ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

あなたの食欲を減退させる「逆ソムリエ」にご用心

君がいない夜のごはん  』の

イラストブックレビューです。

 

歌人が日常の中に見出した「食べ物」について綴るエッセイ。食べ放題におののき、
「ダサい食べ物」を恐れ、脳内に現れる「逆ソムリエ」声から逃れる、驚きと笑いに
満ちた58のエッセイ。

f:id:nukoco:20190626112811j:plain

お気に入りの食べものに余計な情報をもたらす「逆ソムリエ」とはどんなもの
なのでしょうか。しっとりとした口当たりでほの甘い、お気に入りのパンに対して
逆ソムリエはこう述べるのです。「店長がひとつひとつ丁寧に口に入れてはまた
出したパンでございます。」

嫌だよ!勘弁してくれ〜!!
そんなことは絶対にないのに、ヘンテコな情報を脳が勝手にもたらす。
読者にとって、そのあり得ない説明はかなりおもしろいですが、著者にとっては
お気に入りの食べ物の興味を失わせてしまう迷惑な逆ソムリエ。でも同じものを
しつこく食べ続けてしまう事を防ぐための防衛機能だったりするのかも?

甘いものが好きで菓子パンをよく食べる。ダイエットは挫折する。
パスタの種類が覚えられない。料理はできない。
お好み焼きのタネの混ぜ方が甘いと叱られる。
ラップを半分だけ剥がして隙間から食べる。

…と、食に関してはダメな部類に入る方だと思われる著者。
ご本人も自覚しておられるのか、自分の舌や食への感覚に少々自信なさげな語り口。
そのダメさ加減がなんとも言えず笑いを誘うのは、着眼点が意表をつくからでしょうか。食べ物が思い出や妄想に広がっていく描写も、「あるある」と頷いてしまう部分も
割とあったりします。

健康的な食生活とか、とにかく美味しいものを食べさせてくれる店を探し続けて
いるとか、食に関して力を入れた経験を持つ方、現在そうした状況にあって少々
疲れたなあと思っている方は、ぜひ本書を一度手にとってみる事をお勧めします。

なんだよ、こんなに食に関してゆるい人がいるんだなあと、笑いながら肩の力が抜けて、もっと気楽に食を楽しもうと思わせてくれる、そんな食エッセイです。


にほんブログ村 本ブログへ