ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「福の神」はあなたのそばにいる

『「福」に憑かれた男』の

イラストブックレビューです。

 

(文庫)「福」に憑かれた男 (サンマーク文庫)

(文庫)「福」に憑かれた男 (サンマーク文庫)

 

 他界した父に変わり、実家の書店を継いだ秀三。
店舗を大きくすることを夢見ていた彼に訪れたのは、
集客が激減するピンチに次ぐピンチ。
しかしそれは、彼に憑いている福の神の仕業だったのです。

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秀三は、期待を持って本屋業を継ぎますが、黙っていても
客がやってくるわけではない。近所に大型書店ができる。
よくある話です。いよいよ赤字となり、店をたたもうか…と
考えはじめた時に、メンターと言える老人と出会います。

自分のことを「日本一裕福な老人」と豪語するその老人が秀三に提案します。
「そこにいるお客にどんな本を探しているのか尋ねなさい。
仕事や名前を伺って、お客さんにぴったりの本を紹介しなさい。」

秀三は躊躇します。
お客さんに話しかけたら嫌がられないだろうか。
押し売りだと思われないだろうか。

それでも意を決して、お客さんに話しかけ、おすすめの本を
紹介します。本屋として売りたい本ではなく、お客さんが
必要とする本を。ですからお客に対して「お代はいらない」と
秀三は言います。
読んでみて気に入ったら新しい本と交換して代金をもらい、
気に入らなかったら代金は払わずに返本してくれればいい、と。
お客さんは驚きますが、心から薦めたいという秀三の気持ちは
伝わったようです。

こんな本屋さんが実際いたらびっくりしますね。
でも、自分が求めている本がハッキリしない場合は、
このように書店員に薦めてもらうのはありがたい話だと思います。
大型書店の場合は、ジャンル毎に担当者がいるほど
本が多いこともあって、読者のハッキリとしないニーズに
応えるには難しい事かもしれません。
新刊や、ピンポイントでこの本、とわかっている状況では
強いと思うのですが。

一方、新刊や話題の本が薄い(=少ない)かわりに、数年前に出版されて
あまり回転が良くないような本でも、店長の采配によって
置いておくことができる。いわば店長の個性が滲む品揃えが
できるのが、町の本屋さんのいいところだと思っています。

その町の本屋さんの良さを活かして、秀三のおすすめ本を求める固定客が
でき、売り上げも増えて軌道に乗ってきた秀三に、また新たな
不安が発生します。

増えた売上で店舗拡大などを図るべきかどうか。
そもそもその売上をキープできるのか。

ここでメンターはまた秀三に語りかけます。
「考えなければならないことは、どうやって自分の欲しいものを
手に入れるかではない。どうしてそれを手に入れなければ
ならないか、である。」

自分は人生において成功したい。
なぜ成功したいと思っているのか。
成功した先に何が見えるのか。

ここをしっかりと考えていないと、せっかく成功と言える
結果を残したとしても、常に不安にとりつかれることになって
しまいます。

自分の中で答えを見出し、新たな出会いがあり、そして未知なる世界に
チャレンジし、失敗…
失敗するくだりは読んでいてつらくなってしまいます。
が、後にくる結果を知れば、やはり必要なことだったのだ、と
理解できるのです。

神様は自分で乗り越える事ができる試練しか与えない。

そして
人知れず他の人のためになるいいことをする
他人の成功を心から祝福する
どんな人に対しても愛を持って接する

これらは子供の頃から、祖父母や両親、先生や先輩から
教わってきた事かもしれません。
しかし、この物語の中で、一人の人間がこうしたことを
実践しながら着実に成長し、自分だけでなく、周囲の人々まで
幸せな気持ちにさせているという事を読むと、ストンと心の中に
入ってきます。

自分の使命。生きていく目的。
それを発見し、そのために力を尽くすことができる。
そのように生きる事が出来れば、とても幸せな人生と言えると思います。
そんな人には福の神がついているのに違いありません。