ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

山奥に潜む 最強の四人の老人

 
 

四人組がいた。 』の

イラストブックレビューです。

 

 

郵便局兼集会所に日がな集まり、毒を吐きながら過ごす四人の老人。
車も滅多に通らない山奥の村で、過去の話や他人の悪口に花を咲かせていると
時おり見慣れぬ客がやってくる。四人組はいい暇つぶしができたとばかり、
客の相手をするのだが…。

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自称村一番の教養人の元村長、自称村一番の常識人の元助役、自称元プレイボーイの
郵便局長、自称元小股の切れ上がった熟女のキクエ小母さん。四人の老人たちが
地元や都会からの人間、そして人ならざるものを相手に大騒ぎするブラックユーモア
短編集。

かつて気球の村として、ちょっぴり盛り上がったこともある村の過去、見慣れぬ若い
女性の保険営業。市長に無理やり依頼され、廃校を利用しての、老人たちによる
幼児保育活動。村出身のアイドルを応援すべく、村からバスで向かう東京旅行…。

賑やかに、老人たちが思うままに自己主張しながら事は進んでいきます。
最初は忘れ去られた山奥の村でひっそりと暮らす、世の中には期待していない、
ちょっぴりひねくれた老人たちなのかと思いきや、なかなかどうして、ウイットの
効いた会話もするし、思いがけず軽いフットワークを見せる事もあるし、何より
好奇心たっぷりでいたずら好き。

そんなお茶目な老人たちの相手となるのは、都会からやってきた人物や、なんと
日頃は山に住み、時に人間に化けてあらわれる「四つ足」などです。老人たちは、
長く自然と近しい場所で暮らしているせいか、そうした人ならざる気配に敏感であり、
その対処法も心得ています。しまいには「四つ足」たちと共に仕事をしたり、遊びに
出かけたりするのですからこれはもはやファンタジーと言えるでしょう。日本昔ばなしのような雰囲気でもあります。

田舎は都会に比べて、娯楽も少なく、刺激もない。そんな退屈な環境でひっそりと
老人たちは暮らしている…のではなくて、田舎の山奥だからこそ起こるもののけじみた
現象や、人ならざるものの存在などを上手に受け入れ、楽しく共生しているのです。
普通では起こる事のない体験の数々に、むしろ、都会よりもパラダイスなのではないかと思ってしまうほど。

しかし、都会で暮らす自分なんかが同じ場所へ放り込まれたら、きっとパニックに
なって楽しむどころではないのと思います。やはり水も甘いも経験し尽くした老人たち
だからこ味わえる楽しさなのかもしれません。

歳を重ねていろんなものを「あり」と解釈して、思うままに突っ走っていく最強の
老人たち。こんな風に生きていることを楽しめるのであれば、歳を取るのも悪くない。
そんな風に思える物語でした。

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