ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

デパートの売り上げを支える外商の奮闘ぶり描く

上流階級 富久丸百貨店外商部 』の

イラストブックレビューです。

 

神戸の老舗、富久丸百貨店芦屋川支店で外商員として働くことになった鮫島静緒。
高級住宅地をまわり、お客様に買い物をしていただくのが彼女の仕事。そのノルマは
月1500万円。一筋縄ではいかないお客たちに、ライバルの本物のセレブ出身の若手男性
社員。次々と出てくる難題を解決すべく、静緒は奔走する。

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高校を卒業して製菓の専門学校へ、そこから地元の洋菓子店に勤めてパッケージデザインや売り込みなど、洋菓子づくりそっちのけで、自分の店の洋菓子を販売してきた静緒。その仕事ぶりが目にとまり、富久丸百貨店へと引き抜かれます。

百貨店では、地下の洋菓子売り場の販売員から、企画販売を手がけ、静緒が担当した
ワンフロアに食品、服飾、こども用品などを配置した、ママに優しいデパートづくりは
大ヒットして、今も売り上げを伸ばしています。

企画力、販売力ともに優れた静緒は、芦屋のセレブ担当、外商部へと異動になります。
伝説の外商と呼ばれた葉鳥が退職することになり、後任者を決めるためだとか。
食品の世界しか知らなかった静緒は、葉鳥からアドバイスを受けつつ、外商の仕事に
力を入れていきます。

ライバルは、本物のセレブ出身の若手男性職員、枡屋。何と彼自身も外商口座を持つと
いう金持ちのボンボンです。何かにつけ、彼から目をつけられ、嫌味を言われる静緒
ですが、黙っているわけではなく、きっちりやり返しています。そう、静緒は黙って
耐えることはしません。自分の主張はハッキリとします。相手が間違っていたら、誰に
対しても「間違っている」と言うことができます。もちろんお客様相手の場合は上手に
ぼかして伝える賢さも持ち合わせているのです。

そんな静緒ですが、外商という仕事は、金持ち相手の仕事でしないのではないか。
そんな風に考える自分は外商に向いていないのではないか、と悩みます。
葉鳥からの提案で、あるセレブのお宅が長期間家を空けるため、留守中家に住んでくれる人間を探しているから、住んでみてはと言われます。お金持ちが住むエリアに住めば、その感覚もいくらかわかるのではないかと考えた静緒は喜んでその話を受けます。そして後からやってきた同居者は何と、彼女の知る人間だったのです…。

高卒でありながら、トントンと階段を登るように実績をあげていく静緒。
デパートという華やかで、そこに勤めるのはほとんどが女性でありながら、わずかな男性社員がその権力をほとんど握っているという世界。特に外商部は、デパートの売り上げを支える大事な部署です。そんな中で萎縮することなく、おかしな噂を流す輩は口で(場合によっては手足で)叩きのめしながら静緒は突き進みます。

セレブにはセレブにしかわからない世界や感覚がある。そんな風に感じることもあるけれど、決して諦めることなく、自分の得意な分野である洋菓子や、過去にやってきたことのツテや身につけたことを駆使して、お客様の期待値以上のものを叩き出そうとする静緒の姿は本当に応援したくなります。

お客様の喜ぶ顔が見たい。1ピース500円のケーキを売っても、500万円の宝石を売っても、お客様が得る幸せはそれぞれにある。それを提供していくのが、デパートの仕事なのだということを、静緒は教えてくれるのです。

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