ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

不条理すぎる世の中に「もう帰りたい」と叫ぶ

僕たちはもう帰りたい   』の

イラストブックレビューです。

 

付き合い残業、板挟み、無茶ぶり上司、非効率…。
年齢も立場も異なる「働くひとたち」が胸に抱く強い思い。
ミステリアスなママがカウンターに立つ、スナック「もう帰りたい」には、
今日もそんな思いを抱えたお客が集まる。

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きちんと仕事をしているのに、残業しないのかという周囲の視線が痛い。
デザイナーが嫌がる改悪修正を気軽に言ってくる上司との板挟み。
売上出せ、残業するなと無茶ぶりオンパレードな上司。

懸命に仕事をしても報われず、時には大切な人との関係に影響が出てしまったり。
そんな日々を過ごす彼らが吸い込まれていくのは、「もう帰りたい」という名の
スナック。50代くらい?の、一見怖そうなママがちょっとした一言を放ちます。
そこから変わっていくお客さんたちを描くコミックです。

自分の仕事を把握し、無駄のないようにキッチリとこなしている火野。
仕事が終われば当然帰るのですが、周囲が飛ばしてくる「もう帰るの?」という
視線が突き刺さり、痛い。サボっているわけでもなし、ミスをするでもなし、大手を
振って帰って良いのだけれど…。とモヤモヤしながら帰る火野が目にしたのは
スナック「もう帰りたい」の看板。誘われるように店内に入った火野は「本当はみんな
もう帰りたいと思っているのでしょうか」とつぶやきます。そんな火野にママは
「聞いてみればいいじゃないか」と答えます。

翌日火野は、上司から声をかけられ、なぜ早く帰れるのか、その仕事の仕方を教えて
欲しい、と言われます。早く帰る事を責められている訳でもないのかもしれない。
安心した火野は、その仕事方法を上司に教え、職場での居心地の悪さは払拭されたの
でした。

本書の中では、「なんて理不尽な!」という状況がいくつも出てきます。
それがね、何というか昭和っぽいというか、ダセェな、みたいなものも多くあるのですよ。一丸となって働け(だから効率化しないで無駄の多い作業をみんなでやろう)とかね。そうしたカッコ悪さや、それに従わされる理不尽さを、ユーモアたっぷりに、そしてとても冷静に描いているのです。

仕事を続けていれば、「何でやねん」「もう帰りたいわ」と思うことが何度も
あります。ぶつかった壁が高すぎて、乗り越える気力すら起きないこともあります。
そんな時に会社の中で自分の戦い方を見つける。戦わない事を選ぶ。
どちらもありだし、それを決めるのは自分自身。
そんなことを教えてくれる、おしごとコミックです。


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