ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「本がある世界」の深さと豊かさを教えてくれる

多くの読書人が集う『シミルボン』に、インタビュー記事を掲載

していただきました!自己紹介や本好きになったきっかけ、

書評作成時に心がけていることなどをお答えしています。

よろしかったら見にきてください爆  笑

https://shimirubon.jp/columns/1691046 

 

書店主フィクリーのものがたり 』の

イラストブックレビューです。

 

 

島に一軒だけある書店。店主フィクリーは、妻を亡くして以来、
ひとりで店を営んでいた。ある日、彼は店に2歳の小さな女の子が
捨てられているのを発見する。そして、この子を育てようと決意する。

f:id:nukoco:20180818124052j:plain

大学で知り合ったフィクリーとニックが結婚。妻のニックが生まれ育った
地で本屋を営もうと決めます。開いた本屋は地元の人間や観光客が利用し、
時にはニックがゲスト招いてイベントを開催し、順調に運営していました。
しかし、ある日、ニックが交通事故で亡くなってしまいます。

フィクリーは、こだわりが強く、出版社の営業に対しても結構
失礼な態度を取ったりします。気難しくもあり、割と面倒なタイプの
男性。そんな彼ですから、店に捨てられていた女の子の世話をする、
と決意した時にはびっくりしてしまいました。子供嫌いでしょ?
世話なんてしたことないでしょ?大丈夫なの?
完全に島に住むおばちゃん目線で心配してしまいました。

しかしこの天使ちゃん、マヤはフィクリーに良い変化をもたらします。
児童書に力を入れるようになったこと、マヤのために無意識に何か
してあげたいと思うこと、マヤの成長を感じると胸がぎゅっとして、
暖かくなること。そう、マヤは妻以外に対する愛情をもたらしてくれたのです。

そして、出版社の営業、アメリアと恋人同士になるのですが、この恋愛の
進み方がまたいい。本やドラマを引用した彼らのやりとりは、
直接的に物事を伝えるよりも、気が利いていたり、伝える事実以上の
ものを伝える効果があるように思います。フィクリーは女性慣れしていなくて
ぎこちないのですが、そこをやわらかく包み込むアメリアの大きさと
暖かさに非常に好感が持てます。もちろんマヤも、2人の間にいい感じで
関わっています。

フィクリー、アメリア、マヤの共通点は、3人とも本が好きだということ。
本屋が好きだということ。

物語の中の人生と自分の人生を照らし合わせること。新しい出来事を
運んでくれること。決意させてくれること。なぐさめてくれること。
本があることで、同じ出来事にさらに深い色が加わり、自分に浸透して
いくのかもしれません。

本というものがもたらしてくれる人生、それは深さと豊かさに満ちて
いるもの。本の素晴らしさ、本が関わる人生の広がりを伝えてくれる
物語です。