『女學生奇譚 』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 川瀬七緒
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2019/07/05
- メディア: 文庫
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奇妙なメモが挟まれた古書が、オカルト雑誌の編集部に持ち込まれた。
そのメモには「この本を読んではいけない「」と書いてある。フリーライターの八坂駿は、カメラマンの篠宮、本の持ち主である兄が行方不明だという竹里あやめとともに古書の謎を追う。
古書の内容は、戦前の女学生、佐也子による手記。数名の少女らとともに立派な洋館の
一室に閉じ込められています。不定期にメンバーが呼び出され、呼び出された者は二度と帰ってきません。果たして、呼び出された少女はどうなったのでしょうか。
創作なのか、事実なのか、八坂は様々な角度からアプローチをかけ、調査していきます。ともにこに謎に挑むのは、八坂の相棒でカメラマン、細身で高身長、性格も男勝りだがオカルトには弱い女性の篠宮。この本を編集部に持ち込んだあやめ。意固地な態度で、今ひとつ八坂たちに心を開かないあやめですが、共に行動するうちに、少しずつその態度に変化が現れます。
手記は幽閉されてから数日ごとの様子を記しています。会話をしたり、読書をしたり
して静かに過ごしていること。そして、戦前の時代とは思えぬほど、豪華な料理を
出され、その味に夢中になっていること。女学生たちとの間に芽生える嫉妬や友情。
人名や場所などが明記される表現は慎重に避けて記録されています。しかし、時が
経つにつれ、佐也子の言動は支離滅裂となり、精神状態が不安定になっていくのが
文章から見て取れます。いったい彼女たちに何が起こったのか。そして驚愕の結末は。
戦前でありながらしっかりと教育を受けた良家の子女たちが、幽閉される謎。
都市伝説を作り出す謎の人物たち。そして、オカルトな情報を追い続ける八坂が
持つ秘密。あらゆる要素が、不穏な空気をまとい、読者を妖しく誘います。
1つずつ明らかになり、そしてまた新たに生まれる問題。どこへ導かれるのかと
ドキドキしながら辿りつくのは衝撃のラスト。
江戸川乱歩や横溝正史のような、重厚感があり、あらゆるところに見事な仕掛けが
施され、ページをめくる手が止まりません。恐怖を様々な角度から描く、読みがい
のある物語です。