ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

アンちゃんのやわらかさが心の痛みをやさしく包み込む

アンと青春 』の

イラストブックレビューです。

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ふっくらやわらか女子、アンちゃんがデパ地下の和菓子店「みつ屋」で
働き始めてから八ヶ月が過ぎた。販売の仕事にも慣れてきたけれど、知らない
こともまだまだ多く、勉強の日々。みつ屋の仲間に囲まれて、悩んだりへこんだり
しながら成長を続けるアンちゃんの姿を描きます。

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食いしん坊で、ぽっちゃりさん。性格は素直で真面目、誠実。
そんなアンちゃんを、みつ屋のメンバーたちがフォローし、時には厳しく、時には
優しく教育していきます。そして、新たにデパ地下へ出店した洋菓子店の店員、
果物のジュースを買おうとしていた母と幼い娘、息子の嫁にと和菓子を買いに来た
上品なご婦人。今回も様々な、ちょっとした謎がアンちゃん周りで起こります。

高校を卒業して、はじめてアルバイトという形で社会に触れたアンちゃん。
人にはいろんな面があるということ、面に出ない悪意や、大事に思うあまりに
視野が狭くなることなどを知ります。

店頭で作るフルーツジュースが飲みたいと言っている、小さな女の子を連れた
お母さんに、お店の場所を教えてあげたアンちゃん。しかし数分後、
フロア内に響くような声で泣き叫んでいるのは、先程案内してあげた女の子。
「このジュースは飲めないの!」と母親が女の子に言い聞かせています。
興奮して転んでしまった女の子を、救護室まで案内したアンちゃん。
さっきまで二人とも楽しみにしていたようなのにどうして…?

母親の愛情ゆえに、起こった出来事です。
しかし、母親もむやみに店や店員を責めるようなことはしません。
自分の目が届く範囲で、さまざまな心配の種を取り除こうと必死になっています。
世の中には不安な情報に溢れていて、しかもそれが自分の娘に影響するもので
あったなら。心配するのは当然ですよね。その心配が極端だと笑い飛ばせないのは
自分にも震災時に幼い娘がいたからかもしれません。

そうした頑なな心には、他人からの親切や言葉がなかなか届かないものです。
ただ、アンちゃんのふんわりとした見た目と雰囲気は、人に安心感を与え、
心を開こうという気持ちにさせてくれるのです。

それと、アンちゃんは全く自覚がないようですが、ちょっぴり恋の予感が。
しかも波乱を含むような…?読み終わった途端に「ああ!続きいつ出るの!?」と
叫んでしまいました。

仕事をするということ、人間の側面をみること。世の中の目。
いろんな事を、現場で学び、自分の力にして成長していくアンちゃん。
真っ直ぐに、やわらかいままで、自分の世界を広げていって欲しい。
めちゃ親目線で感じてしまった、心が温まる物語です。

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