ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

モノと情報が溢れた『平成』という時代の生き方を描いた本

太平洋戦争で敗戦し、戦後の復興で高度経済成長を迎えた日本。一億総中流という
言葉のもとに、生活家電であるテレビ、冷蔵庫、洗濯機がどの家庭でも使われるように
なりました。便利な生活家電がどんどん登場し、手に入るようになると、やがて
バブル期を迎え、生活以外の面でも消費するようになっていきます。

そこで迎えたのがバブル崩壊です。お金をじゃんじゃん使って、モノをどんどん買って
消費しまくっていた状況から一転、国民のお財布の紐は固くなります。ちなみに財布に
紐がつていたのって江戸時代ですかね。今でも言葉が残っているのはおもしろいですね。

そんなバブル崩壊の数年後に始まった平成時代。景気は低迷しているし、給料下がるし、税金と厚生年金上がるし参ったなあという空気が

、いつも漂っていたような気がします。会社でもバブル期の華やかだった接待の様子を懐かしげに語るおじさんがいましたっけね。きらびやかなバブルの後、ちょっと霧がかかったような雰囲気でした。

そこからさっそうと登場したのが「断捨離」のやましたひでこさん。昭和期に蓄積された大量のモノをバッサリと捨てて、心も体もスッキリと暮らしましょう、といったもの
でした。こちらも平成を象徴する本だとは思うのですが、今回はあえてこちらを推したいと思います。

 

 

 

今や世界中で活躍されているこんまりこと近藤麻理恵さんの片付け本です。
こちらの基準は「ときめくかどうか」。ときめきを感じないものは廃棄の対象となる、というわけです。

今までは必要か、必要でないか、入手時の思い出は、などという基準でものを買ったり
捨てたりしていました。それを「ときめき」とは!!この手法を取り入れれば、買う時点で無用なものを買ってしまうのを避けられますし、ときめきを感じて買ったものは、常に自分をウキウキとした気分にさせてくれるわけです。

片付け、捨てる、という行為はどうも腰が重くなりがちですが、「ときめきを見つける
ぞー」という気分で取り組めば、楽しみにすらなるはず。昭和にため込んだものを平成の手法で捨てる。自分にとってはとっても平成を感じる一冊です。

そしてもう一冊はこちら。

 

何者

何者著者: 朝井 リョウ

出版社:新潮社

発行年:2015

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映画化もされた、まさに平成という時代を象徴する就活物語です。
5人の男女が、就活のための対策をしようと集まります。本音と建て前、プライドが
交錯し、彼らの関係を次第に変化させていきます。

ネットやSNSが本当に日常となっている若者たちが主役のお話です。SNS上の発言は本人の一部から発せられたものであり、本当かどうかはわからないし、全てでもない。普段から仲良くしている人間と、どんなコミュニケーションを取るのか。
本音を語り合う友人同士であるならば、周囲から発せられる情報に振り回されることもないはずです。

本音を出すのは自分の弱みを見せること。プライドが邪魔をして難しいかもしれませんが、そうすることで相手の信頼を得ることができるし、結局はそういう人のほうが強いということなのかもしれません。

SNS中心のコミュニケーションを過ごしてきた若者たち。夢や希望、将来に対する不安などいつの時代にもあるものを抱えつつも、人との間で起こるトラブルが、SNSを舞台とすることで第三者までも広がっていくというところに恐ろしさを感じます。
情報が多すぎても自分を見失ってしまう。若者に限らず平成を生きる全てのひとに
向けたメッセージのようにも感じます。

生活面と社会面から平成を感じ、なおかつ普遍的なものを含んでいる、いつの時代にも
役に立ち、面白く読める本の紹介でした。

 

※このコラムは『シミルボン』に掲載したものです。

 

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