『ロボット・イン・ザ・スクール』の
イラストブックレビューです。
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- 作者:デボラ インストール
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2019/11/06
- メディア: 文庫
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三十代のダメ男ベンと幼児のようなポンコツロボット・タング。彼らが世界を旅し、帰ってきてからは妻のエイミー、姉のボニー、そしてロボットのジャスミンと、三人と2体のロボットで家族生活が始まる。ボニーやロボットたちの成長とともに様々な問題が発生して…。
4歳になったボニーはプレスクールへ通い始めます。するとタングは「僕も学校に行きたい」と言うのです。最初はロボットを学校に通わせるなんて無理だと主張していたベンですが、エイミーと話し合い、タングは家族の一員であること。その家族が学校に行きたいと言っていることは尊重するべきだし、自分たちはそのために協力を惜しまない、という結論に達します。
妻のエイミーはこんな時にその能力を遺憾なく発揮します。まずはPTAの仕事を熱心に取り組み、プレスクールの先生たちや保護者からの信頼を十分に得たうえで、校長先生に話をしにいくのです。さすが弁護士、理路整然と、そして決して相手を責めるような表現を避けつつ、自分たちの有利な方向へと誘導していくのです。彼女の働きにより、タングは無事に学校へ通えることになります。
友達もたくさんでき、喜ぶタング。一方ボニーは学校が嫌い。タングと一緒に通うことになってからは少しはマシになったようですが、学校ではいつも友達のイアンとだけ関わり、二人だけで遊んでいる様子。今だけなのか、それともボニーにとってどうにもならないくらい学校という存在が嫌なものなのか。やんちゃで口の達者なボニーの元気がない様子を見て、ベンとエイミーは心配します。
もう一体のロボット、ジャスミンも変化の兆候を見せます。オンラインで参加していた読書会のオフ会に参加したいと言うのです。ベンが会場まで一緒に行ってあげることにしたのですが、その会場でジャスミンは参加者から差別的な言葉を投げつけられます。想像していたことではありますが、ベンはジャスミンを慰めます。それ以降、ジャスミンはベンに「愛とは何か」「好きな相手ができたら告白すべきか」などと質問をしてくるように。驚くべきことに、ジャスミンに好きな相手ができたようなのです。
エイミーの日本出張が決まり、学校の休み期間中でもあり、今の職場を辞めることを考えていたベンは、家族全員で日本を訪れることに。かつての仲間たちとの出会い、心地よいひと時を過ごしたベンに、ジャスミンが自分の好きな相手のことを打ち明けて…。
ベンとエイミーの親としての奮闘ぶりが、生き生きと描かれています。やはり親としては初めての経験で、手探りで子供とロボットたちの成長を見守り、助けようと必死に取り組んでいます。子供は時に理不尽な要求や、どうにもならない問題の答えを求めようとします。成長途中にあるロボットたちもしかり。なだめたり、すかしたり、時にはイラついたりもするけれど、そんな時にハッとさせられるような言葉を発したり、行動を起こしたりする彼らに、なんとも言えない胸が熱くなるような思いがするのです。
トラブルが起こるたびにぶつかって、ひび割れて、治ったところは強くなっていく。そうやって絆を強めながら、親も、子も、ロボットもいっしょに成長していく。そんな心温まる物語です。