ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

本がつなぐ対極の二人の絆

本屋さんのダイアナ』の

イラストブックレビューです。

 

何度も母親に染められてパサパサになった金髪の髪に、はしばみ色の瞳。
キャバ嬢の母親を持つ、小学三年生の女の子、「大穴(ダイアナ)」。
自分の容姿も、ヘンテコな名前も大嫌い。でも、ツヤツヤの黒髪を
持つ優等生、彩子が自分に好意を持ってくれた。本が好き、という
共通点から、仲を深めていく二人。中学から別々の学校に通うことに
なった二人に待ち受けていたものとは。少女たちの、出会いからの
十年間を描いた物語。

f:id:nukoco:20181029080246j:plain

小学三年生の時に同じクラスになり、友達になったダイアナと彩子。
シンプルで品の良い服装、成績も良く、周囲から一目置かれている彩子と
派手な頭にきつい目つき、友達のいないダイアナは、とても対照的。
仲良くなってからは、互いの家に行き来したりしますが、家の中の様子もまた
ものすごく違う。

彩子は広い一軒家に暮らし、その一室でたまに料理教室を開く料理上手な
母親と、編集者の父と3人暮らし。食べるものも身に付けるものも、
洗練され、かつ厳選されたもの。

一方、ダイアナはシンママでキャバ嬢のティアラ(源氏名)とアパートに
二人暮らし。食事はコンビニ、服は流行り物、身の回りの小物にはゴテゴテと
ラインストーンが貼り付けられたりしています。

小学生の二人は、互いの環境をとても羨ましく思っています。
三年生くらいだと、ほぼカルチャーショックに近いですよね。
いつもの自分の生活になんとなく不自由を感じていて、他人の家の様子が
すごく素敵に見える。

とはいえ、互いを妬むわけでもなく、本を介して友情を深めていく二人。
互いの親が、少女たちに対してかけてあげる言葉がとてもやさしい。
少女たちも、自分の親であるはない大人からの言葉は、素直に心に
とどめているように感じられます。

中学に上がるタイミングでちょっとした行き違いがあり、それ以来
言葉を交わすことのなくなった二人。
彩子は私立の女子校で、中学高校と過ごし、優秀な成績をおさめながらも
息苦しさを感じ、大学は受験して共学の名門大学へ通います。
そこで、ようやく自由に羽ばたくことができると思ったのですが…。

ダイアナは、地元の公立中学に通い、男女事にしか興味を持たない
周囲の人間たちに辟易しています。読んだ本を語り合う仲間もおらず、
相変わらず一人。しかし、高校では頑張って明るい自分を演じたところ、
友達ができました。ところがその友達との間でトラブルが発生し…。

二人ともトラブルに巻き込まれます。
でも、もう小学生ではありません。自分で答えを見つけて、自分で戦います。
戦った後に、 少し大人になった二人はまた出会うのです。

女の子から女性へと変化していくときの、言葉に表せないような気持ちを
丁寧に綴っています。戸惑い、恥ずかしさ、不快。
女の子なだけで、嫌な気持ちにさせられる…と落ち込む彩子に対して、
どんどんと立ち向かっていくダイアナ。助けたり、助けられたりしながら
周囲と、自分自身との距離を図り、そして戦っていきます。

二人の女の子は、読者の境遇とは異なるかもしれませんが、女性なら
彼女たちと同じような思いをどこかに抱えていた頃があるはず。その行動や
思いにもどかしさを感じながらも、共感し、後押ししたくなるのです。

女の友情は、状況によって変わっていくものかもしれません。
でも、本を通じて得る絆は、変わらずにつながり続けていけるのでは
ないでしょうか。そんな風に感じさせてくれる物語でした。

にほんブログ村 本ブログへ
本・書籍ランキング