドはどんな扱いを人間に受けているのか。
この辺の描写がまことに興味深いです。

ある地域では大切な仲間として。ある地域では単なる
家電の一部のような。地域によって、またはアンドロイドと共にいる
人間によっても彼らへの態度は異なります。
アンドロイドに人権を認めるのか?という問題をソフトに
示唆しているようです。
日本は案外、すんなりアンドロイドの存在を認めるのでは
ないでしょうか。リアルドラえもーんとか言って、友達に
なりたい!という人は多そう。

ロボットのタングは、まるで小さな子どものようです。
つまらないと足をブラブラさせ、気に入らない事があると
キーキーと高い音を出して癇癪を起こす。
しかし、交わした会話から言葉を学習し、応用して使うという
まさに成長していく回路を持っています。

ニートで何もする気ねぇ、という体だったベンもひと目で
タングの事が気に入ります。男の子がロボットのおもちゃを
手に入れたような喜びだったのかもしれません。
何ひとつ自分で行動を起こしたり、考えたりすることのなかった
ベンが、タングのためにあらゆる行動を起こします。

出会った当初は通じてるのか通じてないのかよくわからなかった
ベンとタングもだんだんと意思疎通がはかれるようになってきます。
そうするとベンもタングが喜ぶために、タングのために何かしてあげたいと
考えます。完全に父親の心理になっていますね。
実際、よくやるなあと思うほどにベンはタングの面倒を
見ています。

物語の最初と最後ではタングはまるで別のロボットのようです。
自分のことしか考えられなかったのに、ベンやエイミーなど
大切な人の役に立ちたいと、行動を起こすようになったのです。
それはベンも同じ。ベンとタングは共に行動し、共に成長して
いったのです。二人の関係は親子のようであり、友人のようでも
あります。決まった枠では表現しきれないけれど、大好きで
大切。そんな2人の関係が伝わってくる、心がほっこりと
あたたかかくなる物語です。