ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「残りの回数」が見えるとしたらどうしますか?

あなたが母親の手料理を食べられる回数は、残り328回です。』のイラストブックレビューです。

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ある日突然見えるようになった数字。母親の手料理を食べるたびに減っていく
数字の意味を理解した僕は、それから母の手料理を食べなくなった。
表題作のほか、カウントダウンをテーマに描かれた7つのオムニバスストーリー。

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何気なく過ごす日常。普段意識していない毎日の営みに、限りが「見える」と
したら。ある時から、母親の手料理食べられる残数が見えるようになった僕は
なるべく母の手料理を食べないようにしてきた。時には食べずにこっそりと
捨てたりして…。しかしその数字の本当の意味とは。

のっけから涙が止まらなくなる表題作をはじめとして、目的を失った男が、
自分に電話をかけられる回数、少女が幼い頃から見ていた、嘘をつかれる残数、
会社員が朝起きて見えた不幸が訪れる残数など、さまざまな「残数」を
テーマにしたオムニバス。

数字があるということは、物事には限りがあり、やがて終わりを迎えるということを
改めて気づかせてくれます。良いことも、悪いことも。そして、大切な人と過ごせる時間も。
その数字を見せつけられることによって、普段忘れていた、大切な人の気持ちや、
自分の本当の気持ちに気がつくのです。

終わりがあるからこそ、今の自分に目を向け、そしてやるべきことは何なのかが
明らかになるのかもしれません。そのことに気がつけば、減った数字の分、
新たな何かを代わりに得ているのかもしれない。そんなことを感じる物語です。

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