ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

色から広がる世界は無限のおもしろさ!!

色の秘密 色彩学入門 』の

イラストブックレビューです。

人の心と体に影響を及ぼし、その好みで相性、適職までわかり
ストレス解消にも役立つ色の秘密。
日本の商品学の草分け的存在である商学博士が科学的に解明した
現代人への快適色彩生活のススメ。

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色自体が人間にもたらす力、そして色の好みでわかる基本的性格、
快適な生活を送るための色彩術、色の力の生かし方、食べ物と色の
関係、文化人類学上の色彩術…。
実に多岐にわたって、色と人間、社会文化について解説しています。

面白いのは日本のインテリア、和室についての解説。
和室は白や緑の砂壁、畳、柱や天井やタンスなどの木材などで構成
されており、これらが光を反射する率は50%。住む人の
肌色も50%なので、色合いとしてよく馴染む仕組みになっているのだそう。

また、和室全体から飛び込んでくる色彩はベージュ色であり、
この中間色は暖色系や寒色系よりも筋肉を弛緩させる、つまり
精神的なリラックス促し、ストレス解消にも役立つのです。
和室に入るとホッとして、心が落ち着くのには、ちゃんと
理由があったのですね。

また、色の文化人類学の章では、国ごとに好む色の傾向と
その理由を説明しています。例えば、ラテン系は暖色系、
特に赤、橙、黄を好むのですが、それは豊かな太陽光線によって
赤色視覚が発達したからだと言われているそうです。
なるほど!太陽光の強い場所でははっきりとした明るい色に
囲まれていれば毎日テンション上がりそうですよね。

一方我らが日本は、絹と檜の光沢が放つパステルカラーが
色彩感覚の原点なのだとか。また、千利休が提唱した侘び寂びに
ついても色彩の点から解説。

詫びは、茶道・俳句に見る質素な風情と枯淡の美をいい、
寂は閑静な風趣をいい、古びて趣の深い美しさをいう。

つまり、ヒノキやスギなどの建築素材が時を経て、やがて
灰色にくすんで見える木肌をも寂と称して、別の観点からいつくしむのです。
このくすんだ灰色も中間色で、心身のリラックス効果があるわけです。
こうした色の変化を劣化と言わず、味がある、と楽しむ繊細な感性が
日本人の素晴らしいところだよなあ、と嬉しくなります。

こうした住空間から、文化論についての考察も非常におもしろいですし、
心理学的な色による性格診断のようなもの、音に色はあるのか、
色に熱はあるのか、などなどあらゆる切り口から色について
考察しています。雑学的な内容としても楽しめますし、
日本の文化についても見地を深めることができる、とっても
お得な内容の本なのです。

色と人、社会は密接な関係にある。その秘密の解明はワクワクします。
そして上手に日々の暮らしに取り入れれば、快適な暮らしを
送ることができるのです。色の可能性や効力に驚きと楽しさを
感じ、そして色から見える世界の広がりに心踊る一冊です。