ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

これぞ生きる達人!スーパーおばあちゃん物語

ひかりの魔女 』の

イラストブックレビューです。

 

ひかりの魔女 (双葉文庫)

ひかりの魔女 (双葉文庫)

 

 

ばあちゃんと一緒に暮らすことになった浪人生、真崎光一。
ばあちゃんの用事に付き合って出かければ、ばあちゃんは
「先生!」と慕われる。ばあちゃんが作る、お釜で炊いたご飯や
煮物、漬物などが異常においしい。そしてばあちゃんは嘘をつく。
ばあちゃんが巻き起こす幸せの物語。

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ばあちゃんは、もと書道教室の先生。米寿が近い80代。
足腰はとてもしっかりしている。孫をはじめ、みんなの名前は
「さん」付けで呼ぶ。普段は割烹着で過ごす…。
と、わりとスタンダードなおばあちゃんなのですが、
光一と二人で出かけたときにものすごい技を見せます。

突っ込んで来た車から瞬時に下がり、車を止めるように手を
出したこと。一瞬の出来事であり、光一は我が目を疑い、
次にばあちゃんの能力を疑います。いきなり掴まれますね。
ばあちゃんは人間ではないのか!?これはSFだったのか!?
と思いきや。

トレーニングの成果なのですね。ばあちゃんは「立禅」という
立ったまま行う禅を毎日行っているんだとか。
毎日やっていればすごいことになるのか!と感心したので
自分も試しにやってみましたが、5分で挫折し、おまけに
翌日両腕がひどい筋肉痛に見舞われてしまいました。
ちなみにばあちゃんは毎日30分行っているそうです。
完全に80歳以上のばあちゃんに負けとるやんけ…。

そんな素晴らしい体?をお持ちのばあちゃんですが、バスに乗れば
腰を曲げてヨロヨロと歩き、座席を譲ってもらったりもします。
そして譲ってくれた人としばしの会話を楽しむのです。
相手の方も喜んでくれるような、素敵な会話術もお持ちです。
席を譲ってもらいながら、その相手に何かを与えている、そんな
印象を受けます。

そして注目すべきはそのお料理。 まずは釜で炊いたご飯。
ツヤツヤと光っていて、美味しくないわけがない!そこに合わせるのは
イワシのぬかみそ炊きに漬物などなど。ご飯が進む進む!
描写を見ているだけでもよだれが…。
お昼はラーメンとかうどんで済ませていた光一も、その美味さに
ご飯をかきこむのです。ああ、うらやましい。
人との距離を縮めるのに、ご飯は重要なファクターになりますよね。
ばあちゃんの教え子たちもこうしたおいしいご飯をご馳走になって
心をわしづかみにされたようです。

ばあちゃんの元教え子や光一の家に、さまざまなトラブルが起こります。
それを、ばあちゃんはちょっとした嘘を交えながら、実に上手に
三法が丸く収まるように解決していくのです。
こうした解決力はちょっとやそっとでは身につかないでしょうが
ぜひとも見習いたいところです。

強いけれど強く見せない。押すところは押すけど、引き際も
しっかり見据える。
そして、何より食べることなどの毎日の事をとても丁寧に行っているということ。
日々の暮らしをひとつひとつ丁寧に行うことで、料理はよりおいしく、
食べる者の心を打ちます。そして体は鍛えた分だけ動きで応えてくれます。

やれと言わずに行動を持って、あるべき姿を教えてくれている、
やさしくて、強くて、しなやかでお茶目なスーパーおばあちゃん。
こんなおばあちゃんが近くにいたら、幸せのおすそ分けが
もらえそうです。