『シュークリーム・パニック 』の
イラストブックレビューです。
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- 作者: 倉知淳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/14
- メディア: 文庫
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メタボを克服するため体質改善セミナーに参加した四人の中年男性。
絶食を強いられた過酷な環境の中、インストラクターが買ったシュークリームが
紛失。犯人は一体誰なのか。ちょっぴりおかしくて奇妙な謎を解く六つの短編集。
強盗の実行計画をすっぽかされた男、脱税情報を飼い猫に託した男、大人気アニメの
お宝サイン色紙を狙った怪盗からの予告状など、スリルと笑いが散りばめられた
六つの短編集です。
中でもおもしろいのは「限定販売特製濃厚プレミアムシュークリーム事件」です。
健康診断でメタボと言われ、家族に勝手に申し込まれ、または自分の意思で申し込み、
体質改善セミナーに参加した四人の中年男性たち。インストラクターからは、セミナー
実施中の二泊三日間は、特製のお茶以外口に入れてはいけない、つまり絶食を言い
渡されます。
ど田舎で、コンビニも自動販売機さえ近くには見当たらないという環境の中、
空腹を紛らわせながら乗り越えようとしていた彼らの元に叫びながら駆けつけて
きたのはインストラクターの男性です。
この男性は痩せているけれども、声が甲高くて某通販会社の社長の喋り方にそっくり
なのだとか。以下某T社長の声と喋り方でご想像ください。
ぬ、ぬ、ぬっ、ぬすまれたっ、盗まれました、盗まれましたよ、私のシュークリームが、私の特性濃厚プレミアムシュークリームがっ、特製ですよ、濃厚ですよ、プレミアムなんですよっ、それが、ぬ、ぬすっ、ぬすっ、盗まれたんです、く、く、く、悔しいっ
どうでしょう、脳内再生されましたか?唾を飛ばしながら喋るT社長の姿が浮かんできて笑ってしまいました。このインストラクターのキャラが秀逸なんです。
セミナーの内容説明も、あの電化製品を売る口調と一緒で、ニヤリとしてしまいますし、おまけにセミナー参加者に絶食させておいて、自分はシュークリームかよ!
それを参加者に突っ込まれると逆ギレする。なんなのこの人。おもしろすぎます。
さて、消えたシュークリームの謎を解くために、メタボおじさんの四谷さんが
ミステリ好きの自分の能力を活かすべく、推理を展開していきます。とにかく
シュークリームに思い入れが強すぎて感情と思考が乱れまくりのインストラクターと、
インストラクターに呆れつつも四谷さんの推理を裏付けたり、検討したりと
意外と冷静なメタボおじさんたち。
そして、推理と犯人をズバリ発言して気分が最高潮となっていた四谷さんの前で
おずおずと自己申告してきた犯人は…。その場にいたらズコーッと昭和的リアクションをしてしまいそうな結末。でもそんな四谷さんに同情したりして。
某社長風言い回しといい、次から次へと展開していくスピード感といい、リズム感がありテンポよく楽しめます。他の五つのお話も、雰囲気は違いますが、軽妙で意表をついた結末がなんともいい味を出しています。様々なテイストを楽しめる、ちょっとお得な
ライトミステリ短編集です。