ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

あたたかくユーモラスに描かれた「運」のお話

強運の持ち主  』の

イラストブックレビューです。

 

営業時代に鍛えた話術を活かし、占い師へと転身したルイーズ吉田こと
吉田幸子。ショッピングセンターの片隅で、悩みを抱える人の背中を押す。
優しく、温かい気持ちになれる物語。

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父と母、どちらを選ぶか迷っている小学生男子、気になる男性に振り向いて
欲しい女子高生など、占い師ルイーズの周囲には、さまざまな悩みを抱える
人々がやってきます。

星を調べるとか、そういった占い的なものももちろんするのですが、ルイーズは
お客が求めている答えを探り出し、 それを伝えるのです。つまりは、勘です。
適当です。自分自身が、占い仲間や彼氏に対してはっきりそう言ってしまって
いるところが面白い。

とはいえ、まったく適当に当てずっぽう、ということではありません。占いの
結果、お客様が目指す道が思わしくない方向へ向かいそうだが、本人がそこへ
行きたいと考えているのであれば、「困難もあるけれど、そこで得るものは
決して悪くない」と背中を押してあげるのです。

高い人間観察力とトーク力を持つルイーズは、優秀な占い師と言って良いのでは
ないでしょうか。たとえ適当な雰囲気を発したとしていても。おまけにルイーズは
今の彼氏を前の彼女から略奪しています。その理由は「自分と最高の相性であり、
なおかつ最強の運を持った男だから」。占い師が公私混同するのかー!なんか
ずるいな。自分の運勢も上げ放題じゃないの!

なんて思っていましたが、どうもそうでもないようなのです。
彼氏はごく普通の、これといった取り柄もない、休日にゴロゴロしているような
男性。休日なのに出かけられなかった!と嘆くルイーズに「ちょっと遠くの
スーパーへお出かけしよう」と誘います。スーパーかよ!と思いつつ、いつもの
店には置いていない生活用品や食品を買い、二人とも結局満足して帰宅するという。

そうした何気ない日常の「ああ、いいなこれ」がいくつも登場して、これが幸せと
いうやつなのね、と読んでいてほっこりします。
そうした「いいなこれ」を気付かせてくれる彼氏、その気づきを占いに活かしていく
ルイーズ。これはやはり最高の相性なのではないでしょうか。でも、この二人だから
こそ感じられる幸せなのであって他の組み合わせでは成り立たないところがまたいい。

悩みを抱えたお客さんたちも、そうした幸せを無意識に求めているようです。目を
開ければそこにあるものなのに、自分から目を瞑ってしまう。その閉じた目を少し
ずつ開けてごらん、と促してくれるのがルイーズなのです。

目を開けて、目の前の幸せに気がつくことができること。
どんな状況でも、それができる人間が「強運の持ち主」なのかもしれません。


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