ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「夫婦は似てくる」の本当の意味とは

異類婚姻譚 』の

イラストブックレビューです。

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子どもを持たず、仕事もせず、専業主婦として呑気な生活を送っていたは、
ある日夫の顔の異変に気付く。やがて夫と私、互いの輪郭が混じり合い、自分の
顔が夫とそっくりになっていることに気付く。

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夫婦は、似てくる。よく聞く話ですよね。
同じものを食べて、同じ家に住み、同じものを見て喋るという生活を長く続けて
きたら似てくるものなのじゃないか、とそんなことだと思うのですが。このお話は、
そうした微笑ましいものではなくて、「なんとなく似ている」という範疇を超えた
そっくりになってしまった、ちょっぴり怖くて、奇妙なお話です。

専業主婦のサンちゃんは結婚して四年になります。旦那はバツイチで、サンちゃん
とは再婚です。二人の間に子どもはおらず、サンちゃんは専業主婦としてのんびりと
暮らしています。そんなある日、サンちゃんは鏡を見て、自分の顔が旦那に似ている
ことを発見し、奇妙な感覚を覚えます。ご近所の知り合いの年配の女性、キタエさんに
話してみたら、なんと彼女の知り合いの夫婦にも、双子のように顔がそっくりだった
人がいたのだとか…。

サンちゃんの旦那という人は結構適当です。自分の誕生日を忘れて、「サンちゃん
覚えといてよ」とか、近所の人に怒られると、俺こういうの苦手だから「サンちゃん
何とかして、」とか。割とダメなカンジですね。サンちゃんもなんだかんだと、怒り
だすでもなく仕方ないか、と旦那の面倒を見ています。それでもって、力が抜けて
いる時は、何と旦那の顔の、目鼻などの位置が崩れている!

サンちゃんはびっくりしますが、彼女が気づくと同時に顔も「あ ヤバイ!」と思うのか
シュッと元の位置に戻るのだそうです。何だそれ…。
気がついたら、今度は自分の顔の目鼻の位置が微妙にずれているのです。その変化に
よってますます旦那の顔に近づいていくのでした。

サンちゃんは、あまり自己主張せず、旦那の要望をどんどん受け入れており、その
ことに対して喜びも怒りもあまり感じていない様子に見えます。
そして、旦那の方はとことん面倒くさがりで、何でもしてくれる、許してくれる
サンちゃんにベッタリと寄りかかっている状態です。

夫婦は、互いに譲れない芯のような部分があって、そこを中心として相手との生活の
中で芯に足したり、少し削ったりして生きていくものなのだと思います。
「これだけは譲れない」というものが無いような二人は、次第に互いの境界線が曖昧に
なり、融合することに近づいていったのかもしれません。

最後にサンちゃんがとった行動は、自分の芯を思い出して、全てを差し出すことが
できない、と気づいた結果の上に起こしたものなのでしょう。夫婦は一体、といっても
基本は別の人間であることを忘れてはいけない、と思わせる物語でした。

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