『傘寿まり子 1 』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: おざわゆき
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/11/11
- メディア: コミック
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ベテラン作家、幸田まり子80歳。自分の家で、息子夫婦、
孫夫婦との間で住居問題が勃発。自分の居場所がないと
感じ、1人家出を決意。ネットカフェでしばらく過ごす事に
なったまり子だが。
なんと、80歳のおばあちゃんが主役のマンガです。
年寄りではあるけれど、執筆業も現役だし、身の回りの事は
自分でできる、元気なお年寄りです。
そんな彼女は、息子夫婦と、できちゃった結婚をした孫夫婦の
二世帯と共に生活しています。ところが、まり子を除いたメンバーで
家の建て替え計画を進めている事が判明します。そして、その
案の中には、彼女の部屋がないと想定されている事も。
そこでまり子は家出をしてしまいます。
家族に文句を言うでもなく、ただ、自分の存在が負担になって
いる事が辛かったのです。悲嘆にくれているだけではないのが
彼女のすごいところ。なんとネットカフェで暮らし始めます。
その上、その環境にすぐに馴染み、ネットカフェにあるマンガを
資料として執筆作業にも取りかかります。ものすごく環境適応能力が
高い。そして、作家の能力のひとつである好奇心の強さも、彼女の
行動力を後押ししています。
高齢者は、家族に遠慮しながら肩身の狭い思いをして暮らして
行かなくてはならないのか、生きていて申し訳ない、なんて
思いながら生きて行かなくてはならないのか。
こんなセリフ、いずれ年老いた自分の親が吐いたとしたら、子供と
しては何とも言えない思いで胸がいっぱいになっていまいます。
社会全体が余裕が無い。弱いものは目に映らない。または見ない
ふりをする。そんな、根底に流れる空気を感じながら、まり子は
その流れに逆らって必至に進んでいきます。
自由は孤独。自由は責任。腹を括った80歳のなんとカッコいいことか。
家出したまり子には、猫を飼うことになったり、初恋の方から
同棲を持ちかけられたりと、人生何周目かの盛り上がり見せて
います。高齢者とその家族の切ない想いや、空回りしてしまう心、
社会の高齢者に対する意識や対応。様々なテーマが潜んでいて
若者から中高年まで楽しめ、かつ考えさせられるすごいマンガです。