『本にだって雄と雌があります 』の
イラストブックレビューです。
本には雄と雌があって、ナニすると子どもが生まれ、
本は増えていくのだ。生まれた本はバサバサと羽ばたき、
飛んで行こうとするから、捕まえて然るべき処置を
施さねばならない、と祖父の興次郎は教えてくれた。
父子四代に渡る、本と人生を巡る壮大なファンタジー。
序盤は興次郎の語りや、全体の語り手となる孫、博の
語りが 錯綜したり、あまりにも軽妙すぎる興次郎の
口調に、しばし頭が混乱状態に。
祖父興次郎、祖母ミキ、そして興次郎の友人?知り合い?
である釈苦利。これらの登場人物の若き日の状況から、
次第に時は流れて興次郎が戦争へ行った時の話へと
物語は展開していく。
どの登場人物も非常に個性が強く、何かするにせよ
吉本新喜劇ばりのセリフのやりとりと行動が繰り広げられるのです。
ジェットコースターに乗っているかのようなそのやりとりは
興次郎の大阪弁と良くマッチしていて、クスリと笑わせて
くれたり、時にはオイ!と突っ込みたくなります。
興次郎が戦争に行った時には、命を落としそうになっている状況で
彼は不思議な光景を目にします。真っ暗なはずのボルネオのジャングルの中で
光るキノコがビッシリと生えており、道のように先の方まで続いて
いるのです。上を見れば、そのキノコ道に沿って本たちがバサバサと
飛んでいく。
本を追ってキノコ道を進んで行った興次郎が目にした光景、体験は
解説してしまうと楽しみが半減してしまうので、
読んでいただいた方がいいと思います。
本が好きな方であればすごい!そうか、本にまつわる神様や
管理人みたいなことが存在するのか!と納得してしまう世界観が
そこにはあります。て、少しネタバレしていますけれども。
人生と本。その深い絆と、それらが織りなす新たな世界。
全く見たことも聞いたこともない世界でありながら、何故かどこか
懐かしく、そしてそこへ自分も行きたいと思ってしまう、
不思議な不思議な物語です。