ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

複雑に絡み合った線が一気にほどける快さ

青光(ブルーライト) 』の

イラストブックレビューです。

 

青い電飾が死体のそばに撒かれているという連続殺人事件が、東京を震撼させていた。
同じ頃、作家であり、ブルーライト探偵社所長でもあるユナのもとに、女友達の秋子から助けを求めるメールが届く。一方、探偵社で依頼を受けた身辺調査が、連続殺人事件と奇妙なつながりを見せて…。

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アラフォー、バツ2の主人公、ユナ。小説家だけでも何とか食べていけるが、かつての
担当編集者であり、ブルーライト探偵社を立ち上げた相談役の高橋からの提案で、探偵
所長を務めることになったのです。1人目の夫は失踪、2人目の夫は事故死。ともすれば
塞ぎがちなユナを慮って高橋が采配してくれたようです。

探偵社に身辺調査の依頼が入ります。依頼者は著名なネイリスト、調査対象は婚約者の
男性。もと野球選手で現野球解説者、バツイチである彼の周辺を調べて欲しい、との
依頼でした。優秀な探偵スタッフたちが調査して特に問題はなかったようです。

そして、ユナのもとに届いた一通のメール。友人の秋子からで、タイトルに「助けて」
とあり、本文はなし。家族には旅行に行く、と言って出かけたようなのですが…。

一方、警察では都内で起こる連続殺人事件の捜査に手間取っていました。現場や
殺害された人間たちの関連性が見出せず、目撃情報もないため、苦戦を強いられて
います。そこへ、殺人事件とそっくりな描写がある小説があるという情報が入ります。

身辺調査、友人の失踪、連続殺人事件と、3つの舞台が進んでいきます。
それそれが緊張を伴う展開ですが、はて、これらはどのようにつながっていくのか?
と頭に疑問を思い浮かべながら読み進んで行く状態です。ところどころに、犯人の
ノローグなどが入り、そこは明らかになるのですが、事件全体を眺めてみると
どの犯人?となってしまうのです。ああああ、これ以上はネタバレになるので控えます。

事件の展開、少しずつ明らかになっていく関係者の過去や人間性。これだけ複雑に
絡み合っていながらも、読者を混乱させることなく、最後まで力強く引っ張っていく
描写はさすがです。そこが繋がってたのか!と謎が解明した瞬間の気持ち良いこと。

そして、ラストは事件が解決して終了、ではなく、登場人物たちがそれぞれに、これ
までの生きてきた人生で消化できていなかった部分を清算するような形。それが、
サスペンスミステリーでありながら、人の人生の一部を垣間見たような、深い感慨を
覚えさせてくれる物語です。


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