ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

話題のエッセイストが偉人伝から学んだこと

すべて忘れて生きていく 』の

イラストブックレビューです。

 

小さい頃から親に「早くしなさい」と言われ続けてきた著者が
見つけた真実とは。日常に潜む出来事を、ユーモアたっぷりに描いた
エッセイのほか、一見真面目なようでいて、やはり著者の視点が
反映されている書評集、奇妙な味わいの短編小説二編を収録。

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著者の北大路公子という人はなんというか、ちびまる子ちゃん
そのまま大人になったような雰囲気を漂わせています。
それじゃダメだろ!とツッコミをいれたくなる行動や妄想は、我々世俗に
まみれる人間たちを「きちんとやらねば」といった強迫的思い込みから
解放してくれるのです。人が不快と思わない、絶妙なラインは著者の
筆力と笑いのセンスゆえでしょうか。

冒頭の、親に「早くしなさい」と言われていた公子少女は、親に「ぼんやりさん」
と呼ばれていたことが不本意だと言います。学校へ行く前に、前日に読んだ本の
続きを布団の中で読んだり、着替えの途中で椅子に座ってグルグルまわったりして
いたけれども、次に取る行動を考えながらそんな寄り道をしていたので、すぐに行動する
人間よりも、やるべきことについて長い時間考えていたのだと。
だから決してぼんやりなんかしていないのだ!と。えええ・・・。

人からぼんやり見えるとしても、気にすることが頭にあったらリラックスすること
はできない。だから着替えの途中で椅子をグルグル回しながら、靴下履かなくちゃ、
などと考えなくてもいい。靴下を履かなくても死にはしないのだ、と心に
置くことが大切です、と言います。正論なんですが、テーマといい、展開といい、
どうもふざけてる感が否めない(笑)。
小学生が、屁理屈こねて大人に文句を言っているみたいな面白さがあります。

そして著者が子供の頃に好んで読んでいたという偉人伝。
こんなにも頑張っている人がいるのだということに気がついた著者。
素晴らしいことに気づいたね、と読み進めてみれば「だから私は頑張らなくていい」
という結論になった…ってオイ!何でやねん!

と、こんな調子で書評も手掛けています。
こちらは本の内容を自身の出来事と絡めて綴っており、もちろん笑えるものもありますが
まじめに綺麗にまとめているものもあります。爆笑エッセイ専門かと思いきや
さすが作家、短いページの中に世界をぎゅっと詰め込んでいて、ヘェ〜と
新鮮な驚きに包まれます。

この著者の物語小説を読んでみたいなあと思っていたところ、巻末に
二編の短編小説が。子どもの頃に、大人から聞かされた怖い話から
想像を巡らせた事が、大人になってから現実となって起ってしまった
ような、不思議で奇妙な余韻を残す物語です。

おビールと相撲とぐうたらが大好きで、子どもの心を失わずに持った
ピュアでユーモアたっぷりの北大路公子。ユーモアたっぷりのエッセイから
深い余韻を残す、現実と幻想が混じったような世界観を描いた短編小説まで
著者の幅広い魅力をたっぷりと堪能できる作品集です。

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