ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

強くてしなやかな女子的生活に幸あれ

女子的生活』の

イラストブックレビューです。

 

 

アパレル勤務のみきは、おしゃれをしたり、インテリアに工夫をしたりして「女子的生活」を楽しんでいた。ある日、マンションの部屋の前に不審な男が座り込んでいて…。
マウンティング、モラハラ、毒親。次々と立ちはだかる強敵に、みきは立ち向かう。

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季節に合わせた柔らかい素材のブラウス、自慢の足を出したキュロット。メイクは洋服と合わせるか、流行の色にするか…。とあれこれと悩む、一般的な女性として日々の生活を楽しむみき。そんな彼女には、特に隠してもいないけれど、改めて公にもしていないことがあったのです。

と、ちょっと匂わせながら物語は進んでいきます。案外その「こと」はすぐに判明するのですが、そこからはて、みきはどのようにして日々を過ごし、人間関係を築いているのだろうか、そして家族とはどうなっているのだろうか、と次々と疑問が出て来るのですが、そうした面も話が進むにつれ、少しずつ判明してきます。

まずはマンションの部屋の前に座り込んでいた男は、かつての同級生、後藤でした。
友人の借金取立てのとばっちりを受け、家に帰れず、かといって実家にも戻れないので、泊めてほしいと言うのです。みきの「こと」を知った上で、後藤とみきは同居をはじめます。みきの後藤に対する友情というか、同情に近い状況ですね。

みきの日常は戦いにあふれています。合コンに出れば、手作り礼賛的な女子アピ最強な
女性に何故か気に入られ、挙句その女性の婚約者にマウンティングされ…
女子同士の分析、闘い方など、細やかに描かれていて、恐ろしさを感じます。いや、
全ての女子がそうだという訳ではないことはわかりますが、こういう好戦的な女子たち
も確かにいそうだよなぁ…と思うくらいリアルですし、体温を感じます。

状況判断の冷静さ、相手の出方を窺う狡猾さ、出過ぎず、かといって大人し過ぎず。
いろんな方向にアンテナが向く女性ならではのやりとりが満載です。みきの場合、
彼氏が欲しいと強く思っているわけではなく、どちらかというと、そうした女性の
生態を観察し、そこに入り込むことを楽しんでいるようです。

物語全体のベースとして、トランスジェンダーセクシャルマイノリティという問題が
あります。周囲からの好奇の目、無意識に発せられる差別発言。決して明るく歓迎され
る訳ではないその空気感に、読む側も息苦しくなってしまいます。

しかし、性別や恋愛観といったカテゴリによってその人間の人格を否定することは間違っている。そう考える人間が近くにいれば、まだ戦い続けることができるものなのかもしれません。ごちゃついてまとまりのない、でもきらびやかで気分がアガる。そんな女子的生活もまた、戦うためのパワーを蓄える大事な要素になるのでしょう。強くてしなやかな「女性的生活」に幸あれ。

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