ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

こういうの、読んだ事あります?

バーと競馬場に入りびたり、ろくに仕事もしない史上最低の私立探偵
ニック・ビレーンのもとに、おかしな依頼が来る。
調査に乗り出すうちにいくつもの奇妙な事件に巻き込まれていく。
死神、浮気妻、宇宙人等が入り乱れ、物語は佳境に突入する。
伝説的カルト作家の遺作にして怪作探偵小説が復刊。

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これは、すごい作品ですね。
なんというか、「これでもか」というくらいに、ものすごい口汚い言葉が
飛び交います。あの、中指立てて吐き捨てる言葉とかはほんの序の口。
あまりの言葉の応酬に、最後まで読みきることができるのかしら?
と少し不安な気持ちに。

しかし、その後に起こる奇妙な出来事の連続に、言葉づかいのほうは
次第に気にならなくなってきます。
非現実的な出来事に対し、皮肉なことにひどい言葉で日常にあることを
気付かせるという。

ニック・ビレーンが起こす行動の結果の数々に、次第に悲しみというか
青い透明感が漂ってきます。なんやかんや言っても仕事はしようと
してるじゃないか~ でもこうなっちゃうの?というような気の毒さ。

迎えるラストは一転して真っ赤。
「生きたい」というメッセージが強く伝わってきます。

読後感は、「意表をつかれた」。
アメリカの、口汚い探偵の、非現実的な依頼を受けて実行する、という
ハチャメチャな話なのかと思いきや。言葉の影に、悲しみや生きる事への
強い願いなどをが隠されていて、文学のようだなと感じました。
すごいガサツな男が、本当は繊細だった、みたいな。

かといって、ニック・ビレーンにキュンとはしないんですけどもね。
ラストはどうなったのか?と考えさせられ、でもしっくりとした
答えを未だ見つけることができず。

数年後に読んだら、その答えを見つけることができるのかもしれません。
自分にとって記憶に残る、印象的な1冊となりました。

 

 

パルプ (ちくま文庫)

パルプ (ちくま文庫)

 

 

EU圏内の旅で見つけた国民性と未来、そして役割

NHKで放送された関口知宏の鉄道旅シリーズ。

2015年、オランダ、ベルギー、オーストリアチェコの4カ国の鉄道を巡った。
車窓を横切る美しい風景、人々との出会い。
関口の飾らない人柄が映し出される人気番組を書籍化。
道中で、関口が肌で感じたことや歴史から学んだこと、
あらゆる視点から旅した国々を振り返る。

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表紙のイラストに惹かれて購入。
手書き、イラスト、色鉛筆。あたたかさを感じる扉には、つい手が伸びてしまいます。

この4カ国、私にとっては実に馴染みがありません。
オランダ、ベルギーは、夫が以前仕事で出張にいったことがあり、チョコレートを
お土産に買ってもらったことと、出張期間中、実家の母親を召喚して2人の娘の
面倒を見てもらい、ここぞとばかりに残業しまっくたのが関連する思い出。

夫のほうも、オランダは乗り換えで立ち寄っただけ、ベルギーは食べるものが
なくてサンドウィッチばかり食べていたとか。
いわゆるファストフードみたいな店はなかったようです。

仕事で行った人はそんな感想でしたが、ツーリスト的にはどのような国なのでしょう。

どの国も陸続き。他国に支配された歴史を持っています。
国土面積は小さめ。それぞれ国ごとに問題を抱えています。
その国民性はオープンだったり、クローズ気味だったり、ポジティブだったり
ネガティヴだったり。

鉄道で続けていける国々でこれだけ違いが出るのも面白いと思います。
島国日本で、占領されることなくずっと日本、周りは日本人だらけ、という
環境では、こうした国々のことを理解しようとするのは難しいのかなと。

著者の良いところは気負いがなくて、わからないことを素直に認めているところ。
もちろん、訪れる国についての勉強はされているとはおもいますが、先入観なく
現地での出来事を楽しんでいるように見えます。

そして、感じた現地の人々や土地に情景から自分、日本人、世界の中の日本に
ついて思いを巡らせています。

社会学者から言われると『そうは言ってもねえ』なんて言いたくなるところですが
この方の真摯な言い回しには納得させられるところがあり、うんうん、と
頷いてしまいます。

海外旅行に行くと、レジャー施設を訪ねて美味しいもの食べて買い物して帰る!
というパターンが多かったのですが、これだけの情報と考えを見つけ、残せる
というのはすばらしいし、あこがれます。
そうか、イラストの旅紀行描いてみたかったのか、と、自分の願望を新たに
発見できたのも嬉しい限り。

多くのことを発見し、感じることができるように感性を磨いておこう!
そんな思いにさせてくれる一冊でした。ああ、海外旅行に行きたい。

 

 

 

マナーは自信ない… そんなあなたに根本から教えます

現在では冠婚葬祭をはじめあらゆるシーンでマナーやエチケットが
簡略化されているが、国際社会では通用しないケースも出てくる。

長年、冠婚葬祭の最前線で活躍してきた著者が、大人であればぜひ
とも知っておくべき、世界で通用するマナーとエチケットを、それが
生まれてきた文化的背景とともに解説する。

