ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

日本と日本人における「天皇」の存在とは

落陽』の

イラストブックレビューです。

 

明治天皇崩御直後、渋沢栄一ら東京の財界人たちは神宮造営を計画。
一方で帝国大学農科大学の本郷は「東京に神宮林にふさわしい森を造るのは不可能」
と反論。東都タイムスの記者、瀬尾亮一は同僚と取材するうちに「明治天皇」という
存在について思いを巡らせていく。

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大手新聞社の足元にも及ばない、華族や政治家の醜聞記事で持っているような東都
タイムスで記者をしている瀬尾。同僚の熱血女記者、伊東響子から協力を頼まれ、
神宮造営の取材に取り組みます。

明治という時代が終わった東京の町の様子が、生き生きと描かれています。
日清、日露戦争で勝利をおさめ、アジア最強国となった日本。近代化が急ピッチで
進んだ明治が終わり、街を歩く人々は洋装が増え、ようやく国民レベルで生活を
「楽しむ」時代となっていったようです。

そんな中で勧められた神宮造営計画。明治天皇は京都で生まれ育ち、明治維新
際に東京へとやってきました。それから崩御されるまでを東京で過ごし、京都へは
行幸の際に立ち寄る、というスタンスでした。しかし、明治天皇は命が尽きた後は
京都で眠りたい、とおっしゃったのだとか。

東京に神宮を造営し、その御霊を祀りたい、という考えを渋沢栄一らが示し、それを
まとめ議会へ提出。それを受けて帝都大学農科大学の本郷教授は、東京は神宮林を
造営するのにふさわしい環境ではなく、針葉樹などが育たないと主張し、大激論に
発展します。

時には強請りのようなことをやって糊口をしのいでいる東都タイムスの記者、瀬尾は
男性顔負けの行動力と頭の回転持つ女性記者、伊東から神宮造営についての取材に
対して協力要請されます。編集長文句を言われながらも取材を進めるうちに、
明治天皇という個人について興味を持つようになります。

明治天皇が全国を行幸されたのは、古来の天皇がおこなっていた「国見」に
あたるのではないか。日本は、諸外国と違って、天皇は国を見る。そして
やるべきことを行う。そうした政治を行ってきた。明治天皇はその古来のあり方を
参考にしていたのではないか。

また、明治天皇は日本という国を、アジア筆頭の国家とするために、己を律し、
国に尽くしたが、生まれ育った京都への思いを強く持っていたのではないか。

日本の象徴とされる存在の天皇。日本が猛スピードで発展を遂げた、明治という激動の
時代を担った天皇は、ひとりの人間でもありました。日本という国とその国民を大切に
思い、その発展と平和のために尽くした存在なのです。こうした「天皇」という存在が
ある日本という国は、何と豊かで恵まれた国であるのかと感じます。

新たに令和という時代を迎えた日本は、どのような国になっていくのでしょうか。
そして、後年、令和とはどんな年だった、と言われるのでしょうか。
どの時代にも「天皇」が日本を見守っていてくれる、日本の平和を祈ってくれている、
そんな日本であってほしいと思う物語です。

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