ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

自分に「あるもの」見つけるのは案外難しい

読書人が集う『シミルボン』にて、インタビュー記事掲載!

https://shimirubon.jp/columns/1691046 

 

美大とかに行けたら、もっといい人生だったのかな。』の

イラストブックレビューです。

 

イラストレーターになる夢がかなわないこと、自分が幸せでないことを、
運や人のせいにして妬んだり憎んだり。「何者かになりたい」ともがいていた
著者が見つけた答えとは。

 

f:id:nukoco:20180918092833j:plain

専門学校出て、デザイン会社に勤める著者。やがてイラストレーターを
目指して会社を辞めて独立します。ようやく夢が叶ったのにイラついたり
不安があったりとちっとも幸せを感じることなく、周囲の人にまで
当たり散らしてしまう著者が、どのようにその原因を見つけ、解決して
いったかを綴った実話イラストエッセイ。

著者は、美大に対してものすごい劣等感と憧れを持っているようで、仕事が
うまくいかなかったりすると「美大に行っていたらうまくいっただろうに」などと
愚痴ります。自分の至らない部分から目を逸らす口実として使っていたのですね。
デザイン会社という職場なので、美大での知識やコネも多少の意味があるとは
思いますが、それが全てではないはずです。

そんな時に同じ会社に入ってきた後輩は、美大出身。そして、笑えるくらい
著者の劣等感を刺激しまくります。自分のセンスを曲げてデザインしたくない、
自分はクリエイティブなことしかやりたくない、などなど。そして、実際に
デザインはすごい。そしてチームワークや相手に対する配慮は全くない(苦笑)。

一悶着ありつつも、なんとか前進し、会社をやめてイラストレーターとして
独立することに成功した著者。結婚もして仕事も入ってきて順風満帆…に
ならず、夫の嫌な部分にイラつき、当り散らし、自己嫌悪を繰り返す日々。
そこで繰り出した対策が『脳内会議』。

自分に存在する感情に『女王』『クズ』などと名前をつけてキャラ付け。
そしてネガティブキャラに対して、反対側にいるポジティブキャラを
『ロマンス』『知性』といった風に名付け、ポジキャラ5つ、ネガキャラ5つの
計10キャラで会議をはじめます。

こうしてみると自分の中のどこの部分が、何に対してどのように反応しているのか
がよく見えるのです。トラブルやストレスが高まる事態が発生した時、たいがいは
自分の中のネガティブキャラが発動し、行動や言動を起こします。
しかし、その裏に隠れているポジキャラが抱いた本当の気持ちには目が行かない
ことが多い。それ故におかしな調子で相手や自分を責めてしまうわけですね。

感情が先立ちやすい女性には、自分はなぜこのように感じているのか、ということを
脳内会議で分析することで、ネガティブな感情を暴発させないためのストッパーともなりますし、
最終的に本当に望んでいること見つけ出すのに有益なので、試してみる価値があると
思います。

自分も感情的になることは良くあります。ただ、著者のように夫を目の前に
正座させて怒ったり泣いたりすがったりを数時間、というのはないです。
というか、病院で見てもらった方がいい状況だったのではないかな、と
人ごとながら心配してしまいました。それを脳内会議で、自分だけで
立ち直ることができたのはすごいなと思います。

自分の中にある感情、性質、能力を客観的に見つめなおして、自分の本当に
望むことは何なのだろう、そしてどこへ向かっていきたいのかを考える。
感情に支配され、苦しみ、困っているときはもちろん、人生の計画や目標づくりの
ためにも役に立つコミックエッセイでした。