ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

待ったなし!の育児を支える保育園の現状

戦うハニー 』の

イラストブックレビューです。

 

認可外保育園「みつばち園」で働くことになった星野親、27歳。
その保育園は、事情を抱えた家庭の子供が集まることで有名な園だった。
精神状態が不安定な母親に、父母同士の不倫…。そんな中、園の運営形態について
市から指摘され、みつばち園は存続の危機に立たされてしまう。

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大手企業を退職し、保育士試験を目指している青年・星野は、みつばち園で
働くことになりました。無愛想な先輩、皮肉を飛ばす同僚たちと、大好きな
子供たちに囲まれての保育士業。好きなことを仕事にしているのですから、
毎日楽しさと喜びにあふれているかと思いきや、そうはいきません。

市の中でも、問題のある家庭の子供が多く集まるというこのみつばち園。
その家庭の事情も実に様々です。母子家庭で生活保護を受けており、男性依存症の
母親。彼氏がいれば落ち着いていますが、別れると途端に精神状態が不安定になり、
子供に虐待をすることも。また、ある夫婦は、バツイチ同士。この保育園に子供を
預ける父と母でしたが、互いに不倫して、それまでの相手と離婚し、今の相手と
再婚したのです。そしてチラチラモンスターの香りを漂わせます。

いろんな事情を抱えた親たちがいます。親なんだからしっかりしろ、とは
言い切れない部分もあります。子供を育てるプレッシャー、世間からの目線、
閉塞感に絶望などなど、親だって人間ですから、ブラックな感情や状況を背負って
生きていたりするのです。それでは、親が辛くなった時はどうすればいいのか。

会社の仲間に、酒を飲みながら愚痴を聞いてもらう?でも子供を置いてはいけない。
親に助けてもらう?近くに住んでいなかったり、頼りにできない事情があるかも。
ママ友に話を聞いてもらう?環境が違いすぎて相談もできないような。

子育て中は、肉体的にも精神的にも追い詰められることがあります。
上手に気分転換できたり、助けを呼べる環境にあれば良いのですが、それができない
人もいると思います。このみつばち園の園長は、そんな母親の話を聞いてやり、
気持ちに寄り添ってあげています。

みつばち園の園長は、大きな愛で子どもの親たち、そして卒園していった子どもたちの
ことまで気にかけて、面倒を見ています。何というか、その宇宙的とも言えるような
大きな愛に、頭が下がる思いです。

子どもに罪はない。でも、子どもに起こっている辛い状況は、親が原因となって
いることも多々あります。子どもと繋がっているからこそ、親も一緒にケアする。
大人の方が凝り固まっている分、こじれて面倒なこともありますが、それでも
子どものためと奔走する園長と保育士たちの姿に胸が熱くなります。

役所とみつばち園の攻防も手に汗握ります。
重箱の隅を突くように攻撃してくる市の言い分には腹がたちます。保育園の現実を
見てから言いなさいよ!と口出ししたくなります。そのみつばち園のピンチを救った
星野は、建前やきれいごとだけではない保育園の現状をより深く理解し、保育士として
ひとまわり大きく成長したようです。

生きにくい社会、問題のある親。そんな中でも子どもの成長は止まることはありません。働き方改革だのなんのと大人が机上の論理をしているその瞬間にも子どもは育っているのです。そんな待ったなしの子どもたちの成長を、親とともに見守ってくれる保育士たちの思いを丁寧に描く物語です。


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