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マナーの本は実用書で良く見ますが、こちらは新書。
必要にせまられて、ではなくてどんな切り口で語られているのかな?
と興味をそそられて購入しました。

「平服でお越しください」という言葉、たまに聞きます。
周囲ではこの「平服」で失敗した~という話も耳に入ってきます。

そもそも「平服」とはなんですか?というところから
解説してくださるわけです。これは「略した礼装」であり、
普段着のちょっといいやつではありません。
私は、そのように思っておりました。思いっきり違いますね。

具体的には男性はスーツ、色はダーク系、女性でしたら肌の露出は
避ける、色もシックなものをといった決まりがあるそう。

そもそもなんで「平服」という、普段着みたいな言い回しをするの?
といった疑問にも応えてくれています。
普通の実用書と違って、ただ決まりを覚えるよりは、こうした事情や
背景を知る事でぐっと身近になりますね。

こうしたドレスコードの詳細から、食事、席次、葬儀、礼拝など
内容は多岐にわたります。
作者の子供時代から培ったベース、そして大人になって学んだ
結婚式場、葬儀場での仕事から得た、様々な知識。
そんな話が各所にちりばめられていて、楽しく読み進めることができます。

マナーを守る事で、主催者や参加者、その場所に敬意を表す。
そうすることで見えてくるものって、いったい何なのでしょうか。

相手に敬意を表すことで、自分や自分の周囲の人たちのことにも
敬意を持ってもらえるのかもしれません。
良く知らない他人同士が、人が集まる場だからこそ、このような「形」が
必要となるのかな。

 

 

 

気ちがいは果たしてどちらなのか

記憶喪失のふりをしていた男の意外な正体と驚異の顛末が衝撃的な表題作、
遠い惑星に不時着した宇宙飛行士の真の望みを描く「みどりの星へ」、
ある事件を境に激変した世界の風景が静かな余韻を残す「電獣ヴァヴェリ」
など、意外性と洒脱なオチを追求した奇想短篇の名手による傑作12篇を、
ショートショートの神様・星新一の軽妙な訳で贈る。

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ショートショートといえば、子供の頃、実家のトイレに置いてありまして。
予備のトイレットペーパーなんかが置いてある、少し高い棚の上。
そこに兄のマンガや父の歴史本、誰のものか不明な文庫本など
数冊があったのです。

小学校低学年くらいの頃、このようにトイレのお供として
ショートショートなるものを読んでました。
当時読んだものの内容は覚えておりませんが、「わけがわからないなあ」と
思ったことだけは覚えています。

大人になった今、この強烈なタイトルと、そんな子供の頃の事を
少し思い出してこの本を手に取りました。

宇宙人あり、悪魔あり、怪獣あり・・・と実に多様なストーリーたち。
各世界での状況など、設定がしっかりとしているのでどれを取っても
読み応えがあります。

続けていくつかの話を読んだら、頭の中がちょっと混乱してしまいました。
それぞれの世界が、パラレルワールドのように同時に存在している、
というような感覚に陥ってしまったためです。

それだけ、物語の世界に引き込まれたということかもしれません。

ちょっぴり皮肉的な要素を含むいくつかのラストシーンは、人間に
対して警鐘を鳴らしているようにも感じます。
読む者に何かを考えさせる、骨太なショートショートです。

我が家のトイレにも置いておこうかな・・・。

 

 

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)

 

 

大切な相棒と仲良く快適に暮らすために

大人気猫マンガ『猫なんかよんでもこない。』の杉作さん描き下ろし!
ほのぼの猫暮らしマンガと獣医さんが教える最新猫医学。

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猫を飼い始めるきっかけから、子猫を迎え入れそして看取るまでを
マンガで、そして猫の心と身体やお世話のコツを、獣医さんが最新の猫医学に基づいて解説します。

マンガの作者、杉作さんが描写する猫と飼い主の関係はキュンキュンします(笑)。
飼い主にしきりと擦り寄ってきては膝に乗る・・・
そんなあったか猫ライフを期待して飼い始めたのに、そうはいかないし。

身体の手入れをしようとしたらやたらとひっかかれた、かじられた、暴れる・・・
うちの2代目も1歳過ぎてもそんなかんじ。

でも、興奮してないときはいつも誰かのそばで無防備にお腹を見せて
寝転がっています。その姿がなんとも可愛らしくて癒されます。

うちの2代目は、誰かにべったりするよりは、人のそばにいるのが
心地よくて、触られすぎるのはあまり好きでないタイプのようです。

猫の数だけ性格は異なる。ただ、性質は共通するところがあるので
そこを尊重してあげると良いようです。

我が家もトータルで15年近く猫を飼っているのですが、猫とどのくらい
遊んだらいいかとか、猫が好む環境など、知っていたようで実は
わかっていなかった点がいくつもありました。

個人的にはどうしても納得いかないのは猫を『猫様』としてあがめ、人間は下僕であれ、
という部分。
確かに家族の一員として扱ってはいますけど、あくまでペットだし。
人間より偉いとか、ちょっと受け入れられませんけど・・・

そして自分の行動を振り返ってみた結果、猫の気に入りそうな
おもちゃをいくつも買ってきたり(ひとつでいいでしょ)、
寒そうだよね~と猫用布団を用意したり(なくても困らない)、
たまには豪華なごはんもいっしょに食べたいよねと高級レトルト買ってみたり(たまにね)。

そこそこ下僕化しているようです(汗)。
我が家は幼児もいますので、爪立てたり攻撃しないように気をつけていますが
2代目は一応気を使って、激しめに遊びたいときは大人を狙ってきます。
意外と分別があって賢いです。猫バカですね。

家族みんなが、それぞれに大切に思っている我が家の猫。
猫は気ままになでてもらいたい人のところへ赴き、そうでなければ寝る、遊べ、と誘う。

思い通りになでさせてくれなかったりもしますが、大事な家族の一員です。
2代目が末永く、一緒にいられるようにこの本を参考にしていきたいです。

この本の良いところは、猫が我が家にやってきたときのことを
思い出させてくれること。
そのときを思い出すたびに、ああ、我が家に来てくれて良かった、
とあたたかい気持ちになるのです。

 

うちの猫を100倍幸せにする方法: ほのぼの猫暮らしマンガと獣医さんが教える最新猫医学

うちの猫を100倍幸せにする方法: ほのぼの猫暮らしマンガと獣医さんが教える最新猫医学

 

 

ピアノが自分の魂の声を届けてくれる

祖父と従姉妹とともに火事に遭い、1人生き残った遥。
全身大火傷の大怪我を負いながらも、
ピアニストになることを決意する。
コンクール優勝を目指して猛レッスンに励むが、
不吉な出来事が次々と起こり、ついに殺人事件まで発生する……。

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多感な年頃の女子高校生が、全身に火傷を負う。
それだけでもショックだが、治療にリハビリ・・・と
痛みと苦痛が伴う試練が待ち受けます。

怒り、苦しみ、あきらめ、悔しさ・・・
あらゆる感情が彼女を取り込み、時に爆発させます。

ひとつ問題を乗り越え、また問題を発生し、といった
出来事の中で、物語全体から漂うのは彼女の「若さ」。

ポジティブな出来事も、ネガティブな行動も、全ては
彼女から発せられる、きらめくような力、輝きを感じさせるのです。
これは40代の今の自分ゆえの感想でしょうね。
今の自分にはないものですから、懐かしむような、うらやましくは
ないような。何せ、力が有り余ってコントロールできない状況じゃ
ありませんか?10代の頃って。

彼女の演奏シーンでは、その彼女の「全て」が全身で
表現されるわけです。
短期間の間に起こった火事、火傷、リハビリ、ピアノの練習。
それだけではなく、それ以前の彼女の人生すべて。

表現する、伝わるということが、それまでの彼女に起こった出来事を
もとに考えれば、しっかりとした説得力を持って読む者に伝わるのです。

音楽の調べに乗った彼女の人生、生き様を私もぜひ聞いてみたい。

きっと涙が止まらなくなるのではないかな。
本を読んでいても、涙が溢れてしまったから。

 

 

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

 

 

 

 

とってもシンプル。でもすごく食べたくなる。

忙しい朝でもムリなく作れる手軽なものから、
少し手の込んだお弁当まで。
すぐに作りたくなる、おいしそうなお弁当の
レシピ集。

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焼き鮭、卵焼き、きんぴらごぼうといった
定番おかずがつまった基本のお弁当をはじめ、
作りおきおかずやフライパンで作るどんぶり弁当などを紹介。

映画「かもめ食堂「めがね」などのフードスタイリングをつとめる
飯島奈美さん。
この方の料理とスタイリングは気取っておらず、あたたかい。

きっちりきれいにつめた、売っているようなお弁当ではなくて
誰かが、誰かのために作ったお弁当なんだなあという空気が
伝わってくる。

お料理とスタイリングは別、というのもレシピ本では
良くあるのですが、飯島さんはお料理を作るときに
常に誰が、どのような場所で、どのような時に食べるのか、
という全体のシーンが明確になっていて、その一部として
料理がある、というように考えているのかなと。

料理スタイリングについて、監督の目を持って取り組んで
いらっしゃるように見えます。

A5版の小さな判型の写真のなかに、様々な家族、またはシングルが、
そしてあらゆるシチュエーションがつまっていて、それぞれが
どんな風にお弁当を広げて食べるのだろう・・・
そんな楽しい想像をさせてくれる本です。

レシピは難しいものではなく、きちんと読んでつくれば
おいしく作れることができそう。

できそう、というのは娘や夫に作ろうかと思って買ったのに
ここに載っている弁当を誰かに作ってもらって、それを自分が
食べたいな~と思ってしまうために、未だ作っておりません。

いや、充分実用的なんですよ?
でも自分的にはフォトブックとして楽しんで、時折開いています。
そんな用途の料理本をいくつか持っています。
料理写真てなんだか癒されるんです。

 

あしたのお弁当 (mama’s cafe books)

あしたのお弁当 (mama’s cafe books)