ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

老後の資金と幸せの関係を描いた物語

老後の資金がありません 』の

イラストブックレビューです。

編集

 

老後の資金はそれなりに準備していたはずだった。ところが娘の結婚式、
義父の葬式、義母の生活費と、みるみる間に減っていく貯金残高。おまけに
夫婦揃って失職。必死にやりくりする篤子の努力は報われるのか。

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娘の結婚、息子の就職が決まり、子育てがひと段落した篤子。
1200万円の貯金もあるし、夫の定年まであと数年。自分もまだ働いているし
老後はまあそれなりに安泰かな、と思っていたところ。…ところが。

娘の結婚相手の意向で、式は派手婚。大学は出たが要領が悪くおっとりとした
娘は就職できず、派遣として働いていたため、本人の貯金は多くない。
親が負担してやるしかないか…と決意して出した金額500万円。

長いこと寝たきりだった義父が亡くなり、家が遠かった篤子夫婦は葬式と
墓の代金を負担するように義妹に言われ、夫も頷くしかなく。
そうは言っても、家が近い義妹も病院に入院していた義父を介護したりした
わけではないだろうに…。言いたいことをグッと飲み込み出した金額は
400万円。しかも立派な葬式をするようにと義妹から釘を刺され、金額がかさみ、
いざ葬式の当日にはほとんど人が来なかったという。

おまけに娘の夫のDV疑惑が発生したり、篤子夫婦がともに失職したり。
義母が暮らす施設の生活費として毎月8万円を送金していたのですが、
貯金残高は減り、収入が断たれてキツイので調整させてほしいと義妹に
相談するも、そんなの関係ない、とひどく突っぱねられてしまいます。

ついにキレた篤子は、施設に暮らす費用がかかるなら自分が義母を
引き取る、と宣言します。そして義母と暮らし始めるのです。

お金に対する篤子、夫、義妹の感覚は収入も暮らす環境も異なるのでバラバラです。
しかも、義妹は両親から受けた愛情に納得のいかない部分を抱えていたようで、
篤子の夫の方が子どもの頃から親に愛されていた、と鬱屈した思いを胸の奥に抱えていているため、
その暗い嫉妬の感情が篤子夫婦へと向かっている部分があるようです。

大事なものに大きな金額をドンと使う。自分が納得したうえで使うお金は惜しみない
のかもしれませんが、自分以外の者に対して払う、しかも納得できずに払う大金は、
精神を疲弊させます。

お金は生活の根幹であり、あれば安心、なければ不安になるものです。
しかし、施設から引き取った義母と生活しているうちに、次第に気持ちが
変わっていく篤子。ハッキリと見えない未来への不安に時間を費やすのではなく
今、自分がここにいて何を感じているのかを楽しむことが大切なのだ、と
気がつきます。

そんな不安から逃れ、自由に生き、楽しむようになった篤子の周囲では
不思議と良い連鎖が発生していきます。篤子は未来に不安を、現在に不満を抱える
毎日を過ごしていました。しかし現在の暮らし、自分自身の生き方に目を向け、
そこにある喜びを見出すことができるのであれば、不満に思っていた他人のことさえ
良い点を見つけることができるのです。

身軽で状況の変化に柔軟な20代とちがい、何十年も仕事子育てをしてきた
50代くらいの世代にとって、立て続けに起こる大金の支出や生活の変化は
精神的にも大きな打撃を受けるものです。しかしそれは、今までのこびりついた
価値観から自由になり、新たなステージを迎えるための必然的なイベントなのかも
しれません。

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