ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

かわいくて、うれしくて、泣けてくる物語

NNN(ねこねこネットワーク)からの使者 〔3〕(毛皮を着替えて) 』の

イラストブックレビューです。

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二十年間一緒に暮らした猫を亡くしてペットロスになった青年。
飼い始めた猫の行動や仕草が、死んでしまった昔の飼い猫とそっくり同じな
ことが気になって仕方がない女性。猫を失った経験を持つ男女のもとへ、今日も
三毛猫のミケさんは、ネットワークを駆使して、最適な出会いを提供する。

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猫は死んだ後に、別の猫に生まれ変わってまた同じ飼い主の元へ現れることが
あるそうです。それを「毛皮を着替える」と言うのだとか。飼い猫を亡くして
しまったり、やむをえず手放すことになってしまった人間のもとへ「毛皮を
着替えた猫」がやってくるなんて、素敵なことですね。

三歳の頃から家にいて、二十年間一緒に暮らしてきたアビシニアンのレオが死んで、
ペットロス状態になってしまった青年、古澤永。心配した友人の謙作が合コンを
セッティングしてくれます。ペットを飼ったことがない謙作は、動物が死んだだけだろ、と永の心の痛みが理解できない様子。永にしても、世間から見ても女々しいかな、などと悲しみと、モヤモヤした気持ちが一体となっています。

同級生の父親がやっている居酒屋で、猫を飼っていたことがあるという会社の同期で
ある周太と呑み、ペットを失うのは家族を失うことと同じなのだから、悲しむのは
当たり前なのだ、という話をします。そして、帰りには居酒屋に妊娠中の猫が餌を
もらいに通っていることを知り、気にかけます。

しばらくして謙作と居酒屋に向かったところ、野良猫が産気づき、急遽店を閉めて
出産を見守ることになり…。居酒屋では産まれた子猫の面倒を見ることができないので、
永の家で子猫を世話することになりました。小さな子猫の世話をし、レオの事を思い
出しながら悲しんだり、子猫の成長ぶりや可愛さに喜びを感じる日々。次第にレオを
失った悲しみが癒えていくのを感じるのです。

そして、この妊娠猫を斡旋したのはやはりミケさん。居酒屋には必ず二匹で訪れて
いたのだとか。さすがの仕事ぶりですね。

猫が人間に与えてくれる癒しやあたたかな喜び。それは長く暮らせば暮らすほどに
なくてはならないものに感じられます。しかし寿命があるのは生き物の宿命です。
去ってしまった時の悲しみは、何にも代わりになるものはないのかもしれません。

しかし、その亡くなった猫たちも、虹の橋を渡り、もとの飼い主のもとへ再び現れる
タイミングをはかっているのだと思うと、救われるような思いもします。
失った時には、悲しみのあまりもう飼えないと思っていたのに、縁があってまた
猫を飼うことになったとしたら。それはもしかして、猫が「毛皮を着替えて」やって
きたのかもしれませんね。そして裏ではミケさんがセッティングしていたのかも?

人間に対する猫の健気な思いや、猫を愛する人間の気持ちに心が温かくなり、感動の
涙がこぼれる物語です。

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