ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

デザインから見えてくる「仕事」と「自分」

読書人が集う『シミルボン』にて、インタビュー記事掲載! 

https://shimirubon.jp/columns/1691046 

 

デザインの仕事  』の

イラストブックレビューです。

 

なにかを作り出したいと思っている全ての人へ。
イラスト、デザイン、装丁から広告まで様々な形で活躍する
寄藤文平の体験的仕事論。

 

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日本たばこ産業JT)の「大人たばこ養成講座」という広告を
目にしたことがある方は多くいらっしゃると思います。
サラリーマンが〇〇のお作法と称して、やってはいけない例を
ユーモアたっぷりなイラストで伝えたもの。
それから、R25のキャラクター。こちらもハッキリと印象に
残るイラストですね。自分には、こちらは男性がコブシを突き上げている
イメージ。表情があるような、無いような感じもいいです。

著者は、美大在学中に、先輩のつてで博報堂でアルバイトとして
働き始めます。そこで広告のノウハウを学んだあと独立。
アルバイト時代からだんだんと仕事量が増えていき、博報堂内で
博報堂経由では無い仕事もやり始め、ついには上の人から独立するように
促されます。

独立して、事務所の設立からあらゆることをやってきた著者にとって
会社員の人が『忙しい』と言うことに違和感を覚えたといいます。
忙しいと言った後に、あそこの店がおいしいなどと話している
様子に、忙しさの種類が違うのだな、と感じているのです。

この人たちにとって、お金は「もらう」ものであって「つくる」
ものじゃないんだなという感じがして、それでいてお金をくれる
会社に対してはあれこれ文句をつけて、じゃあ辞めて自分で稼げば
いいじゃないかって思うんですけど、そんなつもりはぜんぜんない
らしく、何の話をしているのか僕には分からなかったですね。

そして上記のような事を、会社員に対して思っていたようで…。
アイタタ、会社員時代の自分ですね、まさしく。
主に二十代は給料はもらうものであったし、残業だ何だと文句言って
いましたし、独立する気は全くありませんでしたねぇ。親に世話になって
いながら反抗期で怒っている子供みたいですね。

著者の場合は、アルバイト時代にすでに仕事の方向性などが見えてきた、
ということが大きいと思います。あとは自分の好きなことを仕事にして
いるという自覚があって、そのための努力を惜しみなく続けていること
がポイントなのかなと。好きな事、得意な事は誰しも持っているけれど、
その好きな事をより上手く、よりわかりやすく、よりきれいに、より早く…と、
昨日よりもより良く「できる」方法を常に考え続けられるかどうかが
大事なのだと教えてくれます。

時代におけるデザインの変化や考え方、装丁についての考え方などに
ついての記述を読めば、広告を見るときや書店で本を選ぶときに
「おお、これはそういう意図でこうやって作っているのだな」と
頭に浮かび、結構楽しいです。企画書やプレゼン資料を作るときにも
考え方として参考になるかもしれません。

いかに他者に伝えるか、なにをどう伝えるかを極めるデザインの仕事。
それは、クライアントや著者を考え、視聴者や読者を考え、そして自分を
考える。あらゆる方向から掘り下げて考えていく必要があるのです。
それは、結果的に自分が何をどう考えてどのように表現していくかを
発見する、つまり自分を知る、ということにつながっていくのかも
しれません。好きな事を仕事にする人は、どのように働いているのか、
イデアの出し方や仕事への考え方など、デザイン業界でなくても
参考になる一冊です。