ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

その旅に あなたは何を持っていきますか

『ライフトラベラー 人生の旅人』の

イラストブックレビューです。

  

ライフトラベラー 人生の旅人

ライフトラベラー 人生の旅人

 

 人生を変える旅がしたい、という大学生の和哉に、
親友の夏樹が提案したのはほとんど全てが自由な
不自由な旅だった。

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 10日間の旅に、和哉はあれこれと準備をしています。
Tシャツが10枚、靴下10足。ドライヤーにパジャマ。
目覚まし時計と電池の予備。本が八冊と
ミュージックプレーヤーにヘッドフォン。
ジーンズが三本…

いやはや、荷物が多いですねえ。
自分が二十代の頃に友人と2人で旅行した時は
和哉の荷物の三分の一以下でしたが。
友人と2人、いかに荷物を少なくするかで競い合って
いましたので(笑)。

この和哉の荷物の多さは、日本での日常をそのまま
持っていくかのようです。これでは日本ではない場所で、
現地で物を調達したり、それに伴って慣れない言葉を
使って伝えようとしたり、というはじめての経験を
得る機会が減ってしまいます。

今まで経験したことのないことをたくさん経験すれば
最初はゼロだったこともイチへ変わります。
夏樹は和哉に、この旅行でゼロをイチに変える経験を
たくさんするようにと提言します。

はじめての海外旅行に不安を感じ、うつむいていた和哉の心が
ふと頭をもたげます。変わりたい、理想とする自分に少しでも
近づけたい という気持ちを思い出したから。
想定できる行動の中からは、想定できる結果しか得られない。
今までにない、新たな結果を得たければ、今まで経験したことのない、
想定できない行動にチャレンジするしかない。

そして出会いについて、才能について、真の自由について…
夏樹はその若さからは想像もできないくらい、達観していて、
その考えを和哉に惜しみなく伝えます。
夏樹が達観している理由は、生い立ちに寄るところが大きいのですが、
ラストでもっと深いところでの原因がわかります。

旅は、新しい出会いと発見をもたらしてくれます。
そして、自分を見つめ直す機会も与えてくれます。
自分の意識次第で、自分の人生にとって素晴らしい経験を
もたらしてくれます。
それは、生きていくこと、つまり人生になぞらえることもできるのです。

作者は旅をテーマに、人生について読者に語りかけています。
あなたは旅に出ますか?
あなたは旅に出たように日々を生きていますか?

吟味された言葉が、読む者の背中を優しく押してくれているようです。
自分の意識を変える、そして自分を知る、そんな旅に
あなたも出かけてみませんか。

セーラー服を着た美しきテロリスト

『屋上のテロリスト』の

イラストブックレビューです。

  

屋上のテロリスト (光文社文庫)

屋上のテロリスト (光文社文庫)

 

 一九四五年八月十五日、ポツダム宣言を受託しなかった
日本はその後、東西に分断された。
そして七十数年後の今。
彰人は、学校の屋上から飛び降りようとしたところを、
美しい少女に声をかけられる。
それはテロ仲間へのお誘いだった。

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日本がかの国のように東西に分断されたとしたら。
そんな意表をついた設定に驚かされます。
東京以西の西側はアメリカの援助を受け、民主主義のもと
経済発展が著しく成長。
一方北海道、東北を主とした東側はロシアが進出していた
経過もあり、軍部が発達した社会主義。経済発展については
西側よりも大きく遅れをとっており、この頃ようやく西側に
追いついてきたというところ。

謎の女子高生、沙希は、彰人にバイトの話を持ちかけます。
どんな危険な仕事も引き受けること、などと漠然とした言い方です。
彰人は死に魅せられています。バイトが終われば私が
あなたを殺してあげる、と沙希は言います。
それはとても魅力的な提案のように、彰人は感じたのです。

ドラマとか、映画のような背景とセリフなんですが
2人の落ち着いた様子がいいですね。
沙希は彰人を伴って、まずは現金輸送車を襲撃し、現金を強奪。
そして東側から核兵器を購入。東側の陸軍と交渉をしながら
西側へ核ミサイルを打ち込む準備を行います。

沙希の冷静かつ、楽しむような襲撃ぶりはかっこいいです。
そして、死に対して魅力を感じるといっても犯罪や軍隊は別で、実際
怖いんですけど…といった引き気味でありつつ必死に
沙希についていく彰人の、2人の対比もおもしろいです。

途中、キーマンと言える2人の老人が登場します。
この方々の活躍がまたいい。
若者の単純な怒りと行動と対比して、彼らの抑えた、でも
自分ができることで、自分なりに闘っているというその姿が
物語全体をピシッと引き締めているように思うのです。

沙希の行動力、交渉力などはとっても魅力的。
しかし、そうした能力を持った沙希という人間がどのように
出来上がったのか、その辺の描写が少々弱いように感じました。
それゆえ、テロの動機についても正論ですが、いまひとつ
足りないような。

しかしながら、舞台設定や、周囲の人物たちがとても良く
描かれているので全体としては読みやすく、楽しめる物語です。
使命感を持って戦う女子高生って、すんごく素敵です。
女子高生が国に殴り込みをかける、極上エンターテイメントです。

本が人をつなぐ 人が本をつなぐ

『だいじな本のみつけ方』の

イラストブックレビューです。

 

 

だいじな本のみつけ方 (BOOK WITH YOU)

だいじな本のみつけ方 (BOOK WITH YOU)

 

 中学生の野々香は、放課後の校舎で、まだ本屋さんで
売られていないはずの文庫本をみつける。
大好きな作家・新木真琴の発売前の新作だ。
なぜここにあるの?
謎に導かれて、野々香は本が好きな仲間や、本に関わる仕事をする
大人たちと出会う。

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 本好きにとって、大好きな作家の作品が発売前に
そこにあるなんて!!そんな状況は興奮せずに
いられません。
なぜ発売前の新刊があるのか?
野々香は仲間と協力して謎を解明すべく奔走します。

謎が解けた後も、自分が野々香だったらもう
飛び上がりたいほどワクワクしてしまうだろうなあ、
という展開です。

自分以外の人が、『自分が好きな本』についてどう
思っているのか、そんな新しい気づきを経て、
『中学生がすすめる本』というブックフェアの企画を
本屋さんへ持ち込みます。

本が好きな中学生だった自分にとっても、本を作る、
売る立場だった大人の自分にとっても、とても
エキサイティングな出来事です。
『本への思い』による差異から、トラブルも起こったり
します。それでも、その『本と人、人と本をつなげたい』
『だいじな本を見つける力になりたい』という野々香と
その仲間たちによって乗り越え、成功させます。

人とは違うので、そこに『売りたい』という意識は
ほとんどありません。それゆえ、純粋な気持ちが
伝わってきます。
本を思う人のきもち。本をだいじだと思ったきもち。
多くの人がそんな本と出会えたらいい。

本を通して、いろんな人の気持ちがある、という
ことを理解する。いろんな感じ方や考え方がある
ということを知る。
本にはそんな力があります。
そうしたことをまっすぐに、やさしく思い出させてくれる、
そんな物語です。

その未来は過去の「私」の手にかかっている

『未来へ……』の

イラストブックレビューです。

 

未来へ・・・・・・

未来へ・・・・・・

 

 成人式を迎えた娘からの要望は、
『かなちゃんのお仏壇を出して。』
15年前、遠足のバス事故で亡くなった双子の姉、香苗。
彼女の仏壇を出して欲しい、と妹の菜苗は言います。
その日から、母親である若葉は、不思議な夢を見るようになりました。
香苗が亡くなる数ヶ月前の日々を連続して見るようになったのです。

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80年代、新井素子さんの作品をかなり読んでいた記憶があります。
残念ながら内容はさっぱり覚えていないのです。
ただ、SFっぽいけど理屈は難しくない。
主人公が出来すぎるわけではなく、身近な雰囲気で、自分の力で未来を
切り開いていく。そんなイメージだったような。

書店で今回の本を見つけて、懐かしくなり手に取りました。
(2017年4月15日ハルキ文庫より上下巻で刊行)
今でも活躍しているんだな、と嬉しい気持ちもあり。

そして、読み進めるうちにああそうだ!こんなんだった!!
と思い出してきました。それは一人称で語る!
話題が錯綜する!戻ってくる!行間…

こうだったな…。そんな気がするリズム感。
当時はテンポがいいと思っていた気がするのですが、今の自分には
読みづらいですね。主人公である、双子の母親若葉は40代から50代
くらいだと思うのですが、どうも人物像が浮かばす、共感しにくい。
もっと若い方のように感じる部分もあったりして。

母親として子供に対する熱い思いを持っているということは
充分に伝わります。主婦として優秀なのもわかるのですが
一人称だからでしょうか。
そう思ったのだ。私が。だから。
こういった表現が多く、オレオレ感が強くて疲れます。

娘である菜苗。この子の口調もすごい。
「ふみー」「うみー」「うにー」「おかしいと思うのー」「なのー」
…イラつく(苦笑)。
後半に向けて、彼女がすごい活躍をするから、その口調によって
ギャップ萌えを感じさせる設定なのかな?と思い、我慢して
読み進めてみました。

うーん、確かに頑張って活躍したけれどもその口調によって
引き立つほどではない。
今の自分にはその口調は過剰な演出に取れるし、登場人物に
共感できない一因になっているように思います。

独特の口調、一人称での心情を多く記した記載。
この頃ではあまり見ない、めずらしい表現かもしれません。
作品内容については、主人公が、眠る時に夢を見ることにより、
過去の自分にメッセージを送ることができる事を発見。
亡くしてしまった双子の姉を事故に合わせないために
過去の自分にメッセージを送り続けるというもの。

メッセージの伝わり方も完全ではなかったり、過去の自分から
反発を受けたりと様々な障害が起こります。
頼りないはずの娘、菜苗からの助けも受けることになります。

過去を変えてしまったらどうなるのか。
自分の娘だけ助かればいいのか。他に事故で亡くなった人たちは。
亡くなった何十人かの人々がみんな生き残ったらどうなるのか。

そこのあたりも上手に着地したラストだと思います。
ストーリーの流れや、SFファンタジーとしての構成は
スッキリとわかりやすく、読みやすいです。

登場人物たちのセリフなどが80年代っぽいので、これが
現代風にもう少し抑えた雰囲気でやりとりしてくれたら、
個人的にはとっても素敵な作品になったのかなと思います。

「福の神」はあなたのそばにいる

『「福」に憑かれた男』の

イラストブックレビューです。

 

(文庫)「福」に憑かれた男 (サンマーク文庫)

(文庫)「福」に憑かれた男 (サンマーク文庫)

 

 他界した父に変わり、実家の書店を継いだ秀三。
店舗を大きくすることを夢見ていた彼に訪れたのは、
集客が激減するピンチに次ぐピンチ。
しかしそれは、彼に憑いている福の神の仕業だったのです。

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秀三は、期待を持って本屋業を継ぎますが、黙っていても
客がやってくるわけではない。近所に大型書店ができる。
よくある話です。いよいよ赤字となり、店をたたもうか…と
考えはじめた時に、メンターと言える老人と出会います。

自分のことを「日本一裕福な老人」と豪語するその老人が秀三に提案します。
「そこにいるお客にどんな本を探しているのか尋ねなさい。
仕事や名前を伺って、お客さんにぴったりの本を紹介しなさい。」

秀三は躊躇します。
お客さんに話しかけたら嫌がられないだろうか。
押し売りだと思われないだろうか。

それでも意を決して、お客さんに話しかけ、おすすめの本を
紹介します。本屋として売りたい本ではなく、お客さんが
必要とする本を。ですからお客に対して「お代はいらない」と
秀三は言います。
読んでみて気に入ったら新しい本と交換して代金をもらい、
気に入らなかったら代金は払わずに返本してくれればいい、と。
お客さんは驚きますが、心から薦めたいという秀三の気持ちは
伝わったようです。

こんな本屋さんが実際いたらびっくりしますね。
でも、自分が求めている本がハッキリしない場合は、
このように書店員に薦めてもらうのはありがたい話だと思います。
大型書店の場合は、ジャンル毎に担当者がいるほど
本が多いこともあって、読者のハッキリとしないニーズに
応えるには難しい事かもしれません。
新刊や、ピンポイントでこの本、とわかっている状況では
強いと思うのですが。

一方、新刊や話題の本が薄い(=少ない)かわりに、数年前に出版されて
あまり回転が良くないような本でも、店長の采配によって
置いておくことができる。いわば店長の個性が滲む品揃えが
できるのが、町の本屋さんのいいところだと思っています。

その町の本屋さんの良さを活かして、秀三のおすすめ本を求める固定客が
でき、売り上げも増えて軌道に乗ってきた秀三に、また新たな
不安が発生します。

増えた売上で店舗拡大などを図るべきかどうか。
そもそもその売上をキープできるのか。

ここでメンターはまた秀三に語りかけます。
「考えなければならないことは、どうやって自分の欲しいものを
手に入れるかではない。どうしてそれを手に入れなければ
ならないか、である。」

自分は人生において成功したい。
なぜ成功したいと思っているのか。
成功した先に何が見えるのか。

ここをしっかりと考えていないと、せっかく成功と言える
結果を残したとしても、常に不安にとりつかれることになって
しまいます。

自分の中で答えを見出し、新たな出会いがあり、そして未知なる世界に
チャレンジし、失敗…
失敗するくだりは読んでいてつらくなってしまいます。
が、後にくる結果を知れば、やはり必要なことだったのだ、と
理解できるのです。

神様は自分で乗り越える事ができる試練しか与えない。

そして
人知れず他の人のためになるいいことをする
他人の成功を心から祝福する
どんな人に対しても愛を持って接する

これらは子供の頃から、祖父母や両親、先生や先輩から
教わってきた事かもしれません。
しかし、この物語の中で、一人の人間がこうしたことを
実践しながら着実に成長し、自分だけでなく、周囲の人々まで
幸せな気持ちにさせているという事を読むと、ストンと心の中に
入ってきます。

自分の使命。生きていく目的。
それを発見し、そのために力を尽くすことができる。
そのように生きる事が出来れば、とても幸せな人生と言えると思います。
そんな人には福の神がついているのに違いありません。

人生を楽しむための自由人の思考術

『自由人の脳みそ 仕事も夢も遊びも、自由に、自分の好きなように楽しむための38の考え方』の

イラストブックレビューです。

 

自由人の脳みそ  【仕事も夢も遊びも、自由に、自分の好きなように楽しむための38の考え方】

自由人の脳みそ 【仕事も夢も遊びも、自由に、自分の好きなように楽しむための38の考え方】

 

思考の癖を変えれば、人生は劇的に面白くなる!!
ベストセラー作家、日本とNYで出版社を経営、
レストランバー・ゲストハウスを世界中で展開、
インドとジャマイカフリースクール開設、
世界一周旅行2回、そしてハワイへ移住。
様々な活動をエネルギッシュこなし、家族を愛する二児の父親
でもある著者が、ジャンルにとらわれない自由人の思考術を公開。

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 肩書きだけでも書ききれないほど、多彩な活動をしている
著者の高橋歩さん。これだけのことをしていたら、普通の人は
人生一回じゃ足りないのでないでしょうか。

こんなにもあらゆることをやってのけるには、やはりそれなりの考え方が
必要になります。やりたいこと、欲求からはじまり行動力、覚悟、
選択、オリジナリティ、仲間、死など、38のトピックごとに
その思考術を展開します。

その行動力の原点は、スバリ『ワクワクを感じたらすぐ行動!』
というところにあるようです。潜在意識がビビッときたら、意識が
入ってくる前に行動起こす。これいい!と感じたら、今日は忙しいからな、
とかお金がなあ、とかあれこれ思い込む前に動いてしまうのです。

これを実践するには、会社に勤めていたりすると結構勇気が要りますよね…?
どうしてもリスクがないように、とあれこれ考えてから仕事って
やりますし。少なくとも自分はそうしていました。

しかし、あれこれ考えすぎるとどんどん動けなくなっていく、
というのもある意味事実です。ですからまず動き、動きながら考える。
失敗は、成功に繋げていけば、単なる経験に過ぎない。
失敗を失敗のままで終わらせるか否かは自分なのです。
うう 耳が痛い。

自分の事を振り返ってみると、若い頃は失敗して当たり前!!
と元気いっぱい仕事に取り組んでいたものですが…。
経年を重ねるにつれ、失敗してはいけないという
思いが鎧となって自分の体重くのしかかってきて、身動きが
とれなくなっていたように思います。

まさにそんな頃にこの本と出会いました。
子どもの頃の自分に出会ったような、不思議な気持ちになりました。
自分の感性を研ぎ澄まし、ワクワクを見つけたら即行動!
感性を鍛えるためにはめいっぱい遊ぶ!頭を開放する時間を作る!
え、こんなにいろいろやっちゃっていいの?と目からウロコな
項目がいくつもありました。

それは、「働いている人は自由な時間を持っていてはいけない」
「子育てをしている人は、1人でのんびりなんできるはすがない」
などなど、自分の行動を制限するような思い込みをいくつも持っていたから。
この本を読んで、こんなことやれっこないよ〜と思いつつ
なんだかウキウキしてしまっている自分を発見!

…で、会社を辞めました。
現在は本を読み、レビューを書き綴る毎日を過ごしています。
2年前の自分、よく決断したな!と褒めてあげたいです。
この本にはすごく助けてもらいました。
何度読んでも、その度ごとに心に止まる部分が違ったりして、
付箋だらけになっています。

就活中の学生さん、社会人数年目、数十年目の人。
どなたにでも参考になる箇所があると思います。
辛い思いをして働いている人には、カンフル剤となって新しい
行動を起こすことになるかもしれません。

「どうにもならない」「できるわけない」「無理だ」
「自分らしさ」「世間の常識」などなど世の中にはあらゆる思い込みを
促すような情報が溢れています。
そんな思考から開放されて、制限を設けずに、ただ心が弾む方向へ進んでいく。
喜んでいる自分を感じる。
毎日そのように過ごせることが自由人としての生き方になるのだと
思います。

自然は私たちに「感じる」事を教えてくれる


センス・オブ・ワンダー
』の

イラストブックレビューです。

 

センス・オブ・ワンダー

センス・オブ・ワンダー

 

  化学薬品による環境汚染に対していち早く
警鐘を鳴らした『沈黙の春』の著者である
レイチェル・カーソン
その彼女の遺作として、彼女の友人たちによって
出版されたのが本書です。

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レイチェルが毎年夏を過ごしたメーン州の海岸と森。
ここで彼女は姪の息子である幼いロジャーと森を
探検し、星空を眺め、鳥の声や風の音に耳をすませます。

レイチェルの描く自然の姿はとてもみずみずしく、
自身の発見や気づきによる喜びが伝わってきます。
そして、全ての子供たちに対して、自然の中に
身を置き、そこから感じられるものを見つけてほしい、
と言います。

驚き、喜び、ワクワク、恐怖…。
自然の中で得られる様々な感情は、子どもにとって
考えるための種となります。
「これは何?」「わあきれい!」「大きな音が怖い」
様々な自然の姿や変わり続ける状況を「感じる」ことで
知識を得たり、さらなる探究心を生むことになるのです。

森の木々、下草、川の流れ、海の波、風の音、太陽の輝き。
これらを肌に感じることで、自分も自然の一部なのだ、
ということが理解でき、自然に抱擁されているような
感覚を覚え、 私たちは大きな安らぎを得ることが
できるのです。

自分が自然に触れたのはいつが最後だったかな?
振り返って考えてみたら、2週間はたっていなかったので
意外と最近でした。ですが、自然の中にいた、というだけで
風や水の匂いを感じたり、花や葉がざわめく、風に散る、
といったように、じっくりと感じる、ということはなかった
気がします。

近所を散歩するにも木はありますし、花も咲いています。
風も吹くし雨も降ります。
身の回りには生命の輝きが溢れている、そう考えると
見える景色がガラッと違って見えてくるようです。

どこにいても、生命を感じる力、自然の美しさや力強さに
対し、驚きと畏怖の念を持つ感性を持つこと。
それは自分自身が流されることなく、しっかりとその場に
立つ、ということに繋がっていくのかもしれません